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08 オリンポスのポロン

Polon

ポロンの太陽

"The Polon's sun"

A long, long time ago, in Greece...Polon, an only daughter of the solar god Apolon, is worried about what goddess she should to be when she grown up. She comes across Eros, the god of love, tells an irresponsible lie that she can move the sun. Therefore Polon canters a solar carriage high in the air without Apolon's permission...
(Probabbly this is by far the most famous series in the author's works. It is needless to say that this series is an adaptation of Greek and Roman Mythology.)

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(プリンセス 1977年10月号)

 むかしむかしギリシア……太陽神アポロンの一人娘ポロンは、大人になったら何の女神になろうか悩んでいる。愛の神エロースと出会い、自分は「太陽を動かすことだってできる」と言ってしまったポロンは、アポロン神にことわりなく太陽の二輪車で空へかけのぼってしまい……。

*最も知名度の高い吾妻マンガかも知れない。なにしろTVアニメ化(1982年5月8日~1983年3月26日)されており、アニメ版はイタリアなど海外でも放送されたらしい(ちなみに、その後『ななこSOS』(1983年4月2日~1984年1月14日)が続いている)。"Azuma Hideo"と共に以下の題名を合わせて検索すると、外国のデータが発見できるだろうと思う。

イタリア:C'era una volta Pollon  (Pollon Combina Guai)
フランス:La petite olympe et les dieux
スペイン:La Pequena Polon

 しかし『失踪日記』では『オリンポスのポロン』について全くふれられていないようだ。
 入手困難ではないはずだけれど、当サイトでも取り上げてみようと思う。僕が現在所持しているのは秋田書店プリンセスコミック版(1979)と早川書房ハヤカワコミック文庫版(2005)の2種で、これら両方をテキストに用いることにする。前者の第2巻には『失踪日記』で言及(p.140-1)のある『ノヴァ』『にゃんにゃこクキちゃん』が収録されており、後者の第2巻には”100てんコミック”で連載された『おちゃめ神物語 コロコロポロン』などが収録され、書籍としては内容が少し異なるから。

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画像はプリンセスコミック版の第1巻表紙。

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 こちらは、月刊OUT1982年6月号。 表紙に「やったね!吾妻マンガ初のアニメ化! コロコロポロン」の文言。フルカラーの4ページでアニメ版の画像などを紹介している。
 なお、この雑誌に掲載されているキングレコードの広告をみると、この時に吾妻作品のレコードが以下の2種、発売されていた事が分かる。
・おちゃ女神物語 コロコロポロン(オリンポスのポロン/気分は女神チック (歌)原良枝 K06S-3028 定価600円)
・ななこSOS(ななこSOS/愛のロリータ (歌)山本まさゆき/原良枝 K06S-3036 定価600円)

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 アニメ放送当時には、プリンセス・コミックスにコシオビが付いた状態で発売されていたようだ(下の画像)。「テレビアニメ化 フジTV系放映中 毎週土曜日 午後6時~6時30分」の文言がある。



 このコシオビの裏表紙側には「吾妻ひでお全著作」として、秋田書店から発売されていた諸作品のリストが載っている。しかし成人向けマンガの「やけくそ天使」までが一緒に紹介されているのは……。「プリンセス」って女児向けマンガ月刊誌でしょうに!?





愛しのスピンクス

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(プリンセス 1977年11月号)

"Dear Sphinx"

Polon asks, what she should do in order to be a goddess as soon as possible, to many gods and goddesses, one after another. But nobody take the trouble to give advice to her, because everyone are so busy with their business. Eros says, "It is the best for you women to get married and to be a full-time housewife". Polon repels his opinion, and keeps shooting arrows of love, but of course she cannot do it in successful...

 どうしたら早く一人前の女神になれるか、いろいろな神々にたずねてまわるポロン。しかし皆あれこれ取り込み中で相談に乗ってもらえない。エロースから「女は結婚して家庭に入るのが一番」と言われ、反発したポロンは愛の矢を射まくるが、うまくゆくわけもなく……。

*大人は歳をとるのを嫌うが、子供は早く大人になりたがる時期があるようで、ポロンもそうした年頃ということか。太陽神アポローンが父親としてかっこいいところを見せる回である。ポロンの悩み事が前半で解決し全く別の話が後半から始まるかに見えるのだが、意外な展開で伏線が拾い上げられ、ちゃんと冒頭から筋が一本通った物語として結末にいたる作劇は見事。
 この作品でも作者の似顔絵が登場し劇中で解説をしているが、アニメ版では「アズマ虫」なる珍生物がこれを引き受けていた(しかしこちらはアニメだけのキャラクターで、原作には全く登場しない。アニメ化されてからの作品『おちゃめ神物語コロコロポロン』の第7話で表紙に出演してはいる)。ちょっと名前が出てくるエルビス=プレスリー(Elvis Aaron Presley)は世界的に有名なアメリカの歌手。



でたらめ女神

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(プリンセス 1977年12月)

"irresponsible goddess"

Polon sees that Artemis, a goddess of moon, uses her power, and increasingly longs to be a grown-up goddess. Poseidon, a god of sea, puts himself under an obligation toward Polon by chance, so that Polon is given a power of goddess that she has been anxious for, but...

 月の女神アルテミスがその力を発揮するのを目の当たりにし、早く自分も一人前になりたいと憧れるポロン。偶然で海神ポセイドンに恩を売ることになり、念願である女神の力を得られたのだが……。

*悪気があってではなく分別(ふんべつ)不足により問題を起こしてしまうあたり、厄介ではあるがいかにも子供らしく微笑ましい(だからこそ意外なところから救いがもたらされるという逆転劇になっているのではあるまいか)。ケンカになっても結局助けてやろうとするエロースの友情などは、いかにも児童向けマンガらしい配慮であると同時に、物語のクライマックスをもりあげる要素としても作用しているようだ。



美しきメドゥーサ

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(プリンセス 1978年1月号)

"beautiful Medusa"

Medusa, a girl who has beautiful long hair, falls in love with Perseus owing to Polon's quarrel with Eros. Medusa is beside herself with joy that she was praised her hair by Perseus, and takes pride in her hair as it is more beautiful than Athena goddess. And Medusa is changed into a monster by the punishment of goddess...

 美しく長い髪の持ち主である娘、メドゥーサは、通りがかったポロンとエロースのケンカがきっかけで、青年ペルセウスと熱烈な恋に落ちる。ペルセウスに髪をほめられ有頂天となったメドゥーサは、女神アテーナーよりも自分の髪は美しいと得意になり、女神から罰を受け怪物にされてしまった……。

*事情をよく知らないポロンが怪物退治の役割を買って出てこの騒動に関与し、エロースと協力してハッピーエンドまでの筋運びをしている。子供が大人より正しい判断と行動をとる場合だってある、という展開は、幼い読者の少女たちを励まし、大人には自省をうながしたのではなかろうか。プリンセス版では女神アテーナーの台詞に誤植があったようで、ハヤカワ版では修正されている。



ナルキッソスの変身

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(プリンセス 1978年2月号)

"Narcissus' metamorphosis"

Dionysus god founded a school and started to recruit boys and girls as pupils. When Polon and Eros went to the school, many children already had been gathered. And there was Echo, a beautiful girl who had been very popular with boys. Polon is given lessons in "power of making beauty" from Aphrodite, goddess of beauty. But...

 ディオニュッソス神が学校を創設して、生徒の少年少女を募集し始めた。ポロンとエロースが行ってみると既にたくさんの子供たちが集まっており、その中には男子たちからモテまくりの美少女、エコーもいる。ポロンは、先生である美の女神アフロディテから「美しいものをつくる美の力」を習ったのだが。

*「こーゆーことをするから将来の子どもたちまで迷惑する 受験戦争の元凶(げんきょう)だ」と激怒するエロースの台詞に、受験生の読者は苦笑したのではないだろうか。物語のカギとなる少年、ナルキッソスが登場するのはやっと中盤に入ってからで、序盤ではポロンがいかにしてこの騒動にかかわり合うようになるかのいきさつが語られる。あくまでも主人公はポロンなので、騒動を引き起こし、また解決にも直接かかわっているのだろう(アマチュアが創作をすると、えてして主人公が行動せず、傍観者や語り手にとどまってしまう場合が多いのではあるまいか)。さもさらりと”でたらめ神話(プリンセス・コミックスの広告にある言葉)”を描いているかに見せながら、物語の構成は理にかなっている。
 女神アフロディテは米国の映画女優マリリン=モンロー(Marilyn Monroe)がモデルではないかと思われるも定かではない。劇中、プリンセス版では「五郎飛んでけー」「ジュリー飛んでけー」とあり、これがハヤカワ版では「キムタク」「ヨン様」になっている(前者は野口五郎と沢田研二をさしているらしい?)。
 学校の場面で黒板に「S」の文字が見えるようだが、おそらくスクリーントーンを貼るよう指示した青鉛筆の書き込みが印刷に出てしまったのではと考えられ、ハヤカワ版ではここが修正されている。



ギリシア神話の神々

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(ハヤカワ コミック文庫 描き下ろし 2005年2月)

"gods and goddesses of Greek mythology"

Some newly written works are recorded in "Hayakawa Comic Bunko" edition. You can read explanatory comics for Zeus, Hades, Cerberus, Persephone, Poseidon, Apollon and Polon the heroine, in "Olympus no Polon 1".

*お話の枚数が奇数だと、単行本では、次の話が”見開き”で始まるのでない限り、つなぎの1ページは空白になる。プリンセス・コミックス版ではそこにポロンのカットが入っているのだが、ハヤカワコミック文庫版だと描き下ろしの1ページ作品が収録されている。『オリンポスのポロン1』ではゼウス、ハデス、ケルベロス、ペルセポネー、ポセイドン、アポロン、そして主人公ポロンの解説マンガが読める。

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画像はハヤカワ版の第1巻表紙。



七つの試練

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(プリンセス 1978年3月号)

"seven trials"

Polon runs away from home with a goose, because she had pity on it to be cooked for a dish. Polon has pity on Atlas too, when she meets with him on her way. Then Polon offers to take his place for a while, and trys to support the sky. But it is impossible for her of course, the world to be flattened by the fallen sky. Polon is assigned seven trials as a panishment by Zeus.

 おかずになる予定だったガチョウを料理してしまうのがかわいそうで、ポロンは一緒に家出してしまう。その途中でアトラスに出会ったポロンは彼にも同情し、大空をささえるのをしばし交代する事を申し出る。だが成功するわけもなく世界はぺちゃんこ……。ポロンは罰として、ゼウスから七つの試練を課されるのだった。

*悪事をはたらいたためではなく、優しい同情心ゆえに事件を起こしてしまうあたり皮肉なものではあるが、これは自分の限界をまだ判断できない純真な子供が成長してゆく過程でどうしてもぶつかる壁のひとつだろう。どちらかと言えば保護者のほうが躾(しつ)けにおいて悩まされる問題かも知れないが、父親であるアポロン神もここで必死になっており、親の読者から共感を得たであろうか。とはいえ堅苦しい教訓話にはもちろんなっておらず、危機一髪のクライマックスが意外な理由で解決され、しかもそれが種明かしを兼ねているうえ、逆転劇の結末にまで通じているのだから、見事な構成だなあと思う。
 冥界の王妃ペルセポネーは強烈な印象を与える非常に面白いキャラクターなのだが、残念ながら後になってこの容姿だとマズい話があるため別人のようになって再登場する。この点についてハヤカワ版では作者による補正と解説がある。
 ”S"の字がちょっと見えるコマがあり(雑誌掲載時には紙質の関係で印刷がつぶれ、殆どわからなかったのではないかと思われる)、ハヤカワ版だとここもスクリーントーンの修正がなされているようだ。



パーンの笛

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(プリンセス 1978年4月号)

"Pan's flute"

A banquet is held at shrine in Olympus, and Eros drinks in desperation. Polon is anxious about him, so send him home. They fall into peril when they bump up against flock of sheep, but Pan, the shepherd, helps them. He shows syrinx, the flute that he use for assemble sheep. Polon trys playing this flute, then all sheep run away because of awful noise she sounds...

 オリンポスの神殿で宴会が開かれるが、エロースはヤケ酒を飲んで酔っ払ってしまう。心配したポロンは帰り道を送ってゆくものの、ヒツジの群れとぶつかって危機一髪。それを救ったヒツジ番のパーンは、ヒツジたちを集める笛、シュリンクスを見せてくれる。しかしポロンがこれを吹いてみると、あまりの騒音にヒツジはみんな逃げ出してしまい……。

*ポロンが神々に助言を求めると、なさけなや、誰もが間違った答えを与えるあたりは落語のようで笑える。が、これはページ稼ぎのギャグではなくちゃんと伏線になっており、クライマックスで意味をなしていて、その構成に無駄がない。伏線はもう1つあり、こちらは結末でいかにも児童向けマンガらしく勧善懲悪のオチに結びついている。わずか20ページのマンガであるが展開は一本調子ではなく、内部構造に主筋(おもすじ)と脇筋(わきすじ)を持つ物語なのだ。僕ら読者は笑って読んでいて見過ごすのだが、作者は気づかれぬよう巧妙に、多くの計算をかげでおこなっていると思う。雑誌連載された当時、どれほどの読者が、この「子供向け」作品のていねいなつくりを見抜くことができただろう。
 トビラの背景にあるスクリーントーンと、女神ヘラの横顔は、ハヤカワ版では修正が加えられている。作者が当時おそろしく多忙を極めていたらしいこと、作品の再発表にあたり入念に仕上げを加えているらしいこととがうかがえる。



いじわるアドニス

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(プリンセス 1978年5月号)

"Ill-natured Adonis"

Pegasus, a horse that has wings, is wounded by an arrow someone shot, and falls. Polon asks him to give his autograph because it is the first time of see Pegasus in her life, and makes friends with him. Then Adonis, a beautiful boy who shot Pegasus, comes. Polon and Pegasus escape danger by Pegasus' counterattack, but Adonis has been loved most tenderly by Aphrodite goddess. Aphrodite swallows Adonis' insistence and punishes Polon...

 翼を持つ馬、ペガサスが、何者かの矢を受けて墜落。初めてペガサスを見たポロンはサインをねだり、親しくなる。そこへ、矢を射た犯人である美少年、アドニスがやって来た。ペガサスの反撃で難を逃れることはできたのだが、アドニスを気に入っている女神アフロディテは、アドニスの言い分を鵜呑みにし、ポロンに罰を与えてしまう……。

*母であるアフロディテに捕まってしまい、友人のエロースはポロンを助けてやれない。それで、いつもとはちょっと違った展開になる。後になってペルセポネーが登場するが、別人のごとき容姿になっているのはなぜかという点について、ハヤカワ版には補足修正がある。



おとうさまの恋人

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(プリンセス 1978年6月号)

"father's sweetheart"

Polon is envious Eros because he has mother, Aphrodite goddess. Polon asks to her father, Apollon the god of sun, "Why I don't have mother?" When Polon to know the reason, "A new love is the need for my father" she comes to a conclusion. So Polon uses Eros' bow and arrow, but Daphne, the girl who encountered with Apollon, is a serious man-hater...

 エロースに女神アフロディテという母がいるのを見、ポロンは羨ましくなった。父である太陽神アポロンに「あたしにはどーしてママがいないの?」とたずねたポロンは、事情を知るや、「お父さまには新しい恋愛が必要なんだわ」と結論、エロースの弓矢を借りて使ってしまう。しかしアポロンが出会った女性ダフネはひどい男嫌いで……。

*どこかの国の神話が混ざったり、果てはSFまで混入しているのが笑える。スピルバーグ監督の映画『未知との遭遇』(Close Encounters of the Third Kind)のパロディをやっているくだりがあるが、当時公開されて間もない映画だったとはいえ、読者である少女たちにこれが分かったであろうか。「オカメブタ」という台詞はこのころTV放映されていた時代劇(ジョージ秋山が原作の「浮浪雲」)にちなんだものではないかと思われるも詳細不明、ハヤカワ版には欄外の書き込みが加筆されている。
 それにしても、母と自分の事については悩まないポロンの陽気さと前向きな態度にはちょっと驚かされ、また読んでいて救われる。ポロンの母の事は、この作品で明らかにされていない謎のひとつである。



ユニコーンの角

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(プリンセス 1978年7月)

"horn of unicorn"

For accomplish his love, Eros has to been necessary for unicorn's horn. Also, Thomas the hunter, needs it for cure his mother's sickness. Polon had been watching everything from the sky, and joins forces with them because she had heard from her father Apollon god that unicorns become attached to girl.

 自分の恋愛を成就させるため、どうしても一角獣の角が必要になったエロース。しかし人間の狩人であるトマスも、母の病をなおすために角を求めていた。空から一部始終を見ていたポロンは、一角獣が女の子になつくことを父であるアポロン神から聞いていたため、狩に協力するのだが。

*架空生物のデザインは作者の得意とするもののようだが、ここでも独創的な一角獣が登場している。
 ポロンが頼まれて狩に協力するようになっても話の筋は通るだろう。しかしそうした「受身」であっては主人公としての立場が薄らいでしまいそうである。一見、無駄なように思える冒頭のくだりは、ポロンが自分の意思でこの騒動に関わるために必要なのだろう。実際、後半でポロンは主人公にふさわしい活躍をしている。
 弓の名手であろうエロースが狩の才能は絶望的であるあたり、その情けなさは読んでいて大笑いできると思う。
 プリンセスコミックス版の第1巻は、ここまでを収録している。



イカルスのつばさ

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(プリンセス 1978年8月号)

"Icarus’ wings"

When Eros flying in the sky, a human boy is falling and collides with Eros. According to the boy's story, he had been training to fly. Icarus, that boy, sees Eros flys, and asks to become a pupil of him. Polon breaks up with them after an argument, and goes to her father Apollon god as wish to get comfort. But he cannot hear his daughter's petition because of irritation about his cart's frequent breakdown. Apollon runs out of patience finally, and goes to Hephaistos, a god of smith, for make a protest to his work...

 空を飛んでいたエロースの上へ、人間が落ちてきて大当たり。きいてみれば、空を飛ぶ練習をしていたのだと言う。その少年、イカルスは、エロースが空を飛ぶのを見て弟子入りを志願。いっぽう、口喧嘩になったポロンは彼らと別れて去り、父親のアポロン神に泣きつく。しかし馬車がたびたび故障するのに怒って激昂した彼は娘の言葉も耳に入らず、鍛冶屋の神ヘパイストスのもとへねじ込みに行き……。

*ここでも冒頭のシーンは本筋に直接の関係が無いようだが、その後の展開をスムーズにすると同時に、ポロンが騒動に巻き込まれるためのレールを敷く役割を担っているかと考えられる。アポロン神が加わる事によって物語は単調な一本道とならずにすんでいるが、そうなるための導入も不自然が無いと思う。あれやこれやの大騒ぎをした後、まるで意外なところから、一気に解決へ向かうジャンプ台が出現するような展開は興味深い。

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秋田書店プリンセスコミックスではこの回から第2巻に収録。



パンドラのつぼ

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(プリンセス 1978年9月号)

"Pandora's pot"

Polon and Eros found a beautiful pot at a seashore while they were playing. But when they open a cap of it, mysterious monsters go out from it. What is worse, "mass of evil" is set free, and Eros goes mad because of being possessed by it. Polon does not know what to do, then "Hope" appears...

 海岸で遊んでいたポロンとエロースは、浅瀬できれいなつぼを見つける。しかしフタを開けてみたらそれに入っていたのは得体の知れない怪物たちで、おまけに”悪のカタマリ”までが解き放たれ、とりつかれたエロースはおかしくなってしまった。途方に暮れるポロンの前に、”希望”が現れたのだが。

*冒頭、「あまりカンケーない」と説明されつつプロメテウスが登場している。もとの神話ではプロメテウスの弟であるエピメテウスが、神々からワナとして「女」(その名前がパンドラ)を贈り物として与えられる、といった物語になっているようなので、そのせいかも知れない。とはいえ、このプロメテウスの災難が”希望”と対比されているようなコマもあって、「希望で全てが救われるほど世界は甘くないだろう」といった皮肉にも読める気がする。
 いくつか小さな遊びが発見できるようだ。群衆の中、頭の左右に懐中電灯をくくりつけている男がいるのは映画「八つ墓村」(1977年)からだろう。少年探偵団の歌や、ガメラマーチの替え歌(ゼウスが歌っている)らしいものがある。「鉄人28号」から模したらしい”リモコン”が描かれたりしている。
 この原稿が無気力プロで制作されていたまさにその日、ベタ・ホワイト・スクリーントーン・消しゴム等の担当でその場にいた”アシスタントのアシスタント”(僕です)が鏡のコマを見て、「あのぅ先生、これは科学考証からすると誤りなのでは……」と恐る恐る発言したところ、吾妻先生は苦笑しつつ「いいんじゃないの?」と語られ、沖さんは笑って「何人(の読者が)気が付くか!?」と賭けみたいな発言をしておられたのだった……。



ポロンおまけマンガ

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("extra comics of Polon")

"father's packed lunch"
"Daphne comes back"
"love fortunetelling"
"Polon's flute"
"extermination of vultures"

*ハヤカワ版「オリンポスのポロン」第1巻では、このあとに以下の描き下ろし作品(2005年2月)が収録されている。

・ポロンおまけマンガ 「お父様のお弁当」(1p.)
・同            「ダフネふたたび」(1p.)
・同            「恋占い」(2p.)
・同            「ポロンの笛」(1p.)
・同            「ハゲタカ退治」(1p.)

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・あとがき(2p.)

 「プリンセス」での連載終了から実に26年ぶり、今もあどけないままのポロンの姿は、懐かしく、ほっとする。



ピグマリオン

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(プリンセス 1978年10月号)

"Pygmalion"

Polon meets with Pygmalion, a sculptor, while she is painting. He finishes a work after his heart thanks to Polon was posing for him. Then Zeus calls on Pygmalion...

 芸術の秋。ポロンも絵筆をとっていると、一人の彫刻家・ピグマリオンに出会った。彼はポロンをモデルにして会心の作を彫り上げたのだが、そこにゼウスがあらわれて……。

*ポロンが「騒動のきっかけ」を創るのは(受身であるだけに)ともかくとして、いたいけな彼女が一体どうやってこの事態の収拾に貢献するのか? 読み進むうちにふくらむ疑問と期待が、見事な展開で一件落着となる。ちっちゃくても流石は主人公だ。

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ハヤカワコミック文庫ではこの回から第2巻に収録されている。画像はその表紙。



ジンゴロー探検隊と怪鳥ハッピー

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(プリンセス 1978年11月号)

"The Jingoroh-nauts and Harpy the creature"

Eros fought against human child and was defeated. He applys for a crew of an expedition, because he wish to vindicate his honor. But Iason the commander and all his members of the expedition are incompetent person. Polon is anxious about Eros and makes up her mind to go with them.

 人間の子供たちと戦って負けたエロースは、「名声を高めるチャンス」と考え探検隊の乗組員に応募する。しかしそのメンバーは隊長のイアン以下全員ダメな男ばかり。エロースを心配しポロンも旅に同行するのだが。

*最も非力であろうポロンが、ペットのガチョウと共に活躍し、メンバー全員を危機から救う展開が面白い。当時これを読んだ少女たちは、紅一点であるポロンの姿に自身を重ね、自分が孤軍奮闘しているように代償体験を味わっただろうか、それとも大人の男たちのダメさ加減に呆れ果てただろうか?
 変な地図が冗談でちょこっと描かれているが、これは例の喫茶店「カトレア」の位置を示している(1979年の住宅地図にて確認)。



ギリシア神話の神々

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(描き下ろし 2005年2月)

"gods and goddesses of Greek mythology"

We can read explanatory comics for Artemis, Aphrodite, Hephaistos, Eros, Athena, Hermes, Dionysus, Pan and Demeter, in "Hayakawa Comic Bunko" edition's "Olympus no Polon 2".

 ハヤカワコミック文庫版「オリンポスのポロン 2」では、ここで「ギリシア神話の神々」が挿入されている。第1巻に引き続き、こちらでは、アルテミス、アフロディテ、ヘパイストス、エロース、アテーナー、ヘルメス、ディオニッソス、パーン、デメテルを紹介。ほぼ学術的な原典解説となっている。ただし、ヘルメスが「マッハ18ぐらいで飛んだ」などの記述もあって、このへん「???」なのだが……?



ジンゴロー探検隊と金のブタのシッポ

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(プリンセス 1978年12月号)

"The Jingoroh-nauts and the tail of gold pig"

The expedition is drifted to a mysterious sea area that is full of strange rocks. The party averts a crisis of their annihilation, and finds a clue to discover a "gold pig". But it is a possession of Medea the great witch.

 奇怪な岩が並ぶ怪しげな場所へ漂着した一行は、全滅の危機をからくも逃れて、「金のブタ」発見の手がかりを得るに至る。しかしそれはムディアという大魔女の所有物だった。

*ここでも男たちはやられてばかりで役に立たず、ポロンの活躍により救われている。そのポロン自身も危機を経験するので、ギャグマンガながら手に汗握るところがある。



オリオンの神話

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(プリンセス 1979年1月号)

"The myth of Orion"

Orion is a young brawny master of hunting. But on the other hand, he is a genius of girl hunting ! He comes across Polon, and...

 オリオンは若くたくましい狩りの名人でありました。しかし、女の子をひっかけるのも名人だった! そんな彼がポロンと出会って……。

*今回、ポロンは物語の世界と読者の橋渡しをするような役回り。いかにも読者が言いたくなりそうな事を代弁し、事態の展開を補助している。



下僕のアポロン

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(プリンセス 1979年2月号)

"Apollon the manservant"

Polon knew that Eros was dying by sickness, and heals him by a medicine of Apollon god, decided for herself. But this aroused anger of Hades the god of the world of the dead, and Zeus punishes Polon with lightning. Apollon caused a problem in protest against this punishment, and after all, Apollon and Polon are given orders that to serve a human being for one year by Zeus.

 エロースが病床に臥(ふ)して死にかけているのを知ったポロンは、父であるアポロン神の薬を持ち出して救う。だがこの事は冥界の神ハーデースの怒りを買い、ゼウスからポロンに神罰の雷が落ちる。アポロンはこれに抗議して問題を起こし、とうとうポロンと共に1年間、人間の下僕(しもべ)となって働くよう命じられてしまう。

*友人と父を思いやる優しい(しかし必ず事態をややこしくしてしまう)ポロンが実に可愛らしい。今回のみ毛皮ファッションで登場しているのも微笑ましく面白い。「募集広告」にいわゆる差別語が含まれていたようで、ハヤカワ版では書き換えられたのが分かる。死神が歌っているのはTVアニメ「ペリーヌ物語」のメロディではないかと思われるも定かではない。



ポロンは女神

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(プリンセス 1979年3月号)

"Polon is a goddess"

A vocational aptitude test for student god and goddess is given. In spite of it is not substantial process, Polon fails the test. Polon bursts into tears when she knows that she will be not able to be a goddess, and a supplementary examination of actual technique is given for her...

 半人前の神や女神が受ける適性テスト。形式だけのそれだったらしいが、ポロンは不合格になってしまった。女神になれないと泣き出すポロンは、実技の追試験を受けることになり……。

*連載としては、これがひとまず最終回だった。しかしおよそ3年後にTVアニメ化され、今度は別の雑誌で連載が再開される。
 ”種明かし”が物語の終盤にあるのだが、ページをさかのぼってもう一度、カギとなるコマをよく見てみると、なるほど確かにその”種”が、ちゃんと描き込まれている(右下隅)。しかし、これに気づく読者はまずいなくて、誰もが読んでいてトリックに騙されたのではあるまいか。



にゃんにゃこクキちゃん

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(別冊ビバ・プリンセス 1977年 冬季号)

"Nyan-Nyako Kuki Chan"

Mrs.Azuma is stalked by a stray cat on her way home. The cat goes on saying her "Keep me keep me" and comes along with her to the front door. The Azumas are overcome and decide that they keep the cat. This cat is named Kuki for a feature of its tail, but he is greedy about food because he lives as abandoned until yesterday. Kuki ate snows and had diarrhea, so he is forced to fast. Kuki couldn't endure his hunger and runs away from home...

 外出から帰宅途上の吾妻夫人に、「ひろってひろって」と一匹の野良猫がまとわりついてくる。ねばりにねばって家までついてきた猫に吾妻家の一同は根負けし、とうとう飼うことにした。「しっぽがクキっと曲ってるから」クキと名づけられた子猫は、ついこの間まで野良だったので食べ物に意地汚い。雪を食って下痢になったクキは絶食させらるが、それでも何か食いたいクキは家出してしまい……。

*『失踪日記』p.141に「名前は出してないがこれは奥さんの原作だ」とのこと。動物が主役で人間らが脇役という視点の吾妻マンガは珍しいと思われ、貴重な一品になっている。



ロンリーちゃん

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(別冊ビバ・プリンセス 1976年 春季号)

"Lonely Chan"

Lonely the vagabond beautiful girl rescues a dwarf who fell into a hunter's trap, at a mountain path. She has herself change into the girl who is strongest in the world, in reward for the relief. Not long afterward, she happens to meet a strange bandit. According to their story, a terrible demon has taken over a castle and a princess...

 さすらいの美少女・ロンリーちゃんは山道で、猟師のワナにかかっていた小人(こびと)を救う。お礼に魔法で「世界一の力持ち」にしてもらったロンリーちゃんだが、やがて奇妙な山賊に出くわした。聞けばここでは恐ろしい魔王が城と王女をのっとって今に至っているという……。

*出だしから典型的なヒロイックファンタジーなのだが、「力」だけで活躍できるのかいな? と読者は疑問に思うのではあるまいか(ただし、これが発表された1976年当時は、まだ家庭用ゲーム専用機なんぞ発売されてはおらず、誰もRPGなどを知らなかったのであって、西洋を舞台としたこういう物語は珍しかったかも知れない)。ところがどっこい、ちゃあんとそれで、とんでもない展開が待っている。
 しかし、なぜか主人公が、およそおとぎ話らしからぬ服装で登場している。一体どういう世界なんだこれ!?



ノヴァ

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(別冊ビバ・プリンセス 1976年 秋季号)

"Nova"

A big spaceship sets its cours to the earth. The sun expands because of its life span, and it means the history of the earth will end in a short while. The spaceship is steered by earthling. It comes for observation of earth's end from planet Laura where mankind took refuge in. Even Antarctica where they plan to make a landing, has turned into desert now. Perhaps no life exist in such environment any longer... But something unknown huge object gets closer to the spaceship when it starts to stand by for landing. It was too late to avert a collision, the spaceship was damaged at its outer shell, and Lilulu the crew girl of it was thrown out of the ship. She narrowly escapes death, but she witnesses...

 大形宇宙船が1隻、地球へ向かっていた。太陽は寿命がきて膨張を始めており、地球の歴史はもうすぐ幕を閉じようとしている。宇宙船は、地球の最期を観測すべく、脱出先であったローラ星から里帰りしてきた、地球人のものだったのだ。着陸予定地点の南極さえ、今や砂漠と化している地球。この環境ではもはやいかなる生物も存在しないだろう……。が、着陸態勢に入った宇宙船に、正体不明の巨大な物体が近づいてきた。回避も間に合わず衝突、宇宙船は外壁を損傷し、乗組員の一人であった娘・リルルは船外に放り出されてしまう。幸い、命はとりとめた、しかしそこで彼女が見たものは……。

*「失踪日記」p.140で作者が「あれは私の作品じゃありません」と述べているのがこれ。担当編集者の手が入る前のオリジナルがどのような物語だったのか、惜しまれる。



タマゴ焼き食べたい!

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(100てんコミック 1982年5月号)

"I want to eat an omlet !"

Polon the immature goddess goes to school with Eros the young god every morning. But they are always late for school. Polon has just thought of a good idea about "a way we'll never late for school again". That is...

 まだ半人前の女神であるポロンは、一応神様だけど子供のエロースと一緒に、朝は学校へ通っている。しかし今朝はまたまたそろって遅刻してしまった。ふとポロンは「もうぜったい遅刻しない方法」を思いつく。それは……。

*「おちゃめ神物語コロコロポロン」の題名でTVアニメ化されると、「オリンポスのポロン」は雑誌を替えて連載が再開した。3年と2ヶ月あまりのブランクを経ているため、絵柄が少し写実的になり(?)、設定は一部リセットされ、ポロンはまだ女神としてデビューしていないところで物語が始まる。(他の作品中に時々描かれている内輪ネタによれば)この頃、作者は私生活で長女に恵まれ、「ポロン」の翌年に放送される「ななこSOS」などでは喜んでTVを観る程の年齢になっていたらしい。心なしか、ポロンはその分身のようになり、幸福な父親として愛娘の成長を見守る作者の優しい眼差しが注がれているように感じられる。

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 「100てんコミック」で連載されたシリーズは、双葉社からテレビ放送の終了後に単行本がでた。画像はそのカバー。

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 この書籍には小さな折込ポスターが付いている。絵は、LPレコード「コロコロポロン音楽集」のジャケットに使われたのと同じものだ。
 また目次のページには、アニメで各回サブタイトルが表示される時の背景になっていたイラストの原画とおぼしきものが載せられている。

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 ほかにも「ミニミニ神話辞典」というコラムや、「おちゃめ神物語コロコロポロン全資料」なる文章ページがある(筆者不明)。後者では、オープニングおよびエンディングの歌詞が掲載されており、「TVアニメ版オールストーリーズ」として、全46話のあらすじが各回ゲストのキャラクター設定画と共に収録されている。



アフロディテの秘密!

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(100てんコミック 1982年6月号)

"Aphrodite's secret !"

Polon comes and sees her grandfather Zeus the god, with Eros. Then Zeus uses "a pond TV" that can watch everything of the whole world. Zeus goes out, after that Polon and Eros change channels of the TV, and watch what the other gods and goddesses are doing. Then...

 祖父にあたるゼウスのところへ遊びにきたポロンとエロース。ゼウスは仕事中(?)で、世界中のどんな出来事も見られる「池テレビ」を使っていた。ゼウスが出かけてしまうと、ポロンたちはチャンネルを替え、他の神々が何をしているか見始める。すると……。

*なんだかエロティックな扉絵になっているが、連載された雑誌の読者対象年齢は「プリンセス」より更に幼いはずで、1ページ毎のコマの数が少なめ(それによって各コマは大きくなっている)なのは、それも理由の一つなのではないかと思われる。第1話に登場した「時の女神」はキャラクターデザインが少し変えられていたが、今回登場するアフロディテたちは、ほぼそのままのようだ。



ギリシアで二番目!

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(100てんコミック 1982年7月号)

"Second in Greece !"

Polon and Eros attempt to carry a large pot filled up with water, but the pot isn't budge an inch. Then Hercules the giant comes and helps them. He got a summons from Apollo the god for help to construct a shrine. Hercules has come with his infantile son, Kolecules. Polon offers to take care of him.

 水の入った大きなつぼを運ぼうとするポロンとエロースたちだが、全く動かせない。そこへ大男のヘラクレスがあらわれ、助けてくれる。彼はアポロン神に呼び出され、神殿の工事を手伝いに来たのだった。ヘラクレスは幼い息子のコレクレスを連れてきていたので、ポロンはそのお守りを買って出るのだが。

*母性本能ということか、年下の子供相手におねえさんぶりを発揮する(そしてまたもや問題を起こす)ポロンの姿が微笑ましい。



海水浴でドンブラコ!

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(100てんコミック 1982年8月号)

"Go bathing in the ocean"

Polon and her friends are bathing in the sea. Eros begins surfing and all the members wish to do it. However all of a sudden, the sea calms down. Polon dives into the sea, whereupon...

 夏の海へ泳ぎに出かけたポロンたち。エロースがサーフィンを始めると全員がやりたがる。しかし突然、波が来なくなってしまった。ポロンが潜ってみると……。

*前回では水浴していたポロンだが、今回はセパレーツの水着で登場している。いかにも真夏の作品らしく楽しい。



冥界の犬ケルベロス!

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(100てんコミック 1982年9月号)

"Kerberos the dead world dog !"

In the morning, Polon and Eros go together to school, but Eros' mother Aphrodite never make a packed lunch for Eros because she thinks kitchen work will make her hand rough. On the contrary, Polon makes her packed lunch by herself every morning. Poln and Eros find "two" black puppies seem to be hungry on their way school...

 朝。ポロンはエロースと一緒に登校するが、エロースの母たるアフロディテは「水仕事すると手があれる」という理由で弁当を作ってくれない。一方ポロンはいつも自分で弁当を作っているのだった。ふたりは学校へ向かう途上、おなかを空(す)かせているらしい”2匹”の黒い子犬がいるのを見つけて……。

*「プリンセス」連載当時は料理の腕前がまるっきりだったポロンも練習して上達したらしい(?)。異形のものを見ると条件反射のようにすぐ排斥しがちな大人とは違い、めずらしがって可愛がるポロンたちの柔軟さが初々(ういうい)しくてほっとする。



冥界(死者の国)見学!

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(100てんコミック 1982年10月号)

"A visit to the dead world"

Polon cries because she hates to live apart from the dead world puppy has become attached to her. Hades the king of the dead world is completely at a loss and says,
"Then come and see me."
He takes Polon along to the dead world for watch. Polon observes various deceased, and...

 冥界の子犬がなついて、別れたくないと泣くポロン。困りはてた冥界の王・ハデスは、「それじゃわしのところへ遊びにきなさい」と見学につれてゆく。そこで様々な亡者たちを見たポロンは。

*奇策を考え出して次々と人助けをしてしまうポロンの発想力は大したもので驚かされる。いかにも児童向けマンガらしく、知恵比べの展開になっているのが楽しい。



オリンポス大運動会!

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(100てんコミック 1982年11月号)

"The Olympus athletic meet !"

The Olympus athletic meet that is held once in 4 years is going to hold tomorrow. Polon is full of spirit,
"I'll have myself to be a proper goddess by grandpa Zeus after I won the first prize in a footrace."
But it is hopeless because she runs slow awfully. Apollo the god couldn't bear to watch her distress, so he thinks out a plan.

 あしたは年に一度のオリンポス大運動会。「かけっこで一番になってゼウスおじいさまに一人前の女神にしてもらうの」とはりきっているポロン。しかしどうしようもない鈍足で、勝利の望みはおよそ無い。見るに見かねた父・アポロン神は一計を案じるが。

*トビラに、TVアニメ版では解説者の役を果たしていた「アヅマ虫」が登場しているが、本編での出演は無い。ポロンは「ちょうちんブルマー」みたいな格好で練習しているが、パンツの中へ服のすそをたくし込んでいるようにも見える(1960年代の日本だと、女の子たちが鉄棒で遊ぶ際に似た方法をとっていたようだ)。「缶ぽっくり」(空き缶を履物がわりに使う遊び)のようなもので走ろうとする場面もあって、なぜかこのへん懐古的ではある。「ゴーグルファイブ」という特撮番組名が台詞にあるが、前回の冒頭、ベータ方式ビデオテープの箱にもそれらしき題名が読める。

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 原作たる吾妻マンガには出てこない「アヅマ虫」だが、そのキャラクターデザインの原案は吾妻ひでお自身によるものらしく、双葉社の単行本(100てんランドコミックス「おちゃめ神物語コロコロポロン」)にはそのラフスケッチが収録されている。また、同書によれば作者が「自らもキャラ設定に参加した」と説明があり、主人公ポロンらのラフがある。

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 ちなみに、アヅマ虫は立体化された商品(注:パッケージの表記は「アズマ虫」となっている)がクローバーという会社から発売されていたようで、同社製品としては「マスコットあずま虫(¥380)」、「ソフトあずま虫(¥1300)」、「あずま虫抱人形(¥2300)」などが存在するようだ(実物未確認)。



ぶどう酒づくりはおまかせ!

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(100てんコミック 1982年12月号)

"Leave wine-making to me !"

When Polon and Eros harvest fresh fruit, they are made themselves help a wine-making directed by Dionysus the god. It seems that good wine was made thanks to Polon's activity. But...

 新鮮な果物をポロンとエロースたちが収穫していたら、ディオニッソス神が指揮するぶどう酒造りを手伝わされる事になった。ポロンの活躍(?)でいい酒ができたようだったが……。

*ちらりとアズマ虫が描かれているのだけれど、やっぱりここでも作者自画像が1コマどさくさにまぎれて出演している。



雪やコンコン!

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(100てんコミック 1983年1月号)

"Let it snow, let it snow !"

Polon happens to see goddesses of season accomplish their mission. But then she becomes aware of that there is something a shortage...

 エロースと遊んでいたポロンは、季節の女神たちが使命を果たしているのに出くわす。しかしポロンはふと、何かが足りないようだと気づいて……。

*神々のキャラクターデザインが一部変更されているが、とりわけ女神ヘラはずいぶん若返っている。フィッシュネットタイツも脱いだようだが、児童マンガ向きではないと判断されたのだろうか。



暴走族ってカイカン!

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(100てんコミック 1983年2月号)

"The gang of hot-rodders' so good !"

Polon had a new coach bought and brags Eros about it with frolic. Then a boy spurs his horse appears. He tells his name Mighty the son of Hermes the god of a messenger, and the leader of Jyajyamaru the gang of hot-rodders.

 新しい二輪車(一頭立ての馬車)を買ってもらったポロンは大はしゃぎでエロースに自慢するが、そこへ、荒っぽく馬を駆る少年が現れる。彼は伝令の神ヘルメスの息子マイティで、暴走族「じゃじゃまる」のアタマだと名乗るのだが。

*アポロン神は自分の馬をポロンに譲ったのか、正体不明の生物に太陽の馬車を引かせることにしたらしい。SF作家の高千穂遙がモデルとおぼしき人物がちょっと登場している。
 「コロコロポロン」の雑誌連載はこれが最終回だったようだが、児童向けマンガとして位置づけられる最後の吾妻作品ともなったのかも知れない。残念ではある。とはいえ、プリンセスコミックス版の第2巻カバーにある作者自身の言葉によれば「ぼくはどちらかとゆーと、ザンコク、ヘンタイ、クッセツ、ワイザツなのが好きなのですが、今回は自粛しました。そーゆーのはいつもかいてるから。」とのことで、作者は児童ものに執着も関心もさほど無いのかも知れない。これも大変残念に思う、嘆いても仕方ないのだろうけれど……。



ポロンおまけマンガ

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"Polon extra comics"

● be disqualified for driver
● Eros and Psyche
● Harpy the monster bird
● second head of the Kerberos
● Polon's soccer
● Moira the goddess
● a postscript

*ハヤカワ版「オリンポスのポロン」第2巻では、このあとに以下の描き下ろし作品(2005年2月)が収録されている。

● ポロンおまけマンガ 「運転手失格」(1p.)
● 同            「エロースとプシュケ」(1p.)
● 同            「怪鳥ハッピー」(1p.)
● 同            「ケルベロス第2の首」(1p.)
● 同            「ポロンのサッカー」(1p.)
● 同            「モイラさま」(1p.)

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● あとがき(2p.)

 あとがきには、ポロンがTVアニメ化された当時、幸福な経験も不幸な経験もさせられた複雑な思い出の告白がある。





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