"Yadorigi kun" is a boy who lives alone at an apartment house. It seems that he likes neither study nor labor, but he is vigorous likes wild animals. A widow the caretaker of there, shows her favor toward him. There are various obstacles between them, but they love with each other. This is a comedy as well as a strange love story.
はじめに
(2006.12.8.付記:本日、新発売の『ネオ・アズマニア2』(ハヤカワコミック文庫)を入手。正味約217ページ、定価620円+税。内容は以下のとおり。
○遊歩道
○ハイパードール(全9話)
○プリティギャルズ(全6話)
○パンドラ
○島島ランド(全12話)
○蛮人ヒロコの逆襲
○狂乱星雲記(全7話)
○らくがきbook
○あとがき
当サイトではこれらのうち、
『遊歩道』をカテゴリ『十月の空/CD-ROM/夜の帳の中で』にて、『パンドラ』はカテゴリ『ミニティー夜夢』で、『島島ランド』はカテゴリ『メチル・メタフィジーク』で、『蛮人ヒロコの逆襲』はカテゴリ『ひでお童話集』で、『狂乱星雲記』はカテゴリ『不条理日記』で既に紹介させて戴いています(……つまりは、かように幾つもの書籍を入手しなければこれまでは読めなかったものがこの『ネオ・アズマニア2』に今回収録されているわけで、この点非常にありがたい1冊になっていると思う)。
『らくがきbook』は2003年に描かれたイラストレーション13葉を収録。『あとがき』は4ページのマンガで、「思えば1978年~82年頃までの5年間ぐらいが私の絶頂期でした」と回想(?)があり、出版界で遭遇した怪人編集者(?)の思い出もある。)
『やどりぎくん』は秋田書店の月刊少年チャンピオンに連載された(1978年8月号~1979年12月号)作品で、全話を掲載された順に並べると以下のようになる。
・一人暮らしの四畳半
・ぐーたら哲学
・(仕送りが欲しい)
・あつい友情
・[甘い生活!?]
・ゆく年くる年
・やさしさがほしい
・(プロはきびしい!!)
・愛情べんとうはどんな味!?
・(ネズミ取りがこわい!)
・スポーツで汗を!!
・忘れ物はぼくの物!!
・[海水浴の楽しみ方]
・アルバイトでかせごう!!
・(やどりぎの上品な生活)
・亭主関白のゆーがな生活
・それぞれたくましく!!
単行本『やどりぎくん』は全1巻で、おくづけによれば1980年1月10日に初版発行されたのだが、上記リストのうち"( )"でくくった回は収録されなかった(後日、単行本『ハイパードール』(1982年6月20日)に収録、刊行されている)。また"[ ]"でくくった回は、連載された順序と単行本での収録順序が異なる。このブログではこれら2冊の単行本をテキストに用いて、連載時の順序にしたがい、かつ全話をまとめて紹介しようと思う。
ちょっと気になるのは、単行本収録にあたって"選り抜き"が行なわれた際、一体何を基準にしたのだろうか? という点だ。大雑把に結論すると、どうも「奥さん」が全く(あるいは殆ど)登場していない回が外されたように見える。 『失踪日記』p.142によれば「ロリな奥さん(?)のキャラにコアなファンが」ついたようで、この人が主人公以上に人気者だったらしいことがうかがえるが、"選り抜き"もその結果だったのだろうか。
主人公の「やどりぎくん」は独り下宿生活をしている学生。しかし勉強するでなし働くでもなし、なろうことなら全く何もせずにいたいと願っている(?)かのような少年だ。そしてなぜかそういう彼に思いを寄せる「管理人の奥さん」がいて、2人の間にいろいろ障害はあるが(だから尚更に燃え上がって?)相思相愛という状況で物語は展開してゆく。このやや風変わりなラブストーリーが、第1話から最終話までをつらぬく主筋(おもすじ)になり、各回ごとの事件が脇筋をなすという構成になっているように思うのだけれど、どうなんだろう。
「ラブストーリーとしては要するに、ピーターパン(いつまでも大人にならない男)とウエンディ(そういう男を好んでくっつく女)の物語なのではないか」と思われるかも知れない。かりにそういう面が無くは無いとしても、さらにユニークな点がこの作品にはあるように感ぜられる。
まずこのカップルにかなり年齢差のあることが目に付く。これだけ開きのある2人が恋仲になるのは、吾妻マンガにおいてのみならず、全ての少年マンガを探してみても他にちょっと見当たらないのではないかという気がする。本当にうまくやっていけるのだろうか。
次にカネの事が心配だ。まだ学生で経済力は無い(その上もしかするとこの先もそのままかも知れない)やどりぎくんを敢えて選んだ奥さんには金銭感覚というものがないのだろうか。1人の娘を持つ母親という身でありながら判断力が少し幼いのではという気がしてくる。
しかし……次の点もまた事実だろう。すなわち、若さもやがて確実に失われてゆくはかないものであり、カネも決して不変不動に頼れるものではない。
だとすれば、若さやカネについて考量するのは確かに堅実で無難ではあろうけれど、必ずしも絶対的な最善ではないのかも知れない。むしろそれらの要素を、しょせんは不確かなものでしかないと考え、全く度外視してしまっているこの2人はある意味では賢明なのかも知れない。年齢だのカネだのをあらかじめ計算してから恋をするより、よっぽど純粋で真摯(しんし)といえるのかも知れない。
作者は単行本『やどりぎくん』のカバーで次のような序文を書いている。「人はなぜ働かねばならぬのか? なぜ学校へ行ったりしなくてはならぬのか? 一日中酒のみながらゴロゴロしていてはなぜいけないのか? この漫画はこーいった深淵(しんえん)にして哲学的なテーマをついきゅーしたものです。うー、すごい!!」
これはまあ冗談半分であったとしても、やどりぎくんと奥さんを見ているとなんとも幸福そうだ。赤の他人の目を通せば、変わり者どうしのカップルとしか思えないかも知れないが、彼らの姿には静かな主張があるかに見えてくる。「いつか若さが失われてもいい、裕福になれなくてもいい。何よりも、本当に好きな人と一緒にいられさえすればいい。自分の愛する人と生きてゆけるなら、ただそれだけで、何もいらない。愛し合った相手が喜んでくれるなら、ただそれだけでとっても幸せなのだ……。」
ひとは愛し合う対象を持つ事で、生きる意義を見出せるのかも知れない。