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25 銀河放浪

"Ginga Hohroh (meaning : Roam about the Galaxy)" was written as a collection of Sci-Fi short stories. One of the stories was to be a serial, "Princess Miko saga".

はじめに

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 このカテゴリでは、2度目の失踪から復帰した後に発表されたSF作品、『銀河放浪』を紹介させていただこうと思う(『失踪日記』p.125。画像は単行本第1巻のカバーを展開した状態)。
 『銀河放浪』シリーズは最初、各回の内容が独立している短篇として全24話が描かれ、そのうちの1つであった『プリンセスミコ・サーガ』がその後に各話完結の連続シリーズとなって11話掲載されたようである。こうした推移が作者自身の構想によるものであったのか、雑誌編集部のリクエストによるものだったのか、詳細は分からない。単行本はその収録順序が作品の発表順序と一致しない部分があり、また『銀河放浪』以前に執筆された作品も含んでいるが、ここではとりあえず単行本に従って記事を書いてゆこうと思う(下の画像は単行本第2巻のカバー)。

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 吾妻ひでお作品にはSF短編集として他に『どーでもいんなーすぺーす』『狂乱星雲記』『るなてっく』『メチル・メタフィジーク』があるがこれらは1978年9月から1980年6月にかけて発表された作品で、そこから起算するとおよそ14~15年ぶりにこれらと近いシリーズが執筆された事になる。さらに見て行くと、この『銀河放浪』発表の後、SF短編のシリーズはまだ描かれていないようだ。とはいえ、単発でのSF短篇はしばしば発表されており、『銀河放浪』にしても『産直 あづまマガジン』2004年7月には新作が掲載されている。やはりSFこそは作者が本領発揮できる分野なのだろう。
 『銀河放浪』シリーズはどの話も起承転結が正攻法かつきわめて明快で、人によっては戸惑うかも知れない不条理ギャグやブラックユーモアは抑制調節されているように感ぜられ、SFマニアというわけではないごく普通の読者も楽しめる内容になっている。などと言うと、平凡で陳腐なおとぎ話集なのだろうと思われてしまいそうだが、どっこい、そうではないのだ。SFというとジュヴナイル(児童向け作品)やTVアニメや映画くらいしか知らないという読者(僕などは、そうです)に、このシリーズは毎回、聞いたことも見たことも無いような物語を楽しませてくれるはずだ。そのアイディアの豊かさと独創性は、筋立ての巧妙さも加わって、読者をニヤリとさせてくれると思う。



ついてるロボット

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(COMIC アレ! 1994年5月号)

"Tsuiteru robotto (meaning : The lucky robot)"

A singer works at a bar in a border area. She is eager for escape from her present life. One day, a robot man comes the bar to hunt a job. He keeps a strange lovery creature as a pet ...

 辺境の星の安酒場、そこが歌姫・ジーナの人生の舞台だった。しかし彼女は現状にウンザリし、チャンスがあれば今の生活から脱出したいと願っている。そこへ薄汚れた1台の男性型ロボットが、仕事を求めて店にやってきた。彼は奇妙で可愛らしい生物をペットにしていて……。

*(警告:以下、結末に言及しています)
『銀河放浪』第1話。
 専門的な知識が無いのでよく分からないのだけれど、物語と呼ばれるものは、いろいろな要素から成っているように思える。
(1)出来事を順序だてて記述する「ストーリー」。
(2)「ストーリー」に展開の理由を付した「プロット」。
(3)全体をもって読者に伝えんとする「テーマ」あるいは「メッセージ」。
(4)感情面で読者を引き込むための描写である「ドラマ」。
 これらのうち(3)が強くなると「物語」は論文に近づき、作品はきっと哲学や宗教、政治などの思想的文書との違いが曖昧になってくるのだろう。また(4)は、「物語」が論文と一線を画するうえで役立つものの、効果を発揮するためには「物語」にある程度の長さが要求されそうだ(そして場合によっては作品の印象が重苦しくなるマイナス効果も伴うかも知れない)。

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 こうした事も理由なのか、吾妻マンガのSF短篇では、(3)の「テーマ」と(4)の「ドラマ」をあえて少し抑え、そのぶん「ギャグ」を加える事で全体をまとめてあるような気がするのだけれど、どうだろう?
 "抑え"ているのであって"除去"しているワケではないと考えるのは、例えばこの『ついてるロボット』の中に「テーマ」や「ドラマ」が含まれていると感ぜられるからだ。
 結末でジーナは、ある意味、願いが叶っている。「幸運も不運も、ひょっとしたら紙一重なのかも」といった見解がこっそり、僕ら読者のほうに差し出されているように見える。また、機械ゆえ感情を持たぬロボットが、どんな仕事でもするという態度なのに対して、生身の女であるジーナは自分の境遇を嘆き、ロボットに文句を言う。機械と人間の対比によって、人が人たるゆえんであろう喜怒哀楽を際立たせて描いているようだ。
 こういった、
(5)限られている枚数で最善を成し遂げるべく計算する「構成」や「演出」
が、吾妻マンガにはあると思う。
 好みは人それぞれだろうけれども、物語にかような諸条件が揃っている時、ぼくら読者はそこに"芸"を見出し、楽しむ事ができるのではないだろうか……?
(文中の画像は単行本第1巻の中表紙。)



故郷

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(COMIC アレ! 1994年6月号)

"Kokyoh (meaning : The home town)"

People are about to depart from a planet, as a comet is going to collide with this planet. But a biologist will not to get out of here, because ...

 宇宙生物たちに囲まれて座り込んでいたヤマモト博士は、宇宙船の女キャプテンから叱られる。この星にはやがて彗星が激突しようとしており、脱出を急がねばならないのだ。しかし博士はこの星に残って研究を続ける覚悟でいるらしい。
「だから博士の満足する数だけ船に乗せてかまわないんですよ!」
とキャプテンは言うのだが、この生物・ポロポロには非常に珍しい特性があって……。

*『銀河放浪』第2話。SFというととにかく何かしら「メカ」が登場し、それが重要な役割を果たすものだといった先入観が僕のような読者にはどうしてもあるのだけれど、これがあっさり裏切られる。「メカ」が見世物になってはいないとしたら、では何に興味の焦点があるのだろう? と考えるに、吾妻マンガにおいてはどうも「架空生物」が、この役割を引き受けている気がする。
 この『銀河放浪』シリーズでは、現実の生物学を基礎とし、そこから空想を発展させたアイディアが見られるようなのだけれども、吾妻マンガでは必ずしも現実(自然科学)にとらわれない架空生物も多数登場している。中には何が何やら全く理解不能で、「謎」の塊みたいな怪物までが(ジャンルとしてはSFではない、幻想的な作品で特に)姿を見せていたりする。それらは人間の持つ情念(例えば性欲とか不安とか)が目に見える形を与えられて出現しているのかも知れないのだけれど、「人工的な物ではないようだから、とにかく自然の生物であるらしい」という以外、確かな事が何も分からないのだ。こういった特徴は、生物あるいは自然というものに対する畏敬と興味が作者のうちにあるからなのではないかと思える。
 といって、吾妻マンガでは人工的なもの(科学技術)に何ら「夢」は無い、というわけではなく、その事はSF短編集であるこのシリーズで後に明らかになってゆく。



流刑星

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(COMIC アレ! 1994年7月号)

"Rukei-sei (meaning : The exile planet)"

A prisoner is exiled to a planet. There are many birds which looks exactly like a beautiful women. But ...

 空中に突然、ゲートが開く。そこから外へ出されたのは1人の囚人だった。見渡す限りどこまでも荒野が続き、何も無いような流刑星。と思ったら、人間の美女にそっくりの鳥人が空を飛んでいるのに気付いた。
「こ こりゃすげえ! 今までで一番サービスのいいムショだぞ」
 囚人である男は大喜びして鳥人の後を追う。走るうち、やがて森が見えてきた。食べ物にも美女にもありつけそうだと男は喜色満面になる。が、実はそこは奇妙な地獄だった……。

*描かれている世界はまさに夢のようで、空想物語ならではの楽しさ。結末が笑える。



セキュリティポリス

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(COMIC アレ! 1994年8月号)

"Sekyuriteaporise (meaning : The security police)"

A female ambassador is welcomed by a VIP guard. He takes 2 very large lizard. According to his explanation, these creature are reliable on this planet whose political situation is unstable.

 アジロ星の宇宙港。到着した女・ヨシコ大使を、警備主任のタローが出迎える。この星は政情が不安定で、大使がいついてくれない所なのだった。それがためこの男女2人にはずっと、イートがついてきている。イートは人間よりも背丈があるが、その外見はとぼけた大トカゲみたいで、要人の警護で頼りになるというけれど、ちょっとそういうふうには見えない。一息ついて食事をしていたら、早速2人は銃撃を受けて……。

*微妙に現実をふまえた延長上にあるお話なのが説得力を持っており、楽しい。身辺警護といえば暴力を武器にするもの、といった先入観にひっかけて読者をびっくりさせるアイディアはユニークだ。



料理長

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(COMIC アレ! 1994年9月号)

"Ryohri-choh (meaning : A chef)"

A girl comes into restaurant. She has chased a robot which run away from its place of work. But the robot has nothing vicious ...

 森を抜けて馬(?)に乗った娘がやってきた。目指す所には何やら行列ができており、「へごら名物 手打ちどどそば・うどん」というのぼりも見える。その店内で料理をしているのはロボットだ。娘は拳銃を抜く。
「捜したぜR636」
 彼女は探偵で、手配され賞金もついている職場放棄ロボットを追ってきたのだった。しかし当のロボットは実に優秀なようで、およそ悪質な素振りは何も無い。
「なぜ逃げ出したりしたんだ?」
娘が理由をたずねてみると……。

*人間くさい珍奇なロボットが笑える。西部劇を模した舞台になっているが、娘の名乗る「ポンカーテン探偵社」というのは、アメリカに実在する「ピンカートン探偵社」のもじりか。



掘り出し物

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(COMIC アレ! 1994年10月号)

"Horidashimono (meaning : The acquisition)"

A man and a robot check a dusty planet. They try to find out something valuable in dump. Then they watch a beautiful half-naked woman at there ...

 オンボロ宇宙船が、ゴミだらけの星に着陸する。乗っていたのは男が1人とロボット1台。彼らは回収業者であるらしく、何か価値あるものが捨てられていないか探しに来たのだった。ロクな物がなかったけれど、ゴキシンカ(昆虫の進化したもの?)が何か騒いでいるのに気付く。見るとそこには、色っぽい半裸の美女が1人いて……。

*およそ平凡ではないアイディアが絶妙。ゴキシンカという変てこで面白い生物は、もしかするとTV番組の或る戦隊ものに登場した「何々シンカ」という悪役の名前がヒントになっているのかも?



お届け物

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(COMIC アレ! 1994年11月号)

"Otodokemono (meaning : A delivery goods)"

There is a small architecture on a extremely cold planet. A young man works alone at there. He wishes to meet and speak with somebody human. Then he notices someone knocks at the door ...

 一年中マイナス80度という極寒の惑星に、ぽつんと1つ、環境改造所がある。所員は青年が1名だけで、その任期は50年。ちょっとワケありで彼は「島流し」的な目にあっているのだ。その徹底的に孤独な環境のなかで、はや1年がすぎた。
「ああ誰か人間と会って話したいなー」
と嘆いていたら、ドアをノックする音が。まさかと思いつつ開けてみるとそこには、可愛らしい美女が猛吹雪の中に立っていて……。

*地球上でやっている日常生活を、宇宙へ出てもまだ同じようにやっている人類を描くというのは定番的なのかも知れないが、それを伏線にしているSF的(?)なオチに苦笑させられる。劇中に登場する「ジョウント(Jaunte)」というのはアルフレッド・ベスター(Alfred Bester)のSF小説『虎よ、虎よ!』("The Stars My Destination" 1956年)で用いられている語のようだ。



我が友デビル

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(COMIC アレ! 1994年12月号)

"Waga tomo Devil (meaning : Devil the my friend)"

A captain of a space-cargoship, finds a strange creature which he has never seen, at a pet shop. It says him to buy itself, in human language. The captain bought it to kill time, but ...

 宇宙貨物船乗りである「俺」は、女にせがまれて店に入る。そこは銀河系中の共生生物を集めて売っている所だった。興味なかったのだが、なかに1種類、見たことがない変わった生物がいる。店主でさえよくは知らないらしいそれは「俺」に、自分を買えと言う。「俺」はこの珍生物を、退屈しのぎに買ってみることにしたのだったが……。

*ここでついに宇宙空間が舞台となり、宇宙船も登場。僕ら読者の生活するこの地上とはかけ離れた場所での物語となるだけに、視覚的にも大変楽しい回。本編中には女っ気が無くやや殺風景となるのを補うためだろうか、冒頭に美女が出演、色っぽい未来ファッションを見せてくれている。これもSFマンガらしくてうれしい。



職場

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(COMIC アレ! 1995年1月号)

"Shokuba (meaning : A place of work)"

Yamada the corporal falls into a cave in a battlefield. He finds a container which has an alien in it. He thought it seemed not an enemy, checks the container ...

 ヤマダ伍長は、敵の包囲を破るために単身で攻撃をしかけるよう上官から命ぜられる。出て行ったらさっそく敵である宇宙人と遭遇、からくも助かったが、地中の洞窟へ落ちてしまう。するとそこには、人間に近い姿だが見たことない異星人が入っている謎のカプセルがあった。どうも連盟には未加入の種族らしい。敵じゃなさそうだと思い、ヤマダ伍長はカプセルを調べ……。

*戦争テーマのSFというのは、アニメや映画だと定番中の定番なのではないだろうか。が、しかし、ここに語られる話は、およそ月並みな戦争アクションなどではない。痛烈な皮肉と風刺に苦笑させられてしまう。たいへん充実したコメディになっていると思う。
 なお、初出時サブタイトルは「戦場」だったらしい。「職場」というのは誤植の可能性が高いように思われるが、もしもそうでないとしたら、これも意味深長で皮肉めいていて面白い。



侵略者

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(COMIC アレ! 1995年2月号)

"Shinryakusha (meaning : The invader)"

An old farming robot, witnesses a very small gate opens in the air. Many insects rush out through the gate. The robot pushes a crop in it as a plug, but ...

 農業専門ロボットのR105は、とっくに耐久年数が過ぎているため、とうとう引退を命ぜられた。だが、まだすることがあるような気がした彼は、大農場から去り、独りで大地を耕し続ける。採れた野菜を産直品として露店で売る日が続くも、ある日、彼の畑の真ん中に超空間ゲートが開いた。
「こんな小さいの見た事も聞いた事もない」
と不思議に思い見つめていると、そこから沢山の虫が出てきた。これは人間にとって危険だと判断した彼は、ゲートに作物をはめ込んでフタをするのだったが……。

*侵略テーマのSFとくればスペクタクルな大戦争絵巻を反射的に思い浮かべるけれど、ここで舞台となるのは畑のほんの一区画、しかもその戦争の矢面に立たされるのは、善良で孤独な農業ロボット1台きりなのである。それで一体どうやって侵略テーマのSFにしようってんだ!? といぶかられそうだが、本当にちゃんとそうなっているのだからスゴイ。とても説明のしようがありません……。



釣師

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(COMIC アレ! 1995年3月号)

"Tsuri-shi (meaning : A fishing master)"

A girl has the ability to see a strange heat wave in the air. According to an old man, it is a crookedness of time and space. He is "a fishing master" who gets goods of another space through the crookedness. The girl becomes a pupil of him.

 娘は、空中に不思議なかげろうが出たのに気付く。それは彼女の両親には全く見えず信じてもらえないのだが、その場に居合わせた老人が説明をしてくれる。なんでもそれは"時空間のゆがみ"で、異世界に通じているらしい。老人はそれを利用して向こう側の物を入手する「釣師」なのだった。自分も釣師を目指すことができ、そうすれば大儲けできると知った娘・トポロは、老人の弟子にしてもらい一緒に旅へ出るのだったが。

*これは童話に科学考証を付したような雰囲気のお話で、これまたユニークな1品となっている。師匠である老人に対するヒロインの心情の推移にはドラマ性が強くあり、それもこの回の印象を暖かいものにしているように思う。



調査員

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(COMIC アレ! 1995年4月号)

"Chohsain (meaning : An investigator)"

An investigator looks for a planet which mankind is able to emigrate. She found an ideal one, but there are mysterious living things ...

 人類が移住可能な星を探し求め、調査員の宇宙船が、発見した惑星を調べている。環境はとても良いようだ。これで知的先住民さえいなければOKだが、コンピューターの分析結果ではその問題も無い。ついに大発見と喜んだものの、この惑星の支配的生物にはちょっと不思議な点がある。高等か下等か、ねんのために調べてみることにしたけれど……。

*擬似科学考証が分かりやすく、楽しい。風刺もあり、苦笑させられる。こうした移住テーマの作品を読んで思うに、未知の物へ挑むという特性のあるSF小説がもっぱらアメリカで発展したとすれば、やはり先祖から受け継いだ国民性のようなもの、自然を開拓整備してゆくことを美徳や勤勉と結びつけた価値観が、SF文化を育むのによく適合したのだろうか。意外なことにSF小説家ジュール・ヴェルヌ(Jules Verne)を生んだフランスが、SFではやや後進国なのだとマニアから話を聞いたことがあるが、どうなんだろう、そのへん?



呪われた星

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(COMIC アレ! 1995年5月号)

"Norowareta hoshi (meaning : The cursed planet)"

A family immigrates a planet. It was good as a reclaimed land, but there was an unexpected problem ...

 無人の惑星を開拓するべく移民した一家。しかしその大地はあまりにも不毛でどうしようもない。移民会社は別の植民星へ案内してくれたのでそちらへ引っ越すことにする。そこは食べていけそうな星だったがちょっとワケありで、先住民が絶滅した過去があるらしい。ともあれ今度は落ち着けそうだと喜んでいたら、予想外の変な問題があって……。

*恐ろしげなサブタイトルだが内容は笑える。実にユニークなアイディアだと思う。



海賊

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(COMIC アレ! 1995年6月号)

"Kaizoku (meaning : The pirate)"

A space pirate is in financial difficulties. He gets information about a catch, but the ship is ...

 サブウは宇宙海賊を仕事にしているけれど、ここのところツキがない。金貸しへの返済日が迫っており、何か早急に稼がなくてはマズいのだ。やはり宇宙海賊である(らしい)女・レジーは情報を持っており、いっしょに一仕事させてくれることになった。そして獲物の宇宙船は見つかったが、なんとそれは……。

*くすぐるようなギャグで物語の幕が開く。しかし中盤の展開は殆どギャグ抜きで、クライマックスにかけて盛り上がってゆく緊迫感はちょっと吾妻マンガらしからぬような雰囲気になっている。全体を通じ、男っぽい苦味を含んだお話だ。



探偵

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(COMIC アレ! 1995年7月号)

"Tantei (meaning : The detective)"

A woman came to see a detective. She requests him to look for her husband who is missing on this planet.

 ブタクサ星へ降り立った女、マリコ・コモドは、その惑星でただ1人の探偵であるロンのもとを訪ねる。行方不明の夫を捜してほしいというのだ。ここの支配種族は、植物から進化したブッソウゲ人で、歴史上、戦争が無かった宇宙でゆいいつの星ときている。そんな場所でなぜ、行方不明者がでたのだろうか……?

*このお話はSFであると同時に推理小説の要素をも骨格に持ち、成り立っている。1つ1つ、順を追ってたたみかけるような展開は知的な雰囲気でかっこいい。そして各所にちりばめられたギャグと風刺が効いている。ハードボイルドに美を見出すぼくら人類は、あわれな種族なのかも知れない?



相方

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(COMIC アレ! 1995年8月号)

"Aikata (meaning : The partner)"

A comedian breaks up with his partner after a quarrel. An old man who had worked as a pair of stand-up comedians, introduces him an android-woman ...

 エアポート演芸場で漫才をしていたヒロシは、相方のタケシとケンカ別れしてしまった。楽屋の清掃をしていた老人がそれを見、助けてくれる。彼も昔は漫才をやっていて、しょっちゅう相方を換え、しまいには最高の相方を見つけたというのだ。彼が紹介してくれたのは特注品だという女性型の有機アンドロイドで……。

*漫才テーマのSFというのは、僕は他に見たことも聞いたことも無い!



生物宇宙船

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(COMIC アレ! 1995年9月号)

"Seibutsu-uchuhsen (meaning : The life-spaceship)"

A small space-cargoship makes a crash landing on a planet. It will take 2 months to come a rescue, but a load is must to be delivered in 10 days. Then a captain of the space-cargoship sees that the load is "eggs of the life-spaceship" ...

 小型の貨物宇宙船が惑星に不時着した。エンジンは全壊し自己修理が不可能、通信機も壊れてしまい、救助が来るのは2ヵ月後と予測される。だが積荷の輸送期限はあと10日しかないのだ。女船長は絶望するも、積荷が「生物宇宙船 有精卵」だと分かった。これを使えば荷物が期限に間に合うかも……?

*生物と機械の中間的なもの、というアイディアは、もしかするとSFではさほど珍しくは無いのかも知れないが、面白い。現実の生物の特徴が基礎になっているギャグなのが笑える。



雨の霊能者

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(BRUTUS臨時増刊「アレ!」 1993年11月20日号)

"Ame no reinohsha (meaning : The medium in the rain)"

There are various ghosts in an apartment. A young man the lessee, asks a medium ...

 越してきたマンションの家賃が安すぎるのでどうも変だと思っていたら、やっぱり「霊」がいろいろと出現する。もう引越そうと思ったが、知人のすすめで霊能者を頼んでみることにした。霧雨の降る日、黒っぽい装束の美少女・サルバドール花子がやってくる。なんだか哀しげで寂しげで、どうにも頼りなさそうに見える彼女は……。

*『ガス屋のガス公』(『失踪日記』p.105参照)が発表されたその同じ年、およそ9ヵ月後の作品。全体的に絵が黒っぽく、やや写実的な画風で描かれており、一種独特のムードが漂っている。「水面蹴り」はプロレスラー・橋本真也の得意技らしい。「にーぶん ぱーねる」は合作でSF小説(『神の目の小さな塵(The Mote in God's Eye)』など)を発表している作家。「すていぶん きんぐ」(Stephen Edwin King)はアメリカのホラー小説家。「でいーん・R くーんつ」(Dean R. Koontz)もアメリカの作家の名前のようだ。



ハンマー・シャーク

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(SFマガジン 1989年8月号)

"Hammer-shark"

A big cat walks with his 2 hind legs, in a vast plain. A girl calls to him to stop :
"Hey, will ya have something to eat ?"
The cat takes out a seed from a bag.
"Is this all ?"
The girl is discouraged, but the cat says :
"We don't eat as it is, but ..."
When the cat tosses the seed on the ground, it grows up at once and produces a fruit. But ...

 見渡す限りの草原を、大きな猫が2本足で立って歩いている。それを少女が呼び止めた、
「ねえ 何か食べ物持ってない?」
猫は袋から何かの種を1粒取り出す。
「これだけ?」
少女はガッカリするが、猫は、
「そのまま食べるんじゃなくて……」
と種を地面に投げる。すると種はすぐ芽を吹いて、木になり、実がなるのだった。しかし……。

*(警告:以下、結末に言及している部分があります)

 『失踪日記』の「イントロダクション」、p.5に、「89年11月 わたしは某社の原稿をほっぽって逃げた」とある。この不思議な短篇は、そのほぼ直前の時期に執筆されたようだ(このお話の主人公たちが旅人であるという点は、こうした事を考量すると意味深長に感ぜられる)。
 猫は、ちっぽけな種を、思いもよらぬ方法で次々と大きくし、食料にまで変換させている(これは、小さなヒントを発展させてゆき、ついに作品にまでまとめあげる、"創作"という営為を連想させるかのようだ)。
 猫による苦労の結晶(いわば「作品」)を買い上げるキーウイ(ニュージーランドにいる鳥で、飛べないのがひとつの特徴)のような生物は、どっしりした大きな亀に寄生している(これは巨大資本をバックとしてそれを運用している出版界の人々に似ている、などと考えたら失礼に過ぎようか)。その生き方はより安全だが、猫と少女はその生き方を選ばない(創作者というものは運命的に孤独かつ自由な存在なのではないか?)。
 そして猫と少女は、池を見つける。その水中に潜むものがこちらで御し得るなら、食料が手に入り、風呂でリフレッシュできる(これは読者やファンというものが、創作者にとって励みとなる場合があるのに似ているように見える)。少女は喜ぶがベテランである猫はフロに入ろうとはしない(苦笑であるが、彼はここで初めて笑っている。彼は「池」で安らぎや快復を得られないようだ)。少女はハンマーシャークを見たがり、猫は見たがらない、しかしハンマーシャークは出現してしまう。が、幸い、その凶暴な生物は「引っ越し」をしているだけなのだった(読者というものは年月のたつうち凶暴に成長する者もあり(その典型として反省すべきは僕のようなヤツなのでしょうけれど……)、暴力的な「評論」によって創作者に致命傷を与える場合がある。おまけに気まぐれでもあって、その"居場所"すなわち自分のよって立つ主義や好みを変えたりするものだ)。
 ……ここに展開している幻想には、創作者として生きるうえでの作者の苦悩が反映されているような気が、僕はしたのだけれど、どうなんだろう? 作者の脳裏に何があってこうした物語になったのか、全く知る由も無いのだが……(なんにせよ、こんな変な解釈をつい試みるような読者は、執筆する側にとってきっと迷惑なのだろうなあと申し訳なくも思った)。
 なお、ハンマーヘッドシャーク(Hammerhead shark 撞木鮫(シュモクザメ))という生物ならば、実在する。これがモデルになっているのではと考えられるものの、なぜこの魚がモデルに選ばれたのかは、分からない。

(単行本『銀河放浪』第1巻は、ここで終わっている。)



プリンセスミコ・サーガ

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(COMIC アレ! 1996年3月号)

"Princess Miko saga"

When Miko the princess reads a book, a teacher of physical education speaks to her :
"It is high time for study."
The book that she has read is a strange coterie magazine. She is very strong in spite of her childlike figure. She doesn't know that a crisis of her homeland is near at hand ...

 読書していたミコ姫に、
「お勉強の時間ですよ」
と体育教師が声をかける。彼女が読んでいたのは「あやしげな同人誌」だったのだが、とにもかくにも武術の練習が始まり、姫はそのあどけない容姿に似ず、天才的な強さを見せる。
 しかし彼女の故郷・ザル帝国には、姫の運命を全く変えてしまう危機が迫っていた……。

*『プリンセスミコ・サーガ』シリーズの第1話。既に書いたとおりこのエピソードは単発読み切りで発表されたかのような形跡があるも(初出誌ではこの後『ジェーンウォーズ』が掲載されたようである)、こまかい事情は分からない。「ザル帝国」というのはジョン・ノーマン(John Norman)によるSF小説の反地球シリーズ(この舞台が「ゴル(Gor)」という星になっている)のパロディか何かだろうか?
 しかし宇宙船が登場したりしている以外、この第1話にはこれといってSF色が無いように感ぜられる。ここで描かれているのはむしろ、ヒロインたるミコ姫の無茶苦茶な人物像のようだ。あまりにも深窓の育ちなせいか世の常識的な事がまるっきり通ぜず、おかしなものを読み過ぎて耳年増(みみどしま)になっているのかアブノーマルも全く平気といった判断と行動をやってのけ、読者はびっくりさせられる。もしかすると『プリンセスミコ・サーガ』がシリーズ化したのは、ヒロインのあまりにも強烈な性格が一因であったのだろうか?



プリンセスミコ・サーガ II

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(COMIC アレ! 1996年5月号)

"Princess Miko saga II"

Parents are missing, to make matters worse, Miko the princess lost her empire. But she meets her elder brother again, travels the universe with him, looks for a new planet.

 両親の行方は分からず、今や故郷の帝国も失ったミコ姫。しかし兄と再会し、新しい惑星を捜し求めて宇宙を旅するのだった。兄は仲間のもとへ帰りたがるが、ミコはこれを引き止める。そうこうしているうち、コンピュータが移住可能な惑星を発見。しかしそこには……。

*格闘にめっぽう強いミコ姫だが、いろいろな技を使い分けていたり、勝負に先立って(動き易くする為だろう)自分の服を引き裂いていたりと、その描写が細かい。天然ボケな性格に圧倒されてこちらの側面は印象が弱まってしまうかも知れないが、ミコ姫は「格闘美少女」キャラクターでもあることが分かる。



プリンセスミコ・サーガ III

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(COMIC アレ! 1996年6月号)

"Princess Miko saga III"

A spaceship of Miko the princess, losts its control. The ship seems to be drawn toward an asteroid. Presently, a beautiful woman comes along to the ship ...

 宇宙船内で武術の稽古をしているミコ姫と兄・シーウルフ。そこへコンピューターが異常を警告、船の制御が不能になったという。どうも小惑星へ引き寄せられているようなのだが、見れば誰かがこちらへやって来る。なかなかの美人だったが、その来訪者は言う、
「ドクター アダダがお呼びだ おとなしくついて来い」

*プリンセスミコの装束は今回大きく変更されている。長袖と襟が無くなって、スカート(?)は非常に短く半透明となり、細ひものような形状だったリボン類は花びらのようなそれになった。



プリンセスミコ・サーガ IV

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(COMIC アレ! 1996年7月号)

"Princess Miko saga IV"

Miko and Seawolf, her elder brother, play a match on a ring, at a bar. Miko wins a match, but spectators clamor because they thought it was match-fixing.

 酒場にしつらえてあるリングで、プロレス(?)をするミコ姫とシーウルフ。米代稼ぎの為だったのだけれど、ミコ姫が勝つや客たちは騒ぎ出した、
「そんな小娘が強いわけねーだろ」
そこでシーウルフがアナウンスをする、
「インチキだと思うやつは自分で試してもらおうじゃないか! プリンセスへの挑戦者をつのる!」
かくて、カネをかけてミコ姫は客と戦うことになり……。

*今回、お話の性質からか、ミコ姫の装束は女子プロレスラーのそれのようなデザインになっている。



プリンセスミコ・サーガ V

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(COMIC アレ! 1996年8月号)

"Princess Miko saga V"

Miko's favorite food is out of stock. The party of Miko drops into a planet which exports it.

 めんたいこの買いだめが切れてしまい、ミコ姫は大騒ぎする。困り果てた兄のシーウルフは、めんたいこを輸出している星へ立ち寄るようコンピューターに命じるのだった。かくて姫たち一行は、ハラミ星の大気圏内へと入るのだったが。

*ミコ姫の服は前回のプロレス的なものと、初期のひらひらフリルを合成したようなものになっている。またトビラにあるとおり姫はとある事情から長剣をふるうこととなり、いよいよ"闘う美少女"としての本領を発揮してゆく。そして「女」を武器にするところも今回見せている。



プリンセスミコ・サーガ VI

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(COMIC アレ! 1996年9月号)

"Princess Miko saga VI"

The party of Miko ends up fighting against a dragon with a sword. Seawolf, Miko's elder brother, does lead-off battle, but ...

 パーティを組み、長剣のみを武器として携え、竜と戦うことになったミコ姫たち。一番手は兄・シーウルフが引き受ける。
「やつを動き回らせて スタミナを奪っておく」
という戦術だった。しかし竜は思いのほかすばしっこく……。

*内容としては前回からの続き。どこかゲームソフトなどを連想させる展開だが、登場人物の名前にもそれをもじっているのではと思える部分がある(「トロ王子」など)。ミコ姫が持つ特殊能力について疑似科学考証があり、SFの要素も加わっている。竜のキャラクターはいかにも吾妻マンガらしく、およそ定石をなぞる平凡なファンタジーにはなっていない。



プリンセスミコ・サーガ VII

B07

(COMIC アレ! 1996年10月号)

"Princess Miko saga VII"

A spaceship of Miko's party, has to be refueled and repaired. Nevertheless, the party has no money.

 今回はぐっと近代的な文明を持つ惑星へ着陸したミコ姫たち。燃料補給と船のメンテナンスが必要なのだが、クレジット切れになった。シーウルフは修理の監督に残らねばならず、ミコ姫とじいの2人が何とか稼ぐことになった。しかし働こうにもうまい仕事は見つからず……。

*ミコ姫の服はトビラにあるとおり、ごく普通の少女が着る様なデザインのものになっている。



プリンセスミコ・サーガ VIII

B08

(COMIC アレ! 1996年11月号)

"Princess Miko saga VIII"

Miko's spaceship finds "a vacuum pearl oyster". If there is "a vacuum peal" in it, they can make huge profit.

 ミコ姫たちの宇宙船の前方に、何か障害物が。それはどうやら真空真珠貝で、もし中に真空真珠が入っていたら数百億クレジットの大儲けになると分かる。シーウルフは遠隔アームを使おうとするが、ミコ姫はさっさと宇宙服に着替えてしまい、全員で船外作業をすることに。貝を開いてみると、果たしてそこには真空真珠があった! しかし……。



プリンセスミコ・サーガ IX

B09

(COMIC アレ! 1996年12月号)

"Princess Miko saga IX"

Seawolf tries to rescue Miko, but their spaceship is destroyed by somebody. They can't escape from the planet, besides they are exploited as a game of a man-hunting.

 ミコ姫の救出にやってきたシーウルフと、じい。だが宇宙船は何者かに破壊され、惑星からの脱出は不可能となる。おまけにミコ姫たち全員が、人間狩りのエモノにしたてられてしまった。そこへ敵が姿を現す。どう見てもミコ姫たちに勝ち目は無く……。

*前回からの続き。逆転また逆転の、巧妙に計算された展開が楽しい。



プリンセスミコ・サーガ X

B10

(COMIC アレ! 1997年1月号)

"Princess Miko saga X"

Miko's party capture a high-performance spaceship from a bad person. They go to a distant nebula with it, and find a planet which mankind can live on it.

 悪人から分捕った宇宙船には、ゲート航法装置がついていた。ミコ姫たちはこれを利用し、遠くの星雲へ出かけてみることにする。王国を作れる手ごろな惑星を発見できるかも知れない、というわけだ。うまく生存可能な惑星に出くわしたが、その地表には何やら恐ろしげな生物がうろついている。二足歩行する一つ目巨人のようなそれをミコ姫は怖がりもせず、むしろ役立てようと考えて……。

*この回でミコ姫の装束は、再び初期のそれに近いひらひらフリルのものになった。姫の台詞に「108個の銀河を治める人類」というくだりがあって、時代背景が少しうかがえる。メチャクチャなようでいて姫はけっこう、支配者となり君臨する適性(?)を持った人物であるようだ。



プリンセスミコ・サーガ XI

B11

(COMIC アレ! 1997年2月号)

"Princess Miko saga XI"

Prinses Miko was sent to prison, but becomes famous by a disturbance. Her elder brother, Seawolf, knows her whereabouts, makes her to be released from there. Miko devises her new measures ...

 刑務所に食らい込んでいたミコ姫だったが、騒動で一躍有名人になり、居所を知った兄のシーウルフがやって来る。どうにか出所できたのは良いが、姫の野望(?)は変わらない。次にミコ姫の考え出した、王国建設のための策は……。



プリンセスミコ・サーガ 最終回

B12

(COMIC アレ! 1997年3月号)

"Princess Miko saga Saishewkai (meaning : The last inning)"

Prinses Miko's kingdom is under construction in a space colony that has only a desert. She makes a film as a publicity work, to recruit a people ...

 中は砂漠だけという、どうしようもないようなスペースコロニーだったが、ミコ王国の建設は進む。しかし国民が1人もいないとあっては、王国の繁栄は望めない。かくて国民募集の公報映画を撮ることになった。いったいミコ姫たちとその王国の運命は……?

*童話のようなハッピーエンドが微笑ましく楽しい。ミコ姫の両親がどこへ行ったのか、ミコ姫があとにした故郷のザル帝国はどうなったのか、残念ながら劇中に明言は無い。こうした点は今後、番外編か続編が執筆されるのを待たねばならないだろう。



ジェーンウォーズ

B13

(COMIC アレ! 1996年4月号)

"Jane Wars"

Dr.Tanaka the young scientist, works for science and justice every day, with his sweetheart, Jane. Dr.Suzuki the scientist, loves her and devises an evil plot ...

 青年科学者のDr田中は、助手で恋人でもあるジェーンと共に、日夜科学と正義のために働いている。しかし青年科学者であるドクター鈴木はジェーンにほれていて、悪事を企むのだった。助手である有機アンドロイドのアンナから叱られコケにされても、ドクター鈴木は計画を実行に移して……。

*既述のとおり『プリンセスミコ・サーガ』(第1話)の次にこの作品が公開されたようだ。
 最初のページで小型宇宙ステーションのようなものが出てくるのだけれど、その表札(?)にはなぜか「Drスミス 科学研究所」とあって、「Drスミス(劇中には登場していない)とは一体誰なのか?」という疑問が生じる。こじつけ推理すると、ジェーン(日本的な名前ではない)の姓がスミスで、Drスミスというのは彼女の父親か親族なのではないか? つまりは、Dr田中は科学者であるスミス氏に才能を認められて研究所を引き継ぎ、娘婿(むすめむこ)のような形で半公認の同棲をしているのかも知れない???



猫新聞

B14

(COMIC アレ! 1995年10月号)

"Neko shinbun (meaning : The cat press)"

A man relaxes in his gigantic spaceship. Then a cat speaks in human language, calls at his ship to get rid of rats. The man asks the cat to do exterminate on trial.

 プールまである大型宇宙船の船内で、水着姿の美女たちに囲まれ1人の男・社長がくつろいでいる。そこへネズミ駆除船が訪問の許可を求める通信を入れてきた。なんとその通信をしてきたのは人間ではなく猫だったので、社長は話を聞くことにする。やってきたのは半知性化された猫で、人間の言葉をしゃべるのだった。
「それじゃひとつやってもらうか 話のタネに」
と依頼したら、猫の仕事が始まって……。

*これがなぜ「新聞」の話になるのか、ちょっと説明しづらい。読んで戴くほかないかと……。



迷子

B15

(COMIC アレ! 1995年11月号)

"Maigo (meaning : A stray child)"

A man receives an SOS call, finds a boy in a space-suit. He says : "I had come to play, but I can't come back."
Nevertheless, there is neither any wrecked spaceship nor missing people in the area ...

 銀河系がマゼラン皇帝により統一された時代。宇宙軍でパトロール任務についていたヤマモト大尉と1台のロボットは、救助信号をうけ発信地点に向かう。彼らがそこで発見したのは、宇宙空間に浮かんでいる、1人の宇宙服姿の少年だった。
「遊びに来たら帰れなくなった」
と少年は言うが、この宙域に遭難船や行方不明者は無く……。

*SFで定番と言うか半ば約束事のようになっているであろうエピソードを逆手にとって、異を唱えている(?)のが興味深い。



魔法使い

B16

(COMIC アレ! 1995年12月号)

"Mahoh-tsukai (meaning : A wizard)"

A servant robot is delivered to a planet. It took 300 years to arrival as there is no means to deliver but a normal spaceflight. The robot is at a loss by himself, presently a girl appears and throws a spear at him ...

 宇宙船が、島へ着陸する。注文のあった執事型ロボットR38を届けに来たのだ。が、どういうわけか受け取りサインをする人間が現れない。注文主の座標は間違いないのだ。この星にはゲートも通じていないため通常空間運送を使うことになり、ロボットR38を届けるのに300年かかっていた。それだけ時間がたったため、どうも環境が変わったらしい。宇宙船は去って行き、1台で残されたロボットが途方に暮れていると、彼にヤリを投げつける人間の娘が現れて……。

*童話のような展開が、読んでいてわくわくする。ちゃんと風刺もあるところは大人向けだ。



天敵

B17

(COMIC アレ! 1996年1月号)

"Tenteki (meaning : A natural enemy)"

A meat industry is going to go bankrupt, as its production is decrease. A origin is unknown. So that a specialist is sent for, to investigate and solve the probrem.

 とある精肉牧場では、生産量が例年の1/100にまで落ち込み、存亡の危機に立たされていた。しかし原因は全く分からない。ここで飼育しているのはホーホーという生物だったが、これには、他の肉食獣に襲われた時、自分のからだの肉を切りはなし、敵がそれに気を取られているすきに逃げるという習性がある。牧場はそれを利用して精肉をしてきたのだ。牧場主たちは困り果てて専門家を呼び、原因究明と問題の解決をはかるのだったが。

*推理小説風の展開が、擬似科学考証と相まって、説得力のあるお話になっている。アイディアも構成も絶妙。登場するニブンという学者の名前はSF作家ラリー・ニーヴン(Laurence van Cott Niven)からとっているのかも知れないが、定かではない。



土竜

B18

(COMIC アレ! 1996年2月号)

"Mogura (meaning : A mole)"

There is a man who can go in and out to hyper-space, likes a mole excavates underground. He catches sight of a beautiful woman at a town, follows her ...

 空中に"目"だけが浮かんでいる。そのうち手首も現れ、果物を掠め取って、消えた。実は、土竜(モグラ)が地中を進むかのようにして超空間を自由に出入りできる能力を持つ男が、こそ泥をしているのだった。男は町で1人の美女を見かけ、その後をつける。しかし……。

*SFマンガとしての設定やギャグが入っているのだけれど、「こんな事ができたらいいのに」という、人々の共感を得られそうな空想から出発しているような部分があり、それによってSFマニアではない読者にも楽しめるお話になっているようだ。

(単行本『銀河放浪 2』は、ここで終わっている。)





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