"Ginga Hohroh (meaning : Roam about the Galaxy)" was written as a collection of Sci-Fi short stories. One of the stories was to be a serial, "Princess Miko saga".
はじめに
このカテゴリでは、2度目の失踪から復帰した後に発表されたSF作品、『銀河放浪』を紹介させていただこうと思う(『失踪日記』p.125。画像は単行本第1巻のカバーを展開した状態)。
『銀河放浪』シリーズは最初、各回の内容が独立している短篇として全24話が描かれ、そのうちの1つであった『プリンセスミコ・サーガ』がその後に各話完結の連続シリーズとなって11話掲載されたようである。こうした推移が作者自身の構想によるものであったのか、雑誌編集部のリクエストによるものだったのか、詳細は分からない。単行本はその収録順序が作品の発表順序と一致しない部分があり、また『銀河放浪』以前に執筆された作品も含んでいるが、ここではとりあえず単行本に従って記事を書いてゆこうと思う(下の画像は単行本第2巻のカバー)。
吾妻ひでお作品にはSF短編集として他に『どーでもいんなーすぺーす』、『狂乱星雲記』、『るなてっく』、『メチル・メタフィジーク』があるがこれらは1978年9月から1980年6月にかけて発表された作品で、そこから起算するとおよそ14~15年ぶりにこれらと近いシリーズが執筆された事になる。さらに見て行くと、この『銀河放浪』発表の後、SF短編のシリーズはまだ描かれていないようだ。とはいえ、単発でのSF短篇はしばしば発表されており、『銀河放浪』にしても『産直 あづまマガジン』2004年7月には新作が掲載されている。やはりSFこそは作者が本領発揮できる分野なのだろう。
『銀河放浪』シリーズはどの話も起承転結が正攻法かつきわめて明快で、人によっては戸惑うかも知れない不条理ギャグやブラックユーモアは抑制調節されているように感ぜられ、SFマニアというわけではないごく普通の読者も楽しめる内容になっている。などと言うと、平凡で陳腐なおとぎ話集なのだろうと思われてしまいそうだが、どっこい、そうではないのだ。SFというとジュヴナイル(児童向け作品)やTVアニメや映画くらいしか知らないという読者(僕などは、そうです)に、このシリーズは毎回、聞いたことも見たことも無いような物語を楽しませてくれるはずだ。そのアイディアの豊かさと独創性は、筋立ての巧妙さも加わって、読者をニヤリとさせてくれると思う。