"Alien Eiri"
Hideo Azuma seems to been conscious of a tremble of his hand in 1997. He had been drinking too much at that time. This series, "Alien Eiri", had written in such a critical condition.
はじめに
『失踪日記』のp.161で、「入院前と退院後の両方読めておとくです」と語られている『エイリアン永理』は、1997年春から1998年冬にかけて雑誌連載された作品だ。
やはり『失踪日記』のp.147~148によれば1997年暮れに手の震えを自覚、1998年春には「完全な連続飲酒状態になっていた」という。そしてある日ついに幻覚を経験するに至り、その恐怖があまりにも凄まじいものであったため、酒を切らさないようにしたことが語られている。
『エイリアン永理』にも、作者がこのころ酒で大変苦しんでいたらしいことは、「酔っぱらって描いてました反省してます」(第17話)とか、「ものすごい禁断症状で描いてました」(第18話)とかの手書きの文言が欄外にあるところからうかがい知れる。連載当時、殆ど全ての読者は何も作者の事情を知らなかったものと思われるが、この『エイリアン永理』はそうした危機的状況の真っ只中に執筆されていたのだ。今になってそれを知らされてみると、全くもってただただ驚く他はない。
単行本に収録されている全27話のうち第20話までが雑誌連載されたもので、21~27話は退院後、単行本発行のため描き下ろされたお話であることが、単行本巻末にある『あとがき日記』で説明されている。第20話ではヒロインの相手役である男(鈴木よしお)の境遇が大きく変化しており、シリーズ構成としてはここでいったん区切りがついているようにも見える。
が、しかし、入院による休載とかを考慮して第20話の物語が構成されたとは考えにくい。作者の入院は1998年12月25日(『失踪日記』p.164)、いっぽう第20話の誌上発表は(11月に発売されたはずの)1998年12月号。よって、第20話は入院の1ヶ月以上前に脱稿していたのではないか、と思われるからだ。なんとも不可思議ではある。作者は何か、直感するところがあったのだろうか?
単行本あとがきによると、編集者が出したアイデアでこのシリーズが生まれたらしい。そのことと関係があるかどうか分からないが、宇宙人をヒロインとしていながら『エイリアン永理』にSFの要素は強くない。むしろ「今 SF人気ないらしいから」などという台詞があったりして(第4話)、全体的にSFの色調を抑制したかのように感ぜられる。
だがしかし、単なる艶笑マンガで終わってはいない。単行本発行のため描き下ろしで加えられた部分に、色濃くSFが前面に出てきているのがこのシリーズなのである。第22話で予知能力、第23話で宇宙船、第26話で宇宙生物、第27話では悪役宇宙人が出現したりしているのだ。
ヒロインの永理がどのようなものに変形しようとも実はその正体は永理であって変わっていないように、ありとあらゆるものが描かれつつもしっかりこのシリーズは、まがう方ない吾妻マンガとしてまとまっていると思う。
(画像は順に、カバーを展開した状態、ひら(カバーを外した表紙)、標題紙イラスト。)