吾妻ひでお作品のあらすじ

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27 ネムタくん / チョッキン

* I'll introduce you 2 series, "Nemuta-kun" and "Chokkin" at this page. These are comics for boys. Characters play an active rule with a school as their stage.

はじめに

 このカテゴリでは、学校を舞台とした正統的(?)な少年マンガとして長期連載された作品から2つ、『ネムタくん』と『チョッキン』を紹介させて戴こうと思う。まずは前者、『ネムタくん』について。
 (下の画像は、朝日ソノラマ版単行本1~3巻のカバー。最初に出た単行本は講談社コミックス(1978年)なのだけれど、全話が収録されてはいないので、こちらをテキストに用いたいと思います。)

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 小学館の『少年サンデー』に欄外マンガでデビュー(1969年)した後、新人時代の吾妻ひでおは秋田書店の出版物をホームグラウンドに活躍していた。しかし記録によれば比較的早い時期に講談社でも執筆している(『愛の花』(1970年)など)。その後『テレビマガジン』での連載(『好き!すき!!魔女先生』(1971~72年)ほか)を経て、『月刊少年マガジン』で連載を持つに至る。それがこの『ネムタくん』(1976~79年)で、『失踪日記』p.139の言及によれば、限界を超えた仕事量をこなしていた時期に執筆していたようだ。
 考えてみると少し不思議な気もする。僕の個人的な記憶がもし正しければ、この頃の講談社マンガ雑誌はどちらかと言えばやや硬派なつくりになっていて、特に週刊少年マガジンなどでは1960年代後半から妙に前衛的な作品や政治的な社会問題をさえ扱った重い作品をしばしば載せたり、ギャグマンガ以外は基本的に全て「原作つき」にしたりと、いささか堅苦しい編集方針をとっていた印象があるからだ。つまりは、吾妻マンガがうまくなじむ土ではなかったのでは? という先入観が拭えないのである。
 加えて、当の吾妻マンガである『ネムタくん』が、これまたちょっと難しい。乱暴に言うと、主人公にこれといった特性が見当たらない。「一発でわかる特徴」を持っていないとでも言うべきか。
 少し比較してみよう。『ふたりと5人』の主人公・おさむは、恋にのぼせるうち「異性こそ全て」という人物像になっている。また、このカテゴリで後に紹介させていただく『チョッキン』の主人公は「カネこそ生きがい」という特徴がある。いずれも人物のタイプとして非常に分かりやすい。
 『ネムタくん』には、これが無いような気がする。

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 しかし……。
 実はそこに彼、ネムタくんの個性があるのではないか? 今になって読み返すと、なんだかそう思えてきた。
 「時代が人をつくり、人が時代をつくる」とかとよく言われるけれど、『ネムタくん』が連載されていた1970年代後半の若者像は、その前後の時代のそれとはまた微妙に違ったのである。60年代後半で学生の殆ど誰もが巻き込まれた(らしい)政治的な学生運動は70年代に入ってほぼ消滅状態になり、1975年にベトナム戦争が一応終結するとそれが一因となってか政治的な危機感は学生達の日常から薄れていった。そのような嵐の後に訪れた虚無感、歴史の中で自分達の使命が何なのかを見失ったような心情が、『ネムタくん』の主人公らに合致しているような気が、僕はする。
 大げさかも知れないけれどもし仮に、1960年代末ころから起きた性解放運動の落とし胤(だね)的なキャラクターが『ふたりと5人』の主人公おさむであり、1970年代後半の日本経済の停滞なり安定成長なりの影響を受けたのが『チョッキン』だったとすれば、そうした世情の"谷間"の時期に青春の只中にいた学生達の姿を、『ネムタくん』は微妙に反映していたのでは……などと思うのだ。

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 主人公のネムタ(そして悪友であるイトーと三蔵を加えた3人組)は、言うなれば一種の不良学生である。しかしケンカに明け暮れるとかいったタイプの不良ではない。女の子もカネも好きだが、といってそれ一筋に生きている様子もない。なんとも無軌道で享楽(きょうらく)的な彼らはこれといって人生の目標を持ってはいないかのようだ。そして、遊びほうけているようでいて、当人たち自身も気付かぬうちにそれを模索しているような気がする。
 ネムタたち3人組は、べつに学生生活を嫌がっているワケではないし、母校を憎み嫌っているとかというワケでもない(こうした点については最終回のオチに決定的な証拠があると思う)。
 そうではなくてむしろ逆に、ネムタたち3人組は誰よりも、青春の日々をこよなく愛し、得られる限りのものを得、なし得る限りの事を成し遂げようと必死になっていると言えるのではないか? それが過ぎて制御を失い、勉強する時間も惜しいとばかりに自分たちのやりたい事ばかりに熱中してしまっているので、世間のモノサシはネムタたちを「不良」と測定するのではないか?
 しかしどんなに無駄が多く、傍目に馬鹿げて下らなく見えようと、そんな事が出来るのも若ければこそなのではないか? 必死であればこそ徹底的になれるのではないか? 他人や世間から呆(あき)れられようと、青春も人生もその人のものなのだ。どうして世間の、他人の標準に全てを合わせねばならないだろうか?
 むろんここに描かれているのは、うんと誇張された喜劇ではある。けれど自由にのびのびと生きる事、それこそがあるべき本質なのではないか?
 名前の通り(?)「眠た」そうな目で、何かこう世の中を半信半疑で見ているようなネムタくんの姿には、主張と問いかけが実は込められているような感じがするのだけれど、どうだろう?
 精一杯生きようじゃないか、楽しく陽気に! と……。



1日2回退学!?の巻

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(月刊少年マガジン 1976年7月号)

"Ichinichi ni-kai taigaku !? (meaning : Expeled twice in a day !?)"

Nemuta gets up at 2:00 p.m. He smokes and goes to school. A schoolteacher gives him a scolding, but ...

 薄汚れた部屋で、主人公のネムタがやっと起床する。時計を見ればもう2時。誰も起こしてくれなかった事からすると、彼は独り暮らしをしているようだ。
「いまさら学校いっても どうなるものでもないが いちおう」
と、タバコをふかしつつ登校、そして先生につかまった。
「まいにち まいにち 授業おわってからきやがって」
と叱られるネムタ。
「これにはふかいわけが あるんですから」
と弁明を始めるけれど……。

*先生の台詞で、主人公が中学生だとわかる。憧れの女生徒・寛子ちゃん(今回はセーラー服を着ている)とその両親、および不良仲間たちが登場。のちにこのシリーズでレギュラー出演するようになる三蔵も顔を出すが、ヒゲをはやした中年風の容姿。
 麻雀も花札もこの頃はまだ実物(家庭用ゲーム専用機やそのソフトなど存在しなかったから)なので、「仲間」がいないと遊べなかった。このへんは現在と少々事情が異なっている。
 およそ品行方正とは言いがたくその反対をまっしぐら、ネムタくんの奇妙な青春物語の始まりだ。



プールでバイトはヤバイトの巻

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(月刊少年マガジン 1976年8月号)

"Pool de baito wa ya-baito (meaning : It's danger to work part-time at a swimming pool)"

Nemuta works at a pool. Then Hiroko, his beautiful classmate girl comes as a customer. Nemuta serves her desperately.

 ネムタはプールで監視員のアルバイトを始めた。だが一所懸命なのかデタラメなのかよく分からない働きぶり。そこへ偶然、寛子ちゃんが客としてやって来た。ネムタは必死で大サービスするのだが。

*寛子に対してはどうやら本気であるらしく、一途で献身的なところを見せているネムタ。誠意(?)が通じたのか、寛子はこの後、どうにか主人公の友人にはなってくれたようである……?



ツッパリ三人組夏をゆくの巻

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(月刊少年マガジン 1976年9月号)

"Tsuppari sannin-gumi natsu o yuku (meaning : 3 delinquent boys live through summer)"

Nemuta takes a nap in his hot room. Presently his 2 friends come to see him. They try to play mah-jongg, but they need another one person for it ...

 ネムタは下宿で昼寝をしているが、パンツ1枚で寝ていても耐え難い暑さ。なんとかして少しでも涼しい方へと身体は動くのだけれど、どうしようもない。そこへ悪友2人(イトーと三蔵)が遊びに来た。マージャンしようと言うのだが、もう1人いないことには……。

*まだ名前は全く出てこないもののイトーと三蔵が登場、このあと最終回までこの3人組は殆ど常に行動を共にするようになる。三蔵はヒゲが無くなり若者らしくなった? この当時には3C(自動車、カラーTV、クーラー)を所持しているならまあ裕福であると見なされたが、3つともまだ無いという家庭も珍しくなかった。ブリーフは普及し一般的になっていたはずだけれど、ギャグマンガの登場人物は少し古風にトランクスをはいている場合が多かったようだ。
 ネムタくんは「第二寿荘」に住んでいると今回判明するが、これは『無気力プロ』(『失踪日記』p.141で「77年 仕事場を借り アシスタントも2人入る」と語られているその場所)が存在したアパートがモデルになっているらしい。



クラブ・哲学はパラダイスの巻

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(月刊少年マガジン 1976年10月号)

"Club Tetsugaku wa paradaisu (meaning : Club Philosophy is Paradise)"

Nemuta tells teacher : "I'll establish a new club ..."
He seems to start a club of philosophy.

 ネムタは職員室に現れ、先生に言う、
「新クラブをつくろうかと思いまして……」
それがなんと「哲学部」らしい。先生は驚くが……。

*先生はこの回から、あごひげを剃って登場している。台詞にある「ロッキード問題」というのは、この年(1976)の2月、日本政府高官への贈賄が米上院で明らかになり事件となったもの。イトーと三蔵(二人ともまだ名前は出てこない)が前回に引き続き、ネムタとトリオを組んで登場。寛子はさっそく若いお色気を発揮させられているが、やはり編集部からのリクエストだったのだろうか。また、寛子は今回からブレザー型の制服を着用するようになった。群衆シーンのコマで、『おしゃべりラブ』の吾妻くん、ダンディー(『二日酔いダンディー』)、吾妻ひで子(『ふたりと5人』)、オズマ(?『美美』)、ネコイヌらとおぼしきキャラクター達が出演している。



寛子にしつこくアタックの巻

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(月刊少年マガジン 1976年11月号)

"Hiroko ni shitsukoku attack (meaning : Court Hiroko persistently)"

Nemuta finds a persimmon and tries to get a fruit. Presently he gets to Hiroko's house, walks in it.

 銭湯からの帰りだろう、ネムタはよその家の木に、柿の実がなっているのを発見、もいで食おうとする。そんなハシゴをしていたら、寛子の家にたどりついた。ネムタは部屋にあがりこみ、寛子と一緒に勉強することになったのだけれど。

*最初のコマの効果音が「カラン コロン」となっているけれど、ネムタは下駄ではなくて靴を履いている???(『ふたりと5人』の主人公・おさむは、下駄をはいて銭湯へ行っていたようなのだが……。)寛子の家は第1話でも登場しており、今回と少し外見が異なる。しかしネムタが最初は気付かなかった事からすると、ここで描かれているのは裏口という可能性も。



テスト回避作戦の巻

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(月刊少年マガジン 1976年12月号)

"Test kaihi-sakusen (meaning : The examination evasion operation)"

Nemuta takes an examination at a classroom. But he fills only his name in an answer sheet. A teacher scolds him because he always hands in a blank paper. At last ...

 教室では、今学期さいごのテストが開始される。だのにネムタは名前しか書かない。テストといえばいつも白紙なので先生に叱られ、寛子にもきびしくされるが、どうやってもテストを受けようとはしないネムタ。とうとう先生は困り果てて……。

*「電線にスズメが」というのは『デンセンマンの電線音頭』らしい。台詞にある「新宿」は、東京都に実在する地名。感心するほどありとあらゆる手段を使うネムタだが、どうもアメリカのヒーロー漫画についても知識があるらしく、今回コスプレをやってのけている。



おしかけハワイ旅行の巻

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(月刊少年マガジン 1977年1月号)

"Oshikake Hawaii ryokoh (meaning : Invite oneself to a Hawaii tour)"

Nemuta will live in poverty while the New Year holidays. Then he happens to meet Hiroko and her parents start on a tour to Hawaii. He is envious of their life, and gets burned up about them ...

「ことしも下宿でラーメンすすりつつ 正月すごすことになりそうだな」
わびしい正月をネムタがなかば諦(あきら)めていたら、寛子と彼女の両親がそろって旅行に出かけるところに出くわす。行き先はなんとハワイだという。ネムタは羨ましさも通り越し、頭にきて……。

*「キャンディーズ」は当時人気者だった、女性3人の歌手。ここで登場する寛子の両親は第1話の時と少し人相が異なる。海外で正月を過ごす日本人はこのころはまだ多くなく、それからすると寛子の家はけっこうお金持ちであるらしい。ネムタのみならず読者からのやっかみをもかわす為か、いやに寛子がお色気シーンを多くやらされている!?



ハゲしい決闘の巻

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(月刊少年マガジン 1977年2月号)

"Hageshii kettoh (meaning : A violent duel)"

A handsome schoolboy moves in Nemuta's class. He is popular with schoolgirls, and presently approaches Hiroko. Nemuta and his friends run out of their patience ...

 登校してきたのはいいが、ろくでもない事ばかりしでかすネムタたち3人組。そんな彼らのクラスに転入生が来た。伊藤というその男子生徒はハンサムで、さっそく女生徒たちにモテている。それだけで不愉快なのに加え、彼は寛子に近づきだした。ついにネムタたちは堪忍袋の緒が切れて、伊藤をやっつけようとするのだが。

*レーガンというのは単行本発行当時のアメリカ大統領。



鬼よりコワ~イ婦警さんの巻

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(月刊少年マガジン 1977年3月号)

"Oni yori kowahi fukei-san (meaning : A policewoman who is terrible than a demon)"

Nemuta and his friends wander about a town. Then a policewoman calls to them to stop.

 パチンコ屋で遊んでいるネムタたち3人組。そのあと街をうろついていたら、女が声をかけてきた。
「きみたち中学生でしょ 学校はどうしたの」
補導員なぞ怖いものかとナメてかかるネムタ。しかしその人、実は婦警だった。しかもおよそ普通の婦警ではなく……。

『エイト・ビート』のメチル・アルコール警部が成人して登場(!)したのではないかと思われるが、名前などは今回不明のままである。



恐怖の新入生教育の巻

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(月刊少年マガジン 1977年4月号)

"Kyohfu no shinnewsei kyouiku (meaning : A fearful education for new pupils)"

A teacher gives a lecture to his students at a classroom : "A new term starts now. We have new pupils. So I hope you set a good example for them."
But Nemuta and his friends don't listen seriously to him ...

「新学期 下級生もはいってきたことだし 諸君も先輩として模範になるように 勉強に 行動に がんばってもらいたい」
と先生が訓示しているその教室で、SM雑誌を読みふけり騒いでいるネムタたち3人組。結局、寛子に叱られておとなしくなる彼らであったが。

*寛子たち女生徒の制服はこの回から上着の合わせがダブルになり、ボタンの数が増えている。「青春時代が夢なんて」というのは"森田公一とトップギャラン"の歌。「二百カイリ問題」とはこの年に定まって話題となった排他的経済水域のこと。



身がわりリンチの巻

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(月刊少年マガジン 1977年5月号)

"Migawari rinchi (meaning : A substitute is beaten up)"

Nemuta picks up Yoko the delinquent girl. They go to a snack bar, happen to meet Nemuta's 2 friends and the fearful policewoman at there ...

 放課後だろう、ネムタたち3人組はそれぞれに寛子を誘う。しかし彼女は帰宅してしまった。
「スケバンのヨーコでもさそってみっかな」
とネムタが実行したら、後輩であるヨーコは喜んでついてきてくれるのだった。しかし2人で入ったスナックには、仲間であるイトーや三蔵も来ており、おまけに恐ろしいあの婦警までが居合わせて……。

*「はい また見てもらいます」というのはおそらく、映画解説者の淀川長治を真似ているものと思われる。



野外授業は大脱線の巻

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(月刊少年マガジン 1977年6月号)

"Yagai-jyugyoh wa dai-dassen (meaning : An outdoor class drifts away)"

Nemuta gets permission to go to a bathroom while a class. But he goes to school grounds instead of a bathroom for it. And he says : "I'll take lessons at here, as it's a beautiful day."

 授業中の教室で、ネムタが手を挙げる。
「ンコしてきて いいですか?」
許しを得て教室を出た彼は、なんと校庭で用を足すのだった。そして、
「天気もいいことですし ここでききます」
と言って、教室へ帰ってこようとはしない。とうとう先生は頭にきて……。

*ネムタは女子プロレスを観ているのか「ビューティーペアー」の歌をうたっている。板書きと、『テスト回避作戦の巻』に出てくる答案用紙の問題からして、先生の担当教科は数学であるらしい。「仕事はとっても苦しいが」と「青春ってなんだ」は、『しあわせのうた』の替え歌らしい?

(単行本『ネムタくん』第1巻は、ここで終わっている。)

講談社1

*上の画像は、最初に出版された講談社コミックス第1巻(昭和53(1978)年4月20日)のカバー。こちらも、この回までを収録している。



現ナマに手を出すなの巻

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(月刊少年マガジン 1977年7月号)

"Gen-nama ni te wo dasuna (meaning : Don't touch money)"

Unexpectedly, Nemuta and his 2 friends bilk out of a tearoom. Presently they run into a girl who seems a rich person ...

 朝からパチンコ屋へ行き、喫茶店で仮眠するネムタ。ふと目がさめたら、イトーと三蔵がいつのまにかやってきており、飲み食いのまっ最中。
「ごちそうになってるよ」
などと言われても、ひとり分のコーヒー代しかない。やむなく無銭飲食をきめこみ、あげくにガールハント(ナンパ)。そうしたら何とも幼い感じの少女が誘いに応じてくれた。この子、なぜだか大金持ちだったので、ネムタたち3人組は喜ぶのだったが……。

*これより単行本の第2巻。
 「パチンコ タイガー」というのは、似た名称の店が1979年の地図によれば大泉学園駅の北口付近に存在したようなのでそれがモデルかも知れない(喫茶店カトレアの1階もパチンコ屋だったらしいことが同上の地図で確認できるのだが、こちらの屋号ははっきりしない)。「(コーヒー) ジャバーウォック」というのは、『鏡の国のアリス』に登場する怪獣の名前からとっているものと思われるが、実在した店かどうかは……?



突撃!宿なしアルバイトの巻

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(月刊少年マガジン 1977年8月号)

"Totsugeki ! Yado-nashi arubaito (meaning : Charge ! A homeless part-time job)"

Nemuta falls behind in his payment, to be evicted from his room. He invites himself to Hiroko's house, succeeds to get a part-time job as a helper ...

 へや代を五か月も払わなかったので、ネムタは下宿を追い出される。イトーと三蔵のところへ居候をしようとするが、うまくいかない。困り果てたあげく、寛子の家へおしかけ、おてつだいに雇ってもらうことにした。とはいえ真面目な家事労働などネムタにできるワケもなく……。

*寛子の家そして両親が登場するのだが、このシリーズで既出のそれとは少し外見が異なる(不思議と、お父さんだけは毎回さほど違わない?)。



かわいいあの子は吸血鬼の巻

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(月刊少年マガジン 1977年9月号)

"Kawaii ano ko wa kyueketsuki (meaning : The lovely girl is a vampire)"

Nemuta and his 2 friends travel with hitchhike. Presently a car stops before them, and a kind driver is a beautiful woman.

 ヒッチハイクで旅行中のネムタ、イトー、三蔵。暑いし、車は停まってくれないしで、もうやけくそ、仲間割れのケンカをしていたら1台の車が停まってくれた。その親切なドライバーはしかも美女だったので、ネムタたち3人組は大喜びするのだったが。

*夏らしく怪談になっている。吸血鬼は吾妻マンガにおいてしばしば扱われる題材のようだ(西洋の妖怪は他にもいろいろあるだろうが、吸血鬼ほど吾妻作品でたびたび登場するものは無いのではないか?)。今回ネムタたちは部分的にハンサム顔で描かれている。ところどころ丸に「S」と書いてあるのは無気力プロにおいて、薄墨トーンを貼ることを示した指定。雑誌では印刷に出なかったはずだけれど、単行本の製版では再現されてしまったらしい。



ずっこけガンマンの巻

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(月刊少年マガジン 1977年10月号)

"Zukkoke gan-man (meaning : The clumsy gunman)"

Nemuta and his 2 friends visit a western small town. They make a clumsy mistake at a saloon, be scolded for it by a girl who has a rifle.

 砂嵐のはげしい西部の町へネムタたち3人組がやってきた。ひとかせぎしていこうと決め、酒場へ入る彼らだが、どうにもチームワークがなってない。内輪もめになってしまったところに、ライフル銃を持った寛子が登場。たしなめられる3人組だったが、その彼女にも危機がせまっていた……。

*学校の先生が、今回は寛子の父親役で出演。ここでネタにされているのは1960年代に流行した西部劇や、1970年代に出現したマカロニウエスタンであろうかと思われる。しかし世情としてはこの頃にはどちらも下火になっており、アメリカの西部開拓時代を描いた作品で人気があったのは『大草原の小さな家』(NHKで1975~1982年に放送)のように地味な開拓民生活を描写したホームドラマだったはずだ。流行にあえて背を向けているような作劇なのは興味深い。



なめんなよ女教師の巻

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(月刊少年マガジン 1977年11月号)

"Namennayo onna-kyohshi (meaning : Don't underestimate, woman teacher)"

A young beautiful woman comes to Nemuta's class for practice teaching. Nemuta and his 2 friends tease her. She seems innocent, but makes a sudden change after that ...

 ネムタたちのクラスは、教育実習できていた美女・山口先生がしばらく担任をうけもつことになった。いつもの津島先生(ここで初めて名前が明らかになっている)は病気で休みなのだ。するとさっそくネムタたち3人組は悪ふざけを始めて彼女をからかう。泣き出した山口先生を見てネムタたちはますます面白がって喜ぶものの、校長が教室から去ってしまうや、山口先生は別人のように豹変した。いったい何がどうなっているのやら……???

*(注:以下は単なる思い出で、作品の内容と直接関係ありません)
 既に書き散らしたことですけれど、僕が初めて無気力プロで仕事のお手伝いをさせて戴けたのがこの作品だったので、今でもいろいろ覚えています。
 …… 喫茶店カトレアで吾妻先生にお会いし、先生がネーム(コマ割りと台詞のみ記入すること)を入れ終えられたところで一緒に店を出ました。このとき先生に連れていって戴いたのが、仕事場だった「無気力プロ」へ上がりこんだ最初だったのかも知れません。先生は僕へ「本棚にある本でも読んで、ちょっと待ってて」とおっしゃられて出てゆかれたのですが(一度ご自宅へ戻られたのだったと思います)、いかに僕のような馬鹿でも緊張しないではおれず、のんびり本棚の本を読んで待つ、などという芸当はとてもできませんでした。しかし図々しさも桁外れだったから、おとなしく座ってはいなくて、仕事場をあちこち「探検」し、見学できるものは何でもよく見ておこうとウロウロ。それでまあ、吾妻先生の机の上を見てびっくりしたわけで……。
 沖さんの席はたしか普通の机ではなく、食事に使うようなテーブルが流用されていたと記憶します(なぜなのか、理由は未だに分からない)。でもけっこう面積があるんですね。その上に厚手の月刊マンガ雑誌を積んで高さを調節し、そこへ大きなスケッチブックをのせて画板(かつ事務用のマットみたいに多少の弾力を持たせていた?)のように用い、そのスケッチブックの上へ原稿を置き、ペン入れとかをしておられたと思います。ちょっと珍しかったのは消しゴムのカスをはらう道具で、僕は文房具屋に売っている「羽根バケ(羽根ボウキ)」を使っていたのですけれど、沖さんのものは洋服ブラシのとても柔らかいもののような、独特の用具でした。沖さんが急用でお休みしており、僕はその代打(と言うにはあまりにも、ですけれど)だったので、その席を使わせて戴くことになったのです。無気力プロの床面積はそんなに広大ではなかったので……。
 やがて吾妻先生が戻られ、いよいよ仕事開始。プロの世界へ自分も1歩踏み込めたのだ! と感じ、わくわくしました。先生は小さな箱を持ち僕に、
「いつもなにペン使ってる?」
「あ……スプーンペンです」
「? そりゃ聞いたこと無いなァ」
「あっ、あっ、カブラペンです」
「それならある」
吾妻先生は苦笑され、カブラペンのペン先を幾つか下さいました。「スプーンペン」というカブラペンの別称は確か、手塚治虫『マンガの描き方』(光文社からこの年に発行されたほぼ最新の入門書だった)で覚えたのを付け焼刃でつい口にし、恥をかいたのでした。そして先生は黙々と執筆を開始されたのです。
 しばらく待つと、先生からトビラの原稿を渡された……のですけれど……それを見て僕は真っ青になりました。人物にはペン入れしてあるものの、背景の校舎はざっとアタリ(おおよその位置を示す簡単な下絵)が入っているだけ……。僕は小声で質問しました、
「あの、先生……校舎とかは僕が描くんでしょうか……!?」
「いや、模様とかだけでいいよ?」
すごく心臓に悪い一瞬でしたけれど、一挙に楽になって、
(ああ、でも、僕もいつか背景を描かせてもらえるくらい、うまくなりたい)
などと考えたのですから、我ながら図太いヤツだと思います……。で、ブラウスの模様とかをおそるおそる描き始め、そうこうするうち玄関に、みぞろぎさんが現れたのでした。そそっかしい僕は馴れ馴れしくも自己紹介みたいな挨拶をし、吾妻先生があらためて、みぞろぎさんを僕に、僕をみぞろぎさんに紹介して下さいました。全く、何をやっても僕は恥ばかりかいています。
 プロの原稿、それも描きかけのものを生で見るのは初めてだったので、いろいろ驚かされた事がありましたけれど、「枠線が引いてない」のはとりわけ印象的でした。僕らアマチュアは最初に枠線を引いてからでないとペン入れしづらいのですが、プロの原稿ではそうした作業がアシスタントに委ねられるため、人物などのペン入れが最初なのでした(それが終わってからアシが、枠線を引くわけです)。
 ベタ(「×」印で指定された箇所に墨汁を塗ること)もやらせて頂いたのですけれど、これでもまた失敗。雑誌に載っている印刷された段階ではもう分からないですけれど、ネムタくんたちの学生服の上半身、あれってちゃんと腕や袖のシワとかも原画ではペン入れしてあるんですよ。だもんで、僕は最初それらの線が残るようにベタを入れてました。後で吾妻先生がチェックされてこれに気付かれ、
「こういう所、塗り残さなくていいよ?」
と教えて下さいました。ずっと吾妻マンガを読んできていたのだから気付いていてしかるべきでしょうに、観察力が乏しくて僕はそんなヘマをしていたのです。(全部塗りつぶしちゃうのか!? もったいないなあ、せっかく下絵描いてペン入れもしてあるのに?)などと思いつつ、白く少しだけ残していた部分に墨を塗り直しました。
 そんな調子だから作業が遅くて。深夜の何時頃だったか、夜食の休憩時間になりましたけど、僕はまだモタモタ描いてました。料理はみぞろぎさんの担当で、この時確か"もやしラーメン"が出たんです。部屋の中央にコタツだかテーブルだかがあって、先生とみぞろぎさんは机を離れてそちらへ座られました。しかし僕は(古文で習った『宇治拾遺物語』に"かひもちい"を食べたがる『児(ちご)の空寝(そらね)』ってのがありましたけど、なんかあんな心境で)ラーメンをご馳走になるのが心苦しくなおも机で描いていたら、吾妻先生が、
「**君も、メシにしましょう」
と呼んで下さったのでした。緊張しながら食べた夜食でしたけれど、もやしラーメンはすごく美味しかったです。
 ……なんの作文をしてるんでしたっけ?
 とにかく、そんな調子でおよそ役に立たない「アシスタントのアシスタント」でしたけれども、先生は僕のごとき駄目なアマチュアに何度もお手伝いをさせて下さいました。あまつさえ給料まで下さったのです。そして失敗ばかりしていたのに一度も叱られた事はありませんでした(それでますます申し訳ない気持ちになり、なんとか上手になりたいと必死になったのですけれど、僕には才能も実力も無くて役立たずのままになったのでした、とほほ)。
 吾妻先生は本当にお優しい方でした。これは少しでも無気力プロに関わった経験のあるファンなら、きっと誰もが口をそろえて証言するだろうと思います。



番長死すべしの巻

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(月刊少年マガジン 1977年12月号)

"Banchoh shisu-beshi (meaning : Die, a school gang leader)"

Nemuta and his 2 friends are hired to improve a school which is corrupted. They receive pay for it as a prepayment, but ...

 不良たちがのさばり荒れまくっている学園。その改革を願う校長に、ネムタ・イトー・三蔵の3人組が雇われる。
「かならずやダニどもをかたづけてみせます」
と宣言するネムタたち。カネをもらい、
「さ キャバレーでもいってパーッとやろうぜ」
などと喜んでいたら、さっそくそこの不良生徒たちに出くわして……。

*よその学校の問題に首を突っ込んで商売をしようと考えるのだから3人とも大したものだ。「にこちゃん」というのは幼児向けTV番組『ロンパールーム』(1963~1979年)に出てくるキャラクターのパロディらしい。「バイオニックパワー」うんぬんというのは輸入TV番組『地上最強の美女バイオニック・ジェミー』(The Bionic Woman 日本では1977~1978年放送)が元ネタだろう。「ぐーたらけいさつ」という旗が描かれているが、このへんは『エイト・ビート』に登場する名称と一致する。



お正月大乱戦の巻

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(月刊少年マガジン 1978年1月号)

"Oshohgatsu dai-ransen (meaning : Great confusion of the New Year)"

Nemuta lives a solitary and lonely New Year's Day. He makes plans to hold a New Year's party with his friends.

 下宿で独りぼっちの正月を過ごしているネムタ。石油が切れて暖房は消えるし、ラーメン作って鉛筆を箸がわりに食べようとすればゴキブリが出現するし、手はヤケドするしで、いい事がない。イトーと三蔵に相談を持ちかけ、
「酒とか食いものもちよって新年パーティーてのは?」
ということになった。招いてみれば寛子は来てくれたが……。

*「勘当されてっから いまさら家にはかえれんし……」
とネムタが独白するくだりがあり、彼の境遇が今回初めて明らかにされている。イトーと三蔵は家族が登場し、またイトーは「かずひろ」、三蔵は「三蔵」と、連載開始から19話めにしてやっと名前が出るのがこの回。冒頭のコマに「ゲイラカイト」(商標。1974年から日本でも販売され大流行したようだ)らしき凧が小さく遠方に描かれており、時代がうかがえる?



雪男誕生!?の巻

208

(月刊少年マガジン 1978年2月号)

"Yukiotoko tanjyoh !? (meaning : The Abominable Snowman's birth !?)"

Nemuta and his friends work as a coach at a ski resort, but they are fired. They have no money even to go home. Then a good idea flashed into Nemuta's mind ...

 スキー教室でコーチをつとめるネムタ・イトー・三蔵の3人組。しかしあっさりクビになった。カネをもうけて、しかも女の子にもてる計画だったのだが、かえりの電車賃もない。もはや絶望かと思われたその時、ネムタがふとひらめいて……。

*「イトウです」
「三蔵です」と2人が自ら名乗るコマがあり、やっと名前が定着した? 「護衛空母セントロー」とは日本軍のカミカゼ攻撃で最初に撃沈されたアメリカ海軍の船。ちょっとSFな結末になっている!?



夢と冒険の世界!?の巻

209

(月刊少年マガジン 1978年3月号)

"Yume to bohken no sekai !? (meaning : The world of a dream and an adventure !?)"

Nemuta works as a barker with his friends at a haunted house of an amusement park. But there is no attendance. They are completely at a loss, and ...

 遊園地の中にある「おばけやしき」で、呼び込みをしているネムタたち3人。しかし、
「このさむいのに なにがおばけだ」
と誰も入ってくれない。なんとかして客に来てもらわないことにはカネがもらえない。困り果てたあげくネムタたちは……。

*「オメガ星」というのは実在する(オメガ・ケンタウリ。実際には球状星団であるらしい)。ネムタたちはどうも映画『ウエストワールド』(Westworld 1973年)、あるいはその続編『未来世界』(Future World 1977年)にヒントを得たのではないかと思われる。



男ド根性空手道の巻

210

(月刊少年マガジン 1978年4月号)

"Otoko do-konjyoh karate-doh (meaning : Men's will power of karate)"

Hiroko finds that Nemuta and his friends play hookey at a warehouse of a gym. They try to disturb her to tell to a teacher, but she defeats them easily. She says : "I get into shape at karate club, recently."

 体育倉庫らしき場所で授業をサボっていたネムタら3人組は、ボールを持って入ってきた寛子に発見される。
「酒のませちまえば同罪だ」
とネムタたちは寛子を押さえ込むが、逆にあっさり倒されてしまう。
「あたし最近空手部できたえてるんだから」
とのことで、ネムタたちはショックを受けて……。

*三蔵の台詞にある「ハリマオ」は実在した人物。その人、谷豊をモデルにした映画か何かが三蔵の脳裏にはあったのではないかと思われる。なお彼はこのコマで入念にも、サングラスを角型のものに取り換えてかけている。



恋の大手術の巻

211

(月刊少年マガジン 1978年5月号)

"Koi no dai-shujyutsu (meaning : A great operation of love)"

A beautiful girl is waiting for someone at a school gate. Nemuta speaks to her, but to tell the truth, she has been waiting for Sanzoh, Nemuta's friend ...

 下校時刻なのだろう、ネムタたちが出て来たら、校門で誰かを待っている様子の美少女がいる。
「よーねえちゃん だれまってんの?」
「オレたちと あそびにいかない?」
 ネムタとイトーは声をかけるが、彼女はどこか別の所を見ているようだ。なんと彼女の待っていた相手は、三蔵だったのだが……?

*悲恋ものというのかこれは!? この年、「なんちゃっておじさん」なる怪人物が、「口裂け女」などと共に巷で話題となったようだ。



芸能界、ああ無情!?の巻

212

(月刊少年マガジン 1978年6月号)

"Geinohkai, ah mujyoh !? (meaning : Show biz, oh pitiless !?)"

Nemuta and his friends find Hiroko dresses herself up and goes somewhere. To their surprise, she has an audition for newcomer singer.

 学校をサボって喫茶店にいたネムタたち3人組は、めかしこんだ寛子がどこかへ行くのを見かける。あの真面目な寛子が学校をサボってまで出かける用事とは一体? 後をつけてみるとそこは、新人歌手のオーディション会場だった。しかし、かわいそうに寛子は最終審査まで残れず……。

*寛子の姓が「森」であると今回判明する(林寛子のパロディらしい)。(山口)百恵・(高田)みづえ・(榊原)郁恵はこのころ人気者だった女性アイドル歌手。なぜか「無気力プロダクション」なんてのが登場している。「アウト セーフ」「ヨヨイのヨイ」というのは『野球拳』と呼ばれる脱衣ルールのジャンケン(もとは愛媛県に生まれた宴会芸だったらしい)での掛け声。



大ボケSFの巻

213

(月刊少年マガジン 1978年7月号)

"Oh-boke SF (meaning : The stupid sci-fi)"

Nemuta and his friends have seen 14 sci-fi films continuously. They are taken back to their school, but they seem confused up to now ...

 SF映画14本立てを観、映画館から出てぶっ倒れるネムタ。一緒にいたイトーと三蔵もいささかくたびれている。気を取り直し3人で喫茶店に入ったが、先生に見つかり学校へ行かされてしまう。しかし3人はまだ正気に戻っていないみたいで……?

*「ホーイ ホーイでもう一パイ」というのは粉末ジュース(成分に人工甘味料や合成着色料を含んでいた事などが理由で市場から消滅したらしい)のCMパロディか。「回転ベッド」というのは、連れ込みホテルにある設備として有名だったもので、1980年代半ばに(危険である、その他の理由から)廃れていったのだとか。イトーが「ねまれ!」と言っているが、これは青森・秋田・岩手そして北海道などで用いられる方言らしく「座れ」という意味であるようだ。

(単行本『ネムタくん』第2巻は、ここで終わっている。)

講談社2

*画像は講談社コミックス版の第2巻(昭和53(1978)年7月5日)カバー。やはりこの回までを収録しているのだが、単行本化はここでストップしたらしい。



かけもちバイト作戦の巻

301

(月刊少年マガジン 1978年8月号)

"Kakemochi baito sakusen (meaning : Operations holding 2 part-time jobs)"

Hiroko goes to a feast, runs into Nemuta's 2 friends at night. Nemuta seems to work part-time at somewhere.

 お祭りの夜。ゆかた姿で来ていた寛子は、イトーと三蔵に出会う。ネムタがなぜかいないのだが、どうもバイトをしているらしい。
「なにか用でも?」
とイトーがたずねるや、寛子は、
「いいえ ただちょっと」
という返事で、何か隠しているみたいなのだが……?

*これより単行本の第3巻。
 「参考・龍神沼」というのは石森章太郎の同名作品か。「プレイバックパート2」というのは山口百恵の歌の曲名からだろう。
 ネムタの台詞に「メチル婦警!」とあり、どうやら『エイト・ビート』の「メチル・アルコール」が成人して登場していると考えて間違いないようだ。キャラクターが全く別のシリーズに顔を出すのは、『やけくそ天使』の主人公・阿素湖素子をはじめとしていくつか例はあるのだけれど、後日談のような形であきらかに成長した姿で現れ、かつ継続的に脇役で出演するのは吾妻マンガに珍しい事ではないかと思う。
 これから考えるなら『エイト・ビート』と『ネムタくん』の2つの世界は空間がつながっており、かつそこでは時間が流れているらしい(メチルちゃんが成人している事からすれば)と考えられる。とはいえ、『エイト・ビート』でメチル警部とよく一緒に行動していた独眼の大きな猫「ダヤン」は全く姿を見せてはおらず、『ネムタくん』の世界が『エイト・ビート』のそれに比しだいぶ現実的になっているのを感じさせられる。
 この、現実的になった(それによってある意味、夢は減った)という作風の変化は、古株の吾妻ファンにとって失望やショックの理由になり、読者層が少しずつ入れかわってゆく要因になったのではと思われる。とはいえ変にマニア根性をもっていない、より多くの読者が新たな吾妻ファンとなってゆき、堅牢な支持層を形成し新しい時代を築く結果にもなったようだ。



ワルノリ警備隊の巻

302

(月刊少年マガジン 1978年9月号)

"Warunori keibitai (meaning : The overdone garrison)"

Nemuta and his 2 friends work as seaside garrison. But they cause disorder at the beach resort by their work. Then a tough trouble happens ...

 ネムタ・イトー・三蔵の3人が、そろって海岸警備隊に入り働いている。しかしその仕事ぶりはムチャクチャで、海水浴場にむしろ混乱を引き起こすばかりという有様。そこへ手ごわいトラブルが発生し……。

*三人組のうち最も奇怪な事をしてぎょっとさせる三蔵だが、三人組のなかでは最も真面目でもあるのか、時おり正義の為に行動する姿が見られるようだ……?



珍ルール野球必勝作戦の巻

303

(月刊少年マガジン 1978年11月号)

"Chin rule yakyue hisshow sakusen (meaning : How to win a strange rule baseball game)"

Nemuta makes a fool of a girls' baseball team. They get angry him, so Nemuta and his friends must to have a game with them.

 女子野球チームのかっ飛ばしたボールが、草はらにいるネムタたちの方に落ちた。
「へー 女だてらに野球かい」
とネムタはコケにして、チームの女の子を怒らせてしまう。三人組は彼女たちと野球で勝負することになり……。

*この年にTVで、林寛子が主演の『がんばれ!レッドビッキーズ』(原作は石森章太郎)が放送され、作者も観ていたらしいので、そのへんがヒントになっているのだろうか。1976年には米映画『がんばれ!ベアーズ』(THE BAD NEWS BEARS)が公開されシリーズ化しており、野球少女というキャラクターはこのころの流行であったのかも知れない。



当確クリーン選挙!?の巻

304

(月刊少年マガジン 1978年10月号)

"Tohkaku clean senkyo !? (meaning : Be sure of being elected in a fair election !?)"

A speech meeting of a student council's election is held. Sanzoh, Nemuta's friend, runs for its president. Nemuta does desperately an election campaign ...

 生徒会選挙のため、立候補者の演説会が行なわれている。三蔵は生徒会長に立候補し、ネムタとイトーはその当選を狙って必死になる。しかしどうにもクレージーな雰囲気になってしまい、あの手この手の宣伝活動も功を奏さない。三人組はとうとう最後の手段で……。

*今回、寛子をはじめとする女生徒たちの制服は、ベタではなくカケアミになっている。学生服の男子生徒たちもたくさん登場するため、視覚効果としての調整がなされたのだろうか。冒頭でネムタたちが扮しているのは「チンドン屋」であるらしく、当時はまだ日本各地でごく普通に見かける職業だったと思われる。



大当たり!?三蔵宝クジの巻

305

(月刊少年マガジン 1978年12月号)

"Ohatari !? Sanzoh takarakuji (meaning : Great win !? Sanzoh lottery)"

Hiroko wins in a public lottery. Nemuta and his friends envy her, but they have no money to buy it. At last they decide to sell lottery by themselves ...

「なんか あったかいもんでも食いたい」
と願うネムタたち三人組だけれど、カネが無い。そんな彼らの前に、宝クジで10万円をあてた寛子が現れる。それならこっちも、と思うのだけれど、カネが無くてはクジも買えない。結局、自分たちでクジを発売してやろうと考えて……。



金と神社と悪魔と…の巻

306

(月刊少年マガジン 1979年1月号)

"Kane to jinjya to akuma to ... (meaning : Money, Shinto shrine and the Devil)"

Nemuta and his friends have no money at the very beginning of the year. They envy the Shinto shrine because "They can earn money without doing anything.", so that ...

 新年そうそうカネが無くて三日も食っていないネムタ。しかしイトーも三蔵も似た様な境遇なのだった。カネの落ちる音を聞いて3人が行って見れば、そこには神社があり、賽銭箱に次々とカネが投げ込まれている。
「いいショーバイだよな 神社って だまってて金はいるんだから」
と羨んだ彼らは……。

*寛子がネムタたちのイタズラに協力している、たいへん珍しい回。三蔵はションベンを同時に2方向へ飛ばすという、しょーもない「奇跡」を披露する。



人間タコ焼きの巻

307

(月刊少年マガジン 1979年2月号)

"Ningen takoyaki (meaning : The human takoyaki)"

* "Takoyaki" is a kind of Japanese food.

Nemuta and his friends receive a letter from Hiroko. She seems to be at her cottage, and invits them.

 ネムタがタコ焼き屋台をやっているのを見つけたイトーと三蔵。学費稼ぎのバイトだと言うのだが、あんまり売れないらしい。そこへ三蔵がふと思い出し、寛子からネムタたち3人にあてて手紙がきていたと教えてくれる。それによれば彼女はいま北海道の別荘におり、気が向いたら遊びに来いとのこと。3人は北海道へ旅立つ決心をしたが。

*北海道の人たちはこれを読んでどういう感想をもったのだろうか……???



卒業式ジャックの巻

308

(月刊少年マガジン 1979年3月号)

"Sotsugyohshiki jack (meaning : Occupy a graduation ceremony)"

Graduation is close at hand. Nemuta has to bid farewell to Hiroko. Nemuta and his gang take a last chance to play a nasty trick ...

 やりたい放題の学園生活をおくってきたネムタたちにも、とうとう卒業の日が来る。いろいろあったヒロコともお別れ、彼女だけでなくネムタたちの目からも涙がこぼれる。しかし、3人組は大人しくしてなどいない。今日が最後の機会と考えた彼らは……。

*これがシリーズ最終回。逆転、逆転、そしてまた逆転で、唖然とするようなとんでもない結末。まいった。
 なにはともあれ、青春は麗しい。



白銀とUFOがまねくの巻

309

(プリンセス 1977年2月号)

"Hakugin to UFO ga maneku (meaning : Snow and UFO beckon me)"

Love and her friends come to a ski resort. But they can not to ski so they have no money. Then Love witnesses UFO ...

*There are 2 episodes of "Oshaberi Love" that were not recorded, in this book.

 スキー場へやって来た、ラブ・ねむの木・吾妻くんの3名、そして犬のポコ。しかしスキーをやろうとしたら道具を借りるカネが無い。根性とヤケクソで(?)どうにか解決した彼らだったが、なんとUFOを目撃して……。

*『おしゃべりラブ』の単行本で収録しきれなかった作品が、ここでは2本入っている。
 登場するUFOのデザインは1920年代にアメリカで発行されていたSFパルプ雑誌にでも出てきそうなそれになっており、この年(1977)には後にSFアニメやSF特撮映画の流行が起きるのだけれど、そのような世情など一切お構い無しな所に、SF人間たる作者の気骨(きこつ)が垣間見える!?



豪華三本立て最終回の巻

310

(プリンセス 1977年9月号)

"Gohka sanbon-date saishuekai (meaning : The luxurious triple feature last inning)"

Students go to school in the middle of summer, find Love is swimming in high spirits. All students study desperately for an entrance examination, so they are amazed by her. But Love seems to have a view of her future ...

*Detail of this series

 ひどく暑いなか登校してみれば、ラブはプールで泳ぎ、はしゃいでいる。受験も迫ってみんなが必死になっている時期なのに、とあきれられてもなんのその、ラブはラブなりに、ちゃんと将来の展望があったようで……?

*サブタイトルにあるとおりこれが最終回なのだが、これでもなお単行本に未収録の回が存在するようだ(第21話、プリンセス1976年9月号掲載)。なぜ未収録なのか、その理由は分からない。
 ストーリーマンガとは異なりギャグマンガの場合、主人公がシリーズ全体を通じての貫通行動をとっていない(いつかは何をどうしてやろう、といった明確な目標や方向を持って行動してはいない)ことがしばしばあるようだ。だからこそ主人公はありとあらゆる事に手を出し、ありとあらゆる方面で事件を起こし読者を楽しませてくれる。ラブにしてもそれが当てはまり、最終回なのにオムニバスという無茶な構成を行なって大丈夫なのはそれが理由かと思える。
 とはいえ、それじゃ主人公のラブがほぼ無軌道で無個性な人物なのかというと、決してそうではない。その事がこの最終回には出ているようだ。
 受験に対しまるで緊張感を持っていないことを級友から警告されて、ラブは以下のように反論している。
「それだけかしら…? わたしたちの青春はそれだけのためにあるのかしら!? 勉強して上の学校へ行く それだけが道ではないはず… われわれ若者には無限の可能性があるのよ」
 このカッコいい(そしてたぶん真実をうがっているであろう)真面目な台詞を述べたあと、さっそくコケてしまうあたりが喜劇なのだけれど、ラブは日本の若者達の大部分が、工場で量産されてゆく規格品のような生き方を選択する現実を、ちくりと風刺している。いかに無難な人生航路であるとしても、果たしてそれが本当に、唯一最善の生き方なのかどうか? ラブは単なる「歩くはた迷惑」で、ムチャクチャなだけの少女ではないのだった。
 (『おしゃべりラブ』シリーズの詳細



ダイコン畑の巻

311

(月刊少年チャンピオン 1977年5月号)

"Daikon-batake (meaning : A Japanese radish patch)"

Yayoi grills fish for her brothers. Presently Shinji, her elder brother, becomes aware of that there is no garnish. He complains it, and ...

*There are 3 episodes of "Chibi Mama Chan" that were not recorded, in this book.

*Detail of this series

 やよいが学校から帰ってみれば、兄の真二と弟の五郎はゴハン欲しさに大騒ぎ。やよいがサンマを焼いてくれて、やっと食事できると思ったら、真二はどのサンマが最も大きいかを判断しようと必死になる。あまつさえ、ダイコンおろしがついていない事に気付くや、それを騒ぎ出した。
「ダイコン高かったから がまんしてね」
と、やよいは言うが、
「ダイコンおろしのついてないサンマなんて くえるかー!」
と真二はわめいて……。

*『ちびママちゃん』も『おしゃべりラブ』とほぼ同時期に執筆されたシリーズだが、こちらも掲載誌と同じ出版社による単行本は2巻でストップしており、そのあとの回が3話、ここに収録されている。が、それでもなお最終回までは収録されておらず、7話ぶんの単行本未収録作品が存在するようだ(2012年10月現在)。
 兄の真二がそれはもう徹底的なダメ人間ぶりを発揮していて、ためにヒロインのやよいは健気(けなげ)にも家事その他すべてをやらされ、てんてこ舞いの日々を送り、読者から同情と尊敬をあつめる運命となる。残された家族がもし兄だけだったなら、やよいも少しは厳しい態度を取れるのではと考えられるものの、まだ幼く何の罪も無い五郎が存在するので、世話をしてやらざるを得なくなっているようだ。このへんの人物配置が絶妙だと思う。
 (『ちびママちゃん』シリーズの詳細



こいのぼりの巻

312

(月刊少年チャンピオン 1977年6月号)

"Koinobori (meaning : Carp streamers)"

There are many carp streamers here and there at the town. (This is a Japanese traditional event for infantile boys.) Goroh, Yayoi's younger brother cries and longs for carp streamers, but she can't give him it because of poverty. So that she makes a tiny carp streamers for him. Goroh is very glad it, but then Shinji begins ...

 子供の日。こいのぼりが町のあちこちに見える。五郎が泣いてこいのぼりを欲しがるので、やよいは手製の小さなこいのぼりを与える。五郎はそれで大喜びするのだけれど、近所の男の子にからかわれるのだった。五郎は不平を全く言わないが、兄の真二は面白くない。男の意地をかけ真二はケンカ腰になり、大きい鯉のぼりを作り始める……。

*真二が今回も主人公並みに活躍(?)している。タバコおばけポルノ虫がちょこっと出演。



お兄ちゃん託児所の巻

313

(月刊少年チャンピオン 1977年10月号)

"Oniichan takujijyo (meaning : Big brother day care)"

When Shinji goes home, finds many children in his house. In fact, Yayoi begins to work part-time as a day nursery. The children are so noisy that Shinji decides to discipline them ...

 パチンコで負けた真二がうちのめされて帰宅すると、家には何故か幼児たちの集団がいる。やよいは近所の子供たちをあずかる託児所のバイトを始めたのだった。しかしなにせ子供のこと、うるさいし暴れるしで、ついに真二の忍耐も限界がきた。
「オレが教育しなおしてやる」
と言い出したのだけれど……。

*やよいが洗濯板とたらいで洗い物をしていたり、横山光輝のマンガ『鉄人28号』のパロディがあったりする点、いかにも昭和。シリーズ各所に散見されるこうした細部は、『ちびママちゃん』を日本ならではのギャグドラマにしているようだ。

(単行本『ネムタくん』第3巻は、ここで終わっている。)



はじめに

400

"Chokkin" is a story of a schoolboy who is absorbed in moneymaking. He is a son of a multi-milionaire, but he is a remarkable miser ...

 『チョッキン』は、週刊少年チャンピオンの1977年1月1日号(『みだれモコ』連載終了のほぼ1ヵ月後)から1978年4月3日号までに連載された作品だ。単行本は少年チャンピオン・コミックスが全4巻で発売されていたが、現在のところ絶版らしい。この単行本では一応、最終回までが収録されている。なぜ「一応」かというと、途中から「選(よ)り抜き」が行なわれており、以下の9話が単行本未収録となっているから。

男はつらいよ!の巻(少年チャンピオン 1977年3月28日号)
ホンモノの感触!の巻(少年チャンピオン 1977年10月17日号)
いざアメリカへの巻(少年チャンピオン 1977年10月31日号)
運動会で賞品ガッポリ!?の巻(少年チャンピオン 1977年11月7日号)
ライバル出現の巻(少年チャンピオン 1977年11月14日号)
恐怖の訪問者の巻(少年チャンピオン 1977年12月5日号)
バイトはつらい!の巻(少年チャンピオン 1978年1月16日号)
特効薬みーつけたの巻(少年チャンピオン 1978年2月13日号)
お茶がこわい!?の巻(少年チャンピオン 1978年2月27日号)

 どのような理由と基準で選り抜きが、誰の判断でなされたのかは不明。なお、なぜか1話だけ単行本『ハイパードール』に収録されているようだ(主役が50人!?の巻(少年チャンピオン 1978年3月27日号)、これは最終回の1つ手前のお話らしい)。
 この『チョッキン』連載終了後およそ11ヶ月の空白を経て『シャン・キャット』の連載が開始されるのだが、その『シャン・キャット』以後は週刊少年チャンピオンでの吾妻マンガ連載は途絶え、作者はそのデビューを果たした"少年マンガ"という最初の土地を離れて、活動の場を青年誌やSF専門誌へと徐々に移していったようだ。『チョッキン』執筆当時の事は、『失踪日記』p.141~142に言及がある。

400b

 さて……。
 題名の『チョッキン』は主人公の名前である。もしかすると「直勤(直くして勤勉)」とでも書くのかも知れない(?)が、ふつうは「貯金」を連想するだろう。しかり、これは拝金主義者の少年の物語なのだ。
 主人公とその両親の、カネに対する執着は徹底的で凄まじい。時には彼らの親戚までが登場し、とんでもない狂態をさらしている。おまけにマドンナ役の美少女・絵美は全くカネに欲が無いものだから、彼女が出演するその対比によって、主人公達のカネの亡者ぶりはますます強調されてしまうのだった。

500

 が、人よ、拝金主義を侮(あなど)るなかれ。「もったいない」の精神でものを大切にし、浪費をつつしみ貯蓄に励み、質素に暮らしてゆくのはむしろ美徳ではないか? また、いかに奇麗事を言ってはみても、カネは人生において切実な問題だ。それは大人の誰もが身に染みて分かっている。子供の世界にカネの話なんて……と顔をしかめるのは現実的ではないのではないか?
 無論、カネは万能ではない。出来る事と、出来ない事がある。それは他でもない主人公がこの物語で経験するし(級友の絵美が、主人公のカネに全く動じないのはさながら主人公への天罰のようだ)、彼の身内から拝金主義への反旗がひるがえっている時さえある。そんな事は分かっているのだ。そのうえで、あえての拝金主義なのである。

600

 また、主人公のチョッキンはべつに、あさましい少年ではない。たまにはケチをやめて普通の生活がしたいと願っているところを見せる。しばしば泣きながら笑っていたりする(?)が、本当に悲しい時には涙を見せず非情を装う男っぽさもある。誰だ、拝金主義者はえげつないだけの人間だなどと先入観を持っているのは。
 たしかに、主人公には気がかりな点もある。彼は何か大願(たいがん)を持っていて、その実現のため資金を蓄えているワケではなく、カネを貯め増やす事それ自体を目的としているかのようだ。これは言い換えれば彼が、人生に明確な目標を持っていないという事なのでは、とも見える。このへん、ある意味チョッキンは可愛そうな少年なのかも知れない。とはいえ、カネはある程度まで安全確実なものであって、それを貯める努力をするのは手堅く堅実な事で、決して無駄ではないはずだ。

700

 そもそもにおいて「いくら考えても人生の意味は誰にも分からない、そうだとしたらとりあえずは、一所懸命に働いてカネを貯める事につとめよう」といった考え方と選択は、世に少しも珍しいものではないだろう気がする。それどころかむしろ、大部分の大人たちが、いつの間にかそう考えて日々を送るようになっている場合さえ多々あるのではないだろうか?
 そんなふうに考えてみるとこの『チョッキン』は、猛烈な拝金主義者という"特異な人物像"を描いていると言うよりも、実はきわめて普遍的に、僕たちの多くが内面に持っているところを描いていると言えるのかも知れない。僕は、どうもそんな気がするのだが……。
(画像は単行本の背表紙と、各巻のカバー。)

付記:2014年10月、単行本『チョッキン[完全版]』が株式会社復刊ドットコムから刊行開始された。下の画像は第1巻の表紙。

完全1

 上述したとおり、秋田書店のコミックスは現在入手困難であり、そのうえ全部の回が収録されてはいない。その未収録の回まで読もうとするなら、かなりの手間、時間、予算がかかると思う。そういった努力をするよりも、こちらの入手を(これまた絶版、という事態になる前に)おすすめしたい。

完全2

 上は第2巻(2014年11月20日発行)。そして、

完全3

上が第3巻(2014年12月20日発行)。いずれも紙幣を模したようなデザインのカバーであるが、これを取り外すと……。

まるで通帳

 貯金通帳みたいな装丁がなされている。
 で、出版される前にこれらの3冊を、版元たる復刊ドットコムへ予約しておいた場合、以下のような特典が付いた。

メッセージカード

 貯金通帳型のメッセージカード。これは劇中、『芸術=金!?』の回などに登場した通帳の、実物大レプリカ(複製品)といったところか。開いてみると、

いよいよ通帳

まっさらの通帳みたいな罫線が引かれている。

(付記:右下にイラストの入っているのが正しいバージョンであるらしい。が、両方所持していれば、これはこれで貴重だろう)

右下すみ

 そして……。

絵美ちゃん肖像

 もしもツキがあれば、抽選で、直筆サイン入り版の第3巻を手中に収める事が出来たのだった! 最終回(「未来はバラ色!?の巻」(少年チャンピオン 1978年4月3日号))から、実に26年ぶりで描かれた絵美ちゃんの肖像である! 不確かだが、どうも全てのサインに、それぞれ異なる肖像が描かれたらしい(?)。

 こういう希少な復刻本が企画実現した場合、たとえあなたがギャンブルに全く関心を持ってはいないとしても、駄目でもともと。決断し、購入予約してみる事を、強くおすすめしたい。



出すのがおしい学級費の巻

401

(少年チャンピオン 1977年1月1日号)

"Dasu no ga oshii gakkyuehi (meaning : Unwilling to pay class dues)"

Today is a deadline to pay class dues, but Chokkin says that he forgot to bring it. The amount of class dues are very little, but he seems to be unwilling to pay it ...

 学校。今日は学級費を提出する日だけれど、チョッキンは持ってくるのを忘れたという。先生が問いただしてみれば、
「金がないから払えません」
とのこと。学級費はわずか200円なのだが、どうも要するに払いたくないらしい。そんな彼の貯金通帳にはしかし、1,356,750円の残高があるのだった……。

*あとで分かるが主人公チョッキンは中学生。およそ13歳として、その年齢で135万円持っているなら大したものだ(当時、文科系大卒事務職の初任給が10万円ちょっと、アルバイトの時給は600円に満たなかったかと思われる)。彼は貯蓄に関して言えば普通人のだいぶ先を行っているといえようか。
 すらりとした5頭身で登場する絵美は、あまり表情の変化が無い(顔が大きく崩れる事が無い)クールな美少女。雰囲気としてはドタバタが少し抑制され、シリーズの幕が開いているようだ。



ラーメン食べて!の巻

402

(少年チャンピオン 1977年1月3日号)

"Larmen tabete ! (meaning : Please eat larmen !)"

* Larmen is a Chinese noodles.

Emi calls to a street stall of larmen to stop at night. But she is surprised when an uncooked instant Chinese noodles is served. To tell the truth, Chokkin works part-time the street stall ...

 ラーメン屋のチャルメラが聞こえてきた。夜遅くまで勉強していた絵美は、家から出て屋台を呼び止める。ところが注文してみると、インスタントのラーメンが、しかも袋のまま出てきた。絵美は、屋台を引いていたのがチョッキンだったと知って驚く。なんでもバイトしているらしいのだが……。

*劇中の台詞から、絵美がいつもトップの成績であるらしい事が分かる。ラーメン屋の屋台は21世紀の今も(東京には)存在するが、駅前などに停めたままで客を待つ方法をとっている業者が多いのではないか。チャルメラ(管楽器の一種)を吹きつつ住宅街を移動しての商いという形式は、24時間営業の店なども珍しくなくなった今、もはや見られないのかも知れない。



ぜいたくは敵だの巻

403

(少年チャンピオン 1977年1月10日号)

"Zeitaku wa teki da (meaning : Luxury is an enemy)"

Chokkin watches his bankbook with a smile in a classroom. Emi is amazed by him. Presently a schoolboy gets closer to her, and asks her to go to the movies with him. All of a sudden Chokkin interferes with it ...

 教室。チョッキンは笑顔で貯金通帳をながめている。絵美があきれていると、男子生徒が彼女を映画に誘いに来た。突然チョッキンは話に割り込んでこれを妨害し、
「ぼくとゆー 非のうちどころないボーイフレンドがいるじゃありませんか」
と絵美に宣言する……。

*トビラは映画館内のイメージか。チョッキンの家と両親が初めて登場。絵美の母親も出てくるが、前回(ラーメン食べて!の巻)とは髪型が異なる? 「チョッキンのお父さんは会社いくつも持ってる大金持ちらしい」という絵美の台詞あり。途中、「純喫茶カトレア」が舞台となるけれども、実在した例の店はパチンコ屋の2階にあったようだ。



クリスマス・パーティーの巻

404

(少年チャンピオン 1977年1月17日号)

"Kurisumasu party (meaning : A Christmas party)"

Chokkin sells tickets of a Christmas party, at a classroom. Emi guesses that he must keep a percentage of the price. Anyway, the party is given at a chartered coffee shop ...

 チョッキンは教室で、「たったの二千円」というパーティー券を売りまくる。
「チョッキンのことだから会費ピンハネして もうけるつもりでしょ」
と絵美は読むが、とにかく前宣伝どおり一応、喫茶店を借り切ってのパーティが始まった……。

*喫茶店のドアに「○×中学様かしきり」の貼り紙があって、チョッキンたちが中学生であるらしいと分かる。



デッカイ初夢の巻

405

(少年チャンピオン 1977年1月24・31日号)

"Dekkai hatsu-yume (meaning : The great first dream)"

* Japanese people call one's dream on the second night of the New Year "hatsuyume".

Chokkin plans moneymaking in the New Year holidays. He had a very brisk dream, but ...

 正月から、あれやこれやでカネもうけをたくらむチョッキン。えらく景気のいい初夢を見たのだが、どうも思うようにはいかない。しかしとんでもない大当たりが待っていた!……のは良かったのだけれど?

*チョッキンの両親、そして絵美が、今回なぜか凄みのあるところを見せている。



チョッキン式すべり方の巻

406

(少年チャンピオン 1977年2月7日号)

"Chokkin shiki suberi-kata (meaning : Chokkin's skating style)"

Chokkin's house is very cold because of snowstorm, but his parents will not buy a stove. He begins to skate to warm himself.

 吹雪が家の中にまで入ってくるのに、チョッキンの両親は石油ストーブさえ買おうとはしない。あまつさえ自分達だけでラーメンを食いに出かけてしまった。チョッキンは何とか身体を温めようとするうち、地面に氷のはった所でスケートを始めるが。

*なぜか『ふたりと5人』風のエッチ系ギャグが入っている回。さらに加えて『やけくそ天使』のヒロインに似た女性も出演している!?



雪よ降れ降れの巻

407

(少年チャンピオン 1977年2月14日号)

"Yuki yo fure fure (meaning : Let it snow, let it snow)"

It began to snow, students make merry. But the snow is red, and tastes of strawberry. In fact, Chokkin sprays syrup for a shaved ice, from the roof of a schoolhouse. He charges students the price, but this business is brisk ...

 雪が降り始め、授業中だったが生徒たちは騒ぎ出す。その雪はなぜか赤く、おまけにイチゴの味がした。どういうわけかと思っていたら、チョッキンが屋上でシロップ(?)をスプレーしていたのだった。
「お一人様一〇〇円になっとります」
との事だったが、この商売はけっこうウケて……。

*缶スプレー式のシロップが販売されていたかどうか定かでないが、「霧吹き」は雑貨屋で売っていたはずなので、あるいは本当にこういうことが可能だったかも? この回で絵美たち女生徒のブレザー型制服は、上着ボタンがダブルではなくなっている。



すもうVSダンスの巻

408

(少年チャンピオン 1977年2月21日号)

"Sumo VS dance (meaning : Sumo wrestling versus dance)"

Chokkin gets hurt by running of sumo club. He gets angry and goes to their club room to demand a doctor's fee. He doesn't know why, but he is given a big welcome ...

 校庭を歩いていたチョッキンと絵美は、突然ランニングしてきた相撲部の連中に蹴散らされる。踏んづけられてしまったらしいチョッキンは怒り、
「治療費出せー!」
と部室へねじ込みに行く。が、彼はなぜか大歓迎(?)を受けて……。



パパは大金持ちの巻

409

(少年チャンピオン 1977年2月28日号)

"Papa wa ohganemochi (meaning : My dad is a very rich person)"

There is a girl transfer student in Chokkin's class. She introduces herself to students in an arrogant manner, as her father is a president of a big company, and her grandfather is a major politician. But Chokkin follows about her and flatters ...

 運転手つきの高級車で、1人の少女が登校してくる。
「こんど転校してきた 東(あづま)つぼみちゃんよ 仲良くしてね」
と先生は教室で皆に紹介する。しかし、
「あたしのパパは大会社の社長なの おじいちゃんは政界の黒幕で」
と、初日から高慢な態度を見せる、つぼみ。チョッキンは彼女につきまとってゴマをすり、
「やらしいわね」
と絵美から蔑(さげす)まれるが……。

*冒頭でチョッキンは、どうも松鶴家千とせ(しょかくや ちとせ)の漫談を真似ているようだ。
 台詞によれば彼はこの時点で2千万円を貯めこんでいる。



どケチ合戦の巻

410

(少年チャンピオン 1977年3月7日号)

"Dokechi gassen (meaning : The stingy battle)"

Chokkin's parents are confused when they receive a letter from grandmother who lives in France. She seems to come and see them, but she is feared because of her extraordinary stinginess ...

 チョッキンたちの住む掘っ立て小屋へ伝書ガラスが飛んで来た。手紙はフランスにいるおばあさんからで、遊びに来るらしい。チョッキンの両親は大慌て、
「なんせばあさんのケチぶりときたら 恐怖の的だからね」
と父は言う。
「うち以上のケチってあるんかなー」
とチョッキンは半信半疑。そして、おばあさんは歩いてやって来た……。

*チョッキンの親戚である少女・ミレーヌと、絵美のいとこである五郎が登場。チョッキンの一族の拝金主義は今回、身内の非行問題(?)によって反駁(はんばく)される破目になる。



お金貸しますの巻

411

(少年チャンピオン 1977年3月14日号)

"Okane kashimasu (meaning : I lend money)"

Chokkin goes to school with many wads of money. He says : "I've withdrawn this as the rate is low." His classmates envy him, so he says with a smile : "I'll lend money if you wish."

 風呂敷に何やら包んだ大きな荷物を持って、チョッキンが登校する。なんと中味は1万円札の束の山だった。
「銀行の利子もたいしたことないし もっと有効に使おうと思っておろしてきたの」
だと言う。羨ましがる級友に、
「なんだったら貸すよ」
とチョッキンは笑顔で答えるのだが。

*台詞によればチョッキンと絵美は少なくとも5年前から付き合いがあるようで、してみると小学校かそれ以前からの幼馴染ということになる?



スキヤキの犠牲者は!?の巻

412

(少年チャンピオン 1977年3月21日号)

"Sukiyaki no giseisha wa !? (meaning : Who is a victim of sukiyaki !?)"

* Sukiyaki is a kind of Japanese-style dish.

Chokkin goes to buy a beef. But then a starveling stray dog passes by ...

 チョッキンが帰宅すると、スキヤキを作っていた最中……だったようなのだけれど、鍋に入れる肉は無い。親子3人で大騒ぎしたあげく、父が肉代を出すことになった。
「肉入りスキヤキうまれて初めて食えるぞー」
と大喜びのチョッキンは肉屋へ行く。しかしその時、飢えた野良犬が通りかかって……。

*野生の猛獣みたいに生物を食ってしまっている(どケチ合戦の巻)チョッキンだが、野良犬には同情心がわいたようだ。さんざんな目にあうが情もうつって、それだけにちょっぴり哀しい結末となる。ラストシーンは、悲しみを打ち消して諦めようとする、チョッキンなりの強がりの現われだろうか。
 正統的少年マンガといった雰囲気の、ペーソスある一品。

(単行本『チョッキン』第1巻は、ここで終わっている。)



ムダづかいはダメよ!の巻

501

(少年チャンピオン 1977年4月4日号)

"Mudazukai wa dame-yo ! (meaning : Don't waste money !)"

Chokkin calls to Emi to stop.
"How about a coffee with me ?"
They go together, but Chokkin goes to a bank and demands a bank clerk woman 2 cups of coffee ...

 下校するところだろうか、チョッキンが絵美を呼び止める。
「そこでコーヒーでもいっしょにどう?」
 絵美はひどく驚くが、ついてゆくとなぜかチョッキンは銀行へ向かう。そして応接室へずかずか入って、女子行員にコーヒーを要求するのだったが。

*これより単行本の第2巻。
 貯金通帳に「金田チョッキン」とあり、主人公のフルネーム(だろう)が今回初めて明らかになっている。その残高は23,689,280円のようだからスゴイ。



スパルタ教育の巻

502

(少年チャンピオン 1977年4月11日号)

"Sparta kyouiku (meaning : Harshly-disciplined education)"

Today is an open school day. So Chokkin's father comes to the school, too. Students are proud of their parent, but there is no good point in Chokkin's father ...

 今日は父兄参観日。教室には絵美の父をはじめとし、チョッキンの父も来ている。生徒も親もやたらはりきっているのだが、チョッキンの父は授業に目もくれず内職をしているありさま。生徒達は互いに自分の親を自慢するが、チョッキンの父親にはおよそいいところが何も見られず……。



恐怖の雑食人間の巻

503

(少年チャンピオン 1977年4月18日号)

"Kyohfu no zasshoku-ningen (meaning : The fearful omnivorous man)"

Spring has come. All kinds of vegetation put forth buds. Chokkin eat them, besides he starts to eat flowers, too. Emi tries to stop him, then he suddenly has a pain ...

 すっかり春らしくなり、色々な草も芽を出すようになってきた。が、チョッキンは季節を楽しむ感覚は無いのか、野草を次々と食ってしまい、
「食べ物にことかかないから春って好き」
という。とうとう花壇の花までを食おうとし始めたので、絵美はやめさせようとする。と、突然チョッキンは苦しみだして……。

*ワケありで絵美の下着がちょっとだけおがめる回。



黄金の山みつけた!の巻

504

(少年チャンピオン 1977年4月25日号)

"Ohgon no yama mitsuketa ! (meaning : I found a heap of gold !)"

Emi loses her coin on the road. Chokkin sniffs about likes a dog, finds the coin at last. But this faculty causes a riot ...

 道を歩いていた絵美は100円を落としてしまった。どこへいったのかと探していたら、そこにチョッキンが通りかかる。彼は犬のようにかぎまわり、ついに100円玉を発見。しかしこの特殊能力(?)は、ちょっと騒動を引き起こすことになった……。

*赤ん坊の頃のチョッキンが登場するが、母親は現在と同じ服を着ている。と言う事はこの人は、十数年以上も同じ服を着続けている!?



一日社長の巻

505

(少年チャンピオン 1977年5月2日号)

"Ichinichi-shachou (meaning : A one-day president)"

Chokkin's father is a president of his company. He gets the phone, and has to go to New York in haste. He designates Chokkin as a one-day president.

 チョッキンに案内され、絵美はチョッキンの父の会社を訪ねる。しかし社長は徹底的なケチで、とても大金持ちには見えない。そこへ電話が入り、チョッキンの父は急きょニューヨークへ行かねばならなくなった。チョッキンは、父から「一日社長」をまかされるのだが。



とべ!チョッキンホマレの巻

506

(少年チャンピオン 1977年5月9日号)

"Tobe ! Chokkin-homare (meaning : Jump ! Chokkin-homare)"

"Frog racing" comes into fashion at Chokkin's school. Students seem to make a little bet. Chokkin is not interested in it, but when he watches Emi makes a small money by it, changes his mind ...

 チョッキンの学校では「競ガエル」が、はやっていた。競馬と同じで、好きなカエルにかけるもので、かけ金は少ないがおもしろいのだという。チョッキンはこれに否定的だったのだけれど、絵美が小銭をもうけたのを見、考えを変える。そして……。



テレビがほしい!の巻

507

(少年チャンピオン 1977年5月16日号)

"Terebi ga hoshii ! (meaning : I want a TV !)"

Chokkin and his father go to a dumping ground. They meet a beautiful girl who manages there as her territory.

 チョッキンの家には電気さえ通っていない(!)が、ゴミ捨て場でひろってきた家電品は置いてある。しかしそのガラクタも壊れてしまい、別の物をとゴミ捨て場へ拾いに行くチョッキンと父。だがそこは「関東拾い組」のショバで、部下を率いる美少女組長「どぶどろマリー」たちが彼らを待っていた。

*ちょっと哀しいラブストーリーになっている。いかにも思春期の読者のためのマンガらしく、微笑ましい回。



預金がパ~~!の巻

508

(少年チャンピオン 1977年5月23日号)

"Yokin ga pah ! (meaning : Deposit is brought to nothing !)"

Chokkin tries to buy a ticket of a train. But a station staff says he must pay not in cash, but by barter.

 遅刻しそうになったチョッキンは、
「もったいないけど ひさしぶりに電車に乗ってみるか」
と決断。しかし、お金を入れたのに券売機からキップが出てこない。駅員の話では「お金」が使えず、何かしらの「現物」で支払わねばならないみたいで……。

*ちょっと筒井康隆の短篇みたいな回?



身だしなみをととのえよう!の巻

509

(少年チャンピオン 1977年5月30日号)

"Midashinami wo totonoe-yoh ! (meaning : Tidy ourself up !)"

All students stay away from Chokkin so he is insanitary because of his stinginess.

 チョッキンは教室でフケをとばして絵美に嫌がられる。
「ケチもけっこうだけど そばにいる人が迷惑だから 少しはせいけつにしてよ」
と頼まれる。が、その汚れぶりは並大抵のレベルではなかった。とうとう皆から敬遠されてしまい、さすがのチョッキンも反省するのだったが。

*「サイコロ コロスケ」とあるのは、"益子かつみ"が『幼年ブック』に昭和30年ころ連載していた時代劇マンガ・『さいころコロ助』のことと思われる。 この時点でチョッキンは「二千五百万とんで七百円」の貯金があるようだ。



みんなそろってハイキングの巻

510

(少年チャンピオン 1977年6月6日号)

"Minna sorotte haiking (meaning : Let's go hiking)"

Emi goes hiking with her parents. Chokkin's family go hiking, too. But a landowner of their destination is an offensive miser ...

 3人家族でハイキングへ行くという絵美。金がかかるのでチョッキンは誘われても行かないが、見回せばそこかしこに家族連れの姿が。結局チョッキンの一家は絵美たちの後を追って山へ。しかしそこの地主は、がめつい嫌味な男で……。

*絵美の父(だろう)は、かつてチョビヒゲを生やしていたのだが(「スパルタ教育の巻」など)、今回はヒゲをそった様子で少し若返って見える。



ひと山当てよう!の巻

511

(少年チャンピオン 1977年6月13日号)

"Hito-yama ateyoh ! (meaning : Let strike a lode !)"

Chokkin is poor as he bought the mountain. He recruits a member of an expeditionary party for a treasure trove.

 山を買ったので貯金はゼロ、そのうえ父に一億三千万円も借りたチョッキンは追い詰められている。絵美が、
「石油でも出りゃねー」
とつぶやくと、チョッキンは決意、山に何か資源が埋まっているかもと探検隊を募集する。



なにがなんでも貯金じゃ~~の巻

512

(少年チャンピオン 1977年6月20日号)

"Nani ga nan demo chokin jyah (meaning : I must save money no matter what)"

Chokkin cuts down on food expenses, faints away at school. He buys a chicken bravely ...

 極度のケチで食費も切り詰め、それがたたってとうとう学校で気絶してしまうチョッキン。
「多少栄養つけないとアルバイトもできん」
と一念発起した彼は、ニワトリを買う。はたして……?



絵美ちゃんの誕生パーティーの巻

513

(少年チャンピオン 1977年6月27日号)

"Emi-chan no tanjyoh-party (meaning : Emi's birthday party)"

Chokkin accepts an invitation of Emi's birthday party. But he doesn't want to spend for a present ...

 チョッキンは絵美の誕生パーティーに誘われる。しかしプレゼントを買う予算が惜しい。ともあれ出席を決意したのだったが、会場に着いてみれば、そこにいたのは……。

*「長谷川絵美」というフルネームがこの回で明らかになっている。



雨やどりさせて!の巻

514

(少年チャンピオン 1977年7月4日号)

"Ama-yadori sasete ! (meaning : Please let me take shelter from the rain !)"

Emi takes shelter from the rain at Chokkin's house. But there is a dreadful leak in the roof ...

 買い物の途中だったのだろうか、絵美は雨に降られて、チョッキンの家で雨宿りさせてもらうことにした。が、チョッキンの家は雨漏りが凄まじい。絵美は逃げ出すが、チョッキンの一家はたくましく耐えている。しかし雨はいっこうに止まず……。

*絵美の父は再びチョビヒゲをはやしている。「マタンゴ」というのは東宝の怪奇特撮映画(1963年)タイトル。

(単行本『チョッキン』第2巻は、ここで終わっている。)



どけち大成功!?の巻

601

(少年チャンピオン 1977年7月11日号)

"Dokechi daiseikoh !? (meaning : A drastic stinginess succeeds !?)"

Chokkin goes shopping at a department store with Emi. To tell the truth, she asked him help her to choice, but ...

「デパートで服を買うからみたててほしいの」
と絵美に頼まれ、チョッキンは彼女につきあって買い物に。しかしケチなチョッキンはあれやこれやと文句を言い……。

*これより単行本の第3巻。そのカバーには著者による以下のような言葉がある。
「マージャンもしょうぎも、さっぱり勝てないので、やめてしまった。
 ギターもあきたし、ひまになってもすることがない。
 しようがないので、ノートに「ポルノ版チョッキン」とか、「成人向きちびママちゃん」とかかきながら、一人でよろこんでいるのです。われながら異常性格だなー。」
 類似の発言は『やけくそ天使』最終回の中にも見られるのだが、はたして冗談か、それとも未公開原稿は実在するのだろうか……?



金魚屋やぶれたり!!の巻

602

(少年チャンピオン 1977年7月18日号)

"Kingyo-ya yaburetari !! (meaning : A goldfish seller is defeated !!)"

Chokkin goes out for a walk, and sees a goldfish seller. It triggers him off going into business.

 マンションの大家なのに相変わらずドケチなチョッキンの両親。
「気持ちがしずんでいく一方だから散歩してこよ」
と外出したチョッキンは、金魚すくいの露店を見つける。それがきっかけとなり、彼は商売を始めるのだったが。

*『月光仮面』(?)が一瞬、登場している。



諸般の事情で…の巻

603

(少年チャンピオン 1977年7月25日号)

"Shohan no jijyoh de ... (meaning : All things considered ...)"

Chokkin is elected an accountant of a student council. He is disappointed because he has to do it without pay.

 チョッキンは生徒会の会計に選ばれた。しかし、ひとのカネをあずかるだけでタダ働きと知るや落胆する。絵美に叱られ、とにかく使命を果たそうとするのだったが。

*なぜか北海道弁が出てくる。
「はんかくさい(馬鹿)」
「ジョッピンかって(鍵をかけて)」
といった意味であるらしい。なお「はんかくさい」という言葉は、『吾妻ひでお大全集』にある北海太郎の小論文『吾妻ひでおにおける北海道語の研究ーーあるいは北海道共和国のための方法論序説』(p.268)によると、「北海道の男性の多くは、女性がこの語を使うと色っぽいと感じる」のだという。
 この頃にかの喫茶店「カトレア」のコーヒーが値上がりしたのかも知れないと思わしめる台詞がある。



家賃をよこせ!!の巻

604

(少年チャンピオン 1977年8月1日号)

"Yachin wo yokose !! (meaning : Pay a house rent !!)"

Chokkin's family make the rounds of their tenants to collect house rents. After that, they begin to get rid of rats by request ...

 チョッキンの一家は、武装したうえで店子(たなこ=借家人)の所へ入り込み、家賃を集めて回る。どうにか順調に集金はできていたのだけれど、ネズミが発生しているという苦情も明らかとなった。チョッキンたちはネズミ駆除にとりかかるも……。

*「頭のかいてん よくなったかな?」というのは、林寛子による清涼飲料のCMで使われたフレーズだったように記憶するも、正確なところは不明。



趣味で大もうけ!?の巻

605

(少年チャンピオン 1977年8月8日号)

"Shumi de oh-mouke !? (meaning : Make a great profit by a hobby !?)"

Classmates have a something interest everyone. Chokkin insists on that saving is the very best hobby. But he thinks it over when Emi refutes him.

 級友たちはそれぞれに、さまざまな趣味を持っている。チョッキンは”アリとキリギリス”の例えを述べ、貯金こそがこの世で最高の趣味だとせせら笑う。が、
「技術を持ってることは強みよ」
と絵美に言われ、
「ぼくも何かやっとくべきかな~」
と考え始めるのだった。

*プラモが趣味だと言っている男子学生は、沖由佳雄さんの似顔絵キャラクターになっている。



家族そろって!!の巻

606

(少年チャンピオン 1977年8月15日号)

"Kazoku sorotte !! (meaning : With the whole family !!)"

Chokkin and his parents go out. Chokkin is in high spirits, but his parents are thoroughgoing misers ...

 チョッキンの両親は服を新調(?)し、親子3人での外出となった。
「映画みて 遊園地でジェットコースターに乗って ごはん食べて」
と浮かれるチョッキン。しかし両親のドケチぶりは徹底的で……。

*結末になってから、実は伏線があったと気付かされるのが絶妙。この当時はまだ、肉は個人商店の肉屋で買うのが一般的で、量り売りのものを経木(きょうぎ)に包んでくれるというやり方をしていたようだ。スーパーマーケットにおいて、スチロール製のトレイに最初から入っている形式で肉が売られるようになるのは、もう少し後のことだったかと思われるが、正確なところはよくわからない。



プールで養殖!?の巻

607

(少年チャンピオン 1977年8月22日号)

"Pool de yohshoku !? (meaning : Raise at a swimming pool !?)"

Chokkin is scolded so he has raised living things at a swimming pool. Then he becomes aware of that there is a child of kappa ...

* "Kappa" is a Japanese imaginary creature.

 学校で、今年最初の水泳が行なわれる。しかしチョッキンは、こともあろうにプールで生物の養殖をやっていた。全員から叱られてやむなくあきらめたが、そのプールにはなぜかカッパの子供が混じっていて……。

*これは一種のSFマンガというべきか!? ちょっぴり「ショタ」の要素もあるかも知れません?



地獄の沙汰も金しだいの巻

608

(少年チャンピオン 1977年8月29日号)

"Jigoku no sata mo kane shidai (meaning : Money makes the world go round)"

Chokkin tries to make salt from sweat. He plays volleyball skillful by chance when he is working ...

 炎天下、汗だくでタライの中に立っているチョッキン。そこに絵美たちのとばしたバレーボールが命中、タライはひっくり返る。なんでも汗をためて、塩をとろうとしていたらしい。チョッキンは絵美たち女生徒の体育着をしぼって汗を集めるが、ふとした偶然で上手なレシーブをやってのける。それが男子バレー部の目にとまって……。

*『ふたりと5人』の主人公おさむと、チョッキンの性格的な違いが顕著に出ている回と言えようか?



海ってこわい!!の巻

609

(少年チャンピオン 1977年9月5日号)

"Umi-tte kowai !! (meaning : The sea is dreadful !!)"

Chokkin walks 3 days and goes to a beach resort. He devotes himself to make money at there, but ...

 三日間歩いて、海水浴場に着いたチョッキン。しかしここでも相変わらず、儲ける事ばかりを考えている。絵美の背中にサンオイル(?)を塗っては小銭をもらい、泳いだりは全くせずカネ稼ぎに邁進する。どうにか順調かと思っていたら……。

*「夏になると海のマンガばっかり、 オレもかくけど…」
と、冒頭のコマでアーさん(作者自画像)がつぶやいている。
1977年4月25日に、日本の船「瑞洋丸」が正体不明の生物の腐乱死体を引き上げたことが話題となっており、それにひっかけたのではと思えるギャグがある。



美少女火炎地獄の巻

610

(少年チャンピオン 1977年9月12日号)

"Bishojyo kaen jigoku (meaning : The beautiful girl blaze inferno)"

Chokkin and Emi go to an amusement park. They enter a haunted house, but Chokkin tries to make money at there ...

 遊園地の花火大会へ来ているチョッキンと絵美。夜店で買い食いをした後、おばけやしきへ入る2人。が、チョッキンはその中でさえ、まだ何かをもうけようとして……。

*(注:以下は単なる思い出です)
 たしかこの回だったと思うのですけれど、いくつも出てくる墓石に名前を書いたのはアシスタントの沖由佳雄さんだったようです。で、この回がチャンピオンに載ったその週、僕に会って一言、
「しまった、○○家(注:僕の名前です)之墓、って書くのを忘れたなァ」
とニヤリニヤリ。ともあれ僕は、沖さんに墓をたてられてしまわずに済んだのでした……。



標本はいかが!?の巻

611

(少年チャンピオン 1977年9月19日号)

"Hyouhon wa ikaga !? (meaning : Would you like a specimen ?)"

Chokkin collects insects as hard as he can, makes specimens and sells them for moneymaking. But unexpected things happen ...

 絵美は蝶の採集をしようとするも、チョッキンに先を越される。彼は昆虫を集めまくって標本を作り、それを売って儲けているのだった。売れ残ったものは食ってしまえばいい、という算段だったのだが、予想しなかった事には……。

*フキナガシ、タバコおばけ、ポルノ虫、はては『やけくそ天使』の主人公・阿素湖素子までが1コマ出演している。



お金のため方教えますの巻

612

(少年チャンピオン 1977年9月26日号)

"Okane no tame-kata oshie masu (meaning : I'll teach you how to save money)"

Chokkin can calculate mentally very well. So he starts a cram school and teaches puplis ...

 最近そろばん塾へいっているという絵美。計算に自信を持つチョッキンは絵美にくっついて見学に行くが、なるほどチョッキンの暗算能力はかなりのものなのだった。結局「チョッキン ケチケチ塾」なるものを始めて、生徒たちを教えるのだけれど……。

*(注:以下は単なる思い出です)
 チョッキンが一瞬で暗算をこなす場面、初出時では問題は、加減乗除が混在する数式だったみたいです。しかしその答え(計算の順序)が間違っているのを読者が発見、無気力プロ発行のコピー新聞『アリス』紙上で記事になったことがあります。チャンピオン編集部では事前に検算していたとかで、ということは担当さんも計算順序を間違えてしまったらしい? 単行本では問題は、ケタの多い掛け算に変更されています。



芸術=金!?の巻

613

(少年チャンピオン 1977年10月3日号)

"Geijyutsu = kane !? (meaning : Art = money !?)"

Students sketch outdoors. But Chokkin thinks it is wasteful to use a paper. A teacher lends him paint reluctantly.

 美術の授業だろう、チョッキンたちは公園で、全員が写生にとりかかる。しかしチョッキンは地面に木の枝で何やら描いて、はい終り。紙をよごすのはムダだと言うのだった。先生はしかたなく画材を貸してやる。するとチョッキンは、意外に表現力があったようで……。



カントクやらせて!!の巻

614

(少年チャンピオン 1977年10月10日号)

"Kantoku yarasete !! (meaning : Please let me to be a manager !!)"

Chokkin pushes himself to a girls' softball team. He is emploied as their manager, but ...

 生徒たちはいろいろな球技に熱中しているが、チョッキンは、
「金と時間と体力のムダづかい」
と見下げている。しかし、
「どう ぼくをカントクにやとわない 根性のソフトボールを諸君に教えようじゃないか!」
と言い出した。
「男のコが一人いてもいいわね」
という意見で、チョッキンは絵美たち女子ソフトボール部のカントクとなる。しかしその練習は、何だか変で……。

(単行本『チョッキン』第3巻は、ここで終わっている。)



お金持ちに愛を!?の巻

701

(少年チャンピオン 1977年11月21日号)

"Okanemochi ni ai wo !? (meaning : Love for a rich person !?)"

Chokkin seems unwilling to pay for a fund-raising campaign. He runs about trying to escape from it ...

 赤い羽根共同募金の季節となり、駅前では制服姿の女学生達が協力を呼びかけている。チョッキンはなんとしてもカネを出すまいとするが、学校に着いてみても事情は同じ。しかしチョッキンの一家はとことんたくましかった……。

*これより単行本の第4巻。このころの赤い羽根は、細い真鍮の針が付いており、それで服に刺すという構造になっていた。この時点でチョッキンの貯蓄残高は2896万5032円となっている。



愛ははげしく!!の巻

702

(少年チャンピオン 1977年11月28日号)

"Ai wa hageshiku !! (meaning : Love extremely !!)"

A car splashes water to Chokkin. He gets angry and tries to demand his cleaning bill. Then a very beautiful girl comes out from the car. Chokkin decides to marry her someday.

 登校する途中、チョッキンは自動車に路上の水をハネかけられる。怒ってクリーニング代を払わせてやろうとすると、車から出てきた少女・ゆうこは、すごい美人だった。別れた後チョッキンは一大決心をする。
「やるぞ! どんなことをしても ぼくのものに! あのコと結婚するぞ!」

*台詞にある「デゴイチ」とは、D51(蒸気機関車)のことと思われる。ちょっとワケありでチョッキンは少女マンガを執筆しているようだ。



ネコギャング団出現の巻

703

(少年チャンピオン 1977年12月12日号)

"Neko-gang-dan shutsugen (meaning : The cat gang appears)"

Chokkin struggles a stray cat for a fish. He wins a victory with difficulty, becomes a boss of cats ...

 1匹のサンマを家族3人で分ける、金田家の食事。あまつさえそれを、チョッキンは野良猫と奪い合わねばならなくなった。それでもどうにか勝利した彼は、猫たちの親分になり……。

*「趣味のページ」と題して、いたいけな絵美が拷問され悶え苦しむ(?)姿が描かれている、ちょっとエロティックな(?)回。映画が元ネタになっているパロディらしいのだけれど、その詳細は分からない。『ドーベルマン・ギャング』という作品が存在するが、それであろうか?



ゆーれいVSチョッキンの巻

704

(少年チャンピオン 1977年12月19日号)

"Yuhrei VS Chokkin (meaning : Ghost vs Chokkin)"

There is a ghost story in the school. It says that an unfamiliar girl sits at the science room sometimes ...

 そうじ当番ですっかり遅くなってしまった絵美は、用具を片付けるため独りで理科室へ。するとそこにチョッキンも来ていた。実はこの部屋にまつわる怪談があって、
「時々 みたことない女の子がボーッとすわってる」
ということなのだが……?

*絵美がボロボロの服を着て登場し、ポーズをとっているくだりがある。『不思議の国のアリス』の作者、ルイス=キャロルが写真にも興味を持ち、アリスのモデルとなった少女に乞食娘の扮装をさせて撮影した作品が現存するようだけれど、そのへんにひっかけているのだろうか。



犯人はだれだ!!の巻

705

(少年チャンピオン 1978年1月1日号)

"Hannin wa dareda !! (meaning : Who is a culprit !!)"

Chokkin's grandmother's birthday party is around the corner. Chokkin asks Emi to choose a present, goes shopping at a department store with her.

 きたる12月1日は、金田一族のおばあ様の誕生日。その120歳を祝うパーティが今年は日本で開かれることになった。しかし何をプレゼントしたらよいものか? チョッキンは絵美に選んでもらおうと考え、一緒にデパートへ出かけるのだった。

*絵美はけっこう買物が好きなようだ。チョッキンの祖母が「金田いちづ」という名前であるらしいことが分かる。本音をずけずけと口にするミレーヌが痛快で、絵美とはまた違った魅力を発揮している。

<初出データについて>
 この次のお話の初出が少年チャンピオン1978年1月2日号なので、
「よ、翌日!?」
と僕はびっくり。そして愚考、
「ひょっとして"1977年12月26日号"の誤記なのでは……?」
倉田わたる氏へおたずねすることにしました。すると、

「これが実は誤記ではありません。最近の号のことはわかりませんが、当時の少年チャンピオンは、年末最後の号を強制的に翌年の1/1号としていました。(これは78年以外でも同様です。)」

というお返事を下さったのでした。
ああ知らなんだ、知らなんだ。連載当時に『チョッキン』を読んでいた皆様、覚えておられましたか、このへん???



人生たのしく!!の巻

706

(少年チャンピオン 1978年1月2日号)

"Jinsei tanoshiku !! (meaning : Take pleasure in life !!)"

Mylene, Chokkin's relative girl, wastes her money. She is admitted to Chokkin's school.

 非行(?)に走り、カネを使いまくるミレーヌ。弱り果てたあげく、おばあ様は彼女をチョッキンの一家へあずける事にしてフランスへ帰った。再教育を、と任されはしたものの、ミレーヌの浪費はおさまらない。そしてチョッキンと同じ学校へ編入学した彼女だったが。



教育の大ピンチの巻

707

(少年チャンピオン 1978年1月9日号)

"Kyohiku no dai-pinch (meaning : Schooling pinch)"

Emi, Mylene and Chokkin got the lowest grade in an examination. They must take a supplementary examination, but ...

 期末テストの成績順位表が貼り出されてみると、長谷川絵美・ミレーヌ・チョッキンの3名が最下位だった。絵美はカゼで休み、ミレーヌは日本語がまだ良く読めないのが理由だったが、なにはともあれ3名そろって追試を受けることとなる。しかしチョッキンの態度があまりにも強固であったため、とうとう先生の方が逆に影響されてしまい……。



世にもフシギなサイフの巻

708

(少年チャンピオン 1978年1月23・30日号)

"Yonimo fushigi-na saifu (meaning : An extremely strange wallet)"

Chokkin, Mylene and Emi go to a Shinto shrine in the New Year holidays. But he is stingy blasphemously. They find a shabby old man on thier way home ...

 正月とはなったものの、相変わらず徹底してケチなチョッキンの一家。ミレーヌはチョッキンと外出し、絵美に誘われて一緒にお宮参りへ。日本の風習を面白がるミレーヌだが、ここでもチョッキンはバチあたりなケチにあけくれる。そうこうして3人が帰路につくと、路上でみすぼらしい老人が苦しんでいるのに出くわす。
「わしは神様じゃぞ」
と彼は言うのだったが……。



不思議なスナックの巻

709

(少年チャンピオン 1978年2月6日号)

"Fushigi-na snack (meaning : A strange snack bar)"

Chokkin and Emi go hunting at a mountain. Then he finds a snack bar in his land. Chokkin gets angry as he doesn't remember having ever permitted it.

 チョッキンと絵美は、2人だけで山へ来ていた。おいしいシシナベをごちそうする、という話だったらしいのだが、獲物はいっこうにつかまらない。あきらめて帰ろうとすると、スナックが1軒あるのを見つける。
「ここはぼくの山だぞ 勝手にこんなもの建てやがって」
と怒ったチョッキンは店へ入ってみる……。



あじましでおの内幕の巻

710

(少年チャンピオン 1978年2月20日号)

"Ajima Shideo no uchimaku (meaning : The inside story of Shideo Ajima)"

Chokkin and Emi call at the house of Shideo Ajima the manga artist. They are to work part-time at his house, but ...

 チョッキンと絵美は「マンガ界のジェームス・ディーンとよばれる あじましでおの家」をたずねる。「25年の銀行ローンで買った」らしいそこへはアルバイトのベタぬりをしにきたのだったが、中へ通されてみると想像を絶するほどにいじこく切り詰めた仕事環境。しまいに「あじましでお」は精神錯乱して(?)ワンダーウーマンの物真似を始めてしまい……。

*"ジェームス・ディーン"(James Byron Dean)は1955年に24歳で他界した、アメリカの伝説的映画俳優。ワンダーウーマン(Wonder Woman)は同名のアメリカ漫画、およびそれを原作とするTV特撮ドラマで、このころ日本でも放映されていた番組。怪獣大戦争は、1965年に封切られたゴジラ映画のシリーズのうちの一作品名(Invasion of Astro-Monster)を指しているものと思われる。



チョッキン島沈没の巻

711

(少年チャンピオン 1978年3月6日号)

"Chokkin-jima chinbotsu (meaning : Chokkin's island sinks)"

A passenger plane ditches, one passenger manages to arrive an island. Chokkin is there and says the island is his land.

 旅客機(だろう)が海面へ不時着。やっとのことで生き延びた乗客が1名、ふと気付くと小さな島があった。ところが、
「いらっしゃいませ~~」
と、チョッキンが出迎える。話をきいてみると、
「この島 ぼくが買ったんだもの」
という事らしいけれど?

*「みじめ みじめ~」というのは大流行した『しらけ鳥音頭』(1978)の一節か。いやに細かく描き込まれた軍艦が登場しているが、どうやらこれこそは旧日本海軍の駆逐艦「秋月(あきづき)」のようで、沖由佳雄さんがこよなく愛していた(そして今だ巨大模型が未完成であるらしい?)その船舶の雄姿なのであります。



しあわせのバレンタインデーの巻

712

(少年チャンピオン 1978年3月13日号)

"Shiawase no Valentine's Day (meaning : A happy St. Valentine's Day)"

Chokkin is given chocolates from girl students. There is a girl who seems like him earnestly, but he shows an interest only in chocolate. Emi has indignation and scolds him.

 チョコを用意し教室ではしゃぐ女生徒たち。なんだかんだでチョッキンもいくつかチョコをもらえたが、その中にどうやら本気らしい少女が1人いた。一年の早乙女綾というその娘はひどい恥ずかしがり屋だったが、当のチョッキンはもらったチョコレートそのものにしか興味が無い様子。絵美は義憤にかられてそれをたしなめるのだが。

*早乙女綾はもしかすると、いがらしゆみこのキャラクターのパロディだろうか?



えんぴつ買って!!の巻

713

(少年チャンピオン 1978年3月20日号)

"Enpitsu katte !! (meaning : Please buy a pencil !!)"

A man comes Chokkin's house for coercive selling. But they don't pay him even a cent stubbornly. After he runs away, Chokkin tries to copy the peddler ...

 チョッキンの家へおし売りの男がやってきた。しかし脅されようがどうされようが、カネを出さぬことにかけて金田家の人々に勝てる者はいない。けっきょく迫力負けして男が退散すると、
「ぼくもひとつ おし売りやってみっかな」
とチョッキンは考えて……。

*「おし売り」というのは悪質な訪問販売の元祖のような商売で、このころはまだ実在したかも知れない。今回はこうした、訪問販売にまつわるお話となっている。



未来はバラ色!?の巻

714

(少年チャンピオン 1978年4月3日号)

"Mirai wa bara-iro !? (meaning : The future is roseate !?)"

Chokkin goes deposit at a bank. He feels relieved as he has vast money, and daydreams his future.

 銀行へ入金しにゆくチョッキン。
「もうすぐ三千万突破だ 中学生にしてこの財産 ぼくの未来は約束されたようなもんだな」
と深く安堵して、自分の未来を夢想する。はたして、大金持ちとなったチョッキンの未来はいかに?

*これが最終回。当シリーズの「結論」的な物語になっている。詳しくは明かせないけれど、ほっとさせられるハッピーエンド。全話が再販された時には、安心して読めることを保証できます……。
(単行本『チョッキン』第4巻は、ここで終わっている。)



男はつらいよ!の巻

Cm02

(少年チャンピオン 1977年3月28日号)

"Otoko wa tsurai yo ! (meaning : Male life is trying !)"

Chokkin is made to have a meeting with a view to marriage. It seems that there is calculation of his parents. But the girl of the other party resists it ...

 みんなが下校したあと、チョッキンは「今日も1人で」必死に掃除をしている。絵美は感心するが、実は「当番のかわり一人につき10円もらってるし かたづけてるうちに」あれこれ拾い物もできて儲かる……というのが真相なのだった。そこへチョッキンの両親が、正装(?)して現れる。「お前をむかえにきたのさ」「今日はチョッキンのお見合いがあるんだよ」とのこと。「まだ中学生なのにお見合いなんて」と絵美はびっくりするが、事情をきいてみれば、どうやら親の都合による、一種の政略結婚であるらしかった。当のチョッキンは「ビフテキ食べられれば文句なし」と喜んで出かける。しかし、待合せの場所である大高級レストランへ行ってみると、相手の娘は美少女だがこの結婚に乗り気ではなく「子供をなんだと思ってるのよ!」と親に反発。はたしてこのお見合いはどうなる……?

*以下、単行本には収録されていない回について、紹介させて戴こうと思う。
 これは物語が二転三転して展開に起伏とひねりがあり、密度の高い回になっているのではないかと思う。お見合い相手のお嬢様は「股下(またした)宏美」という名前なのだが、ひょっとすると歌手の岩崎宏美から名をもらい、姓は……。



ホンモノの感触!の巻

Cm01

(少年チャンピオン 1977年10月17日号)

"Honmono no kanshoku ! (meaning : Touch of a real thing !)"

Chokkin finds a grape at his home and eats it, but in fact, it is a lifelike fake. Emi gives him a real grape, but ...

 作者が、いきなりチョッキンに大きな木槌で頭を殴られる。チャンピオン40号での場面にあった計算の答えが間違っていたのだった。何はともあれ、チョッキンが帰宅してみたら、父はぶどうを食べようとしているではないか! チョッキンがとびついて即座にこれを食うが、なんとそれは「かざり用のろうそくぶどう」だった。「ながめて楽しんでた」のだと教えられるも、「ぼくはホンモノの感触がほしい!」とうったえるチョッキン。絵美からホンモノをもらっても、その食べ方はひどくケチくさい。呆れた絵美がふとひらめいて、チョッキンは「山をひとつもって」いるのだから、「そこに行けばぶどうぐらいなってるかも」と助言。「その手を忘れていたー」とチョッキンは自分の山へ一目散に走る、しかし……。

*レストランなどの店頭に飾られる本物そっくりの食品サンプルは当時、まだ合成樹脂ではなくロウ細工が一般的だったかも知れない。ここで「ろうそくぶどう」と言われているのはそれが理由か。



いざアメリカへの巻

Cm03

(少年チャンピオン 1977年10月31日号)

"Iza America e (meaning : Now I go America)"

Chokkin boards an airplane, goes to New York instead of his father. He behaves stingily in the airplane, and be scolded by a girl who takes his next seat ...

 「取材旅行からただいま帰りました」という作者が、猫のクキ(らしい)と一緒に登場。いっぽう、チョッキンは母と共に空港へ来ていた。「オヤジのかわりに契約とってくる」ため、ニューヨークへ行くようだ。「お父さんのジさえ悪くなかったら」と母は心配するが、カネについては異常に用心深いチョッキン。飛行機に搭乗してからも、機内サービスを利用してドケチのしほうだい。たまたま彼の隣に座った少女はついに見かねて、「あなた いいかげんにしなさいよ!! 外国人もたくさん乗ってんのに 日本のハジをさらさないで!」と一言。そんなさなか、旅客機は油圧系統の故障によりエンジン3基が出力低下、海に着水することになった! ……一夜明け、少女が目を覚ましたら……。

*いかにも思春期の少年読者むけらしい(?)ロマンチックな場面もある。最後のところで、オチに意外な伏線があったことに気付かされるのは見事。



運動会で賞品ガッポリ!? の巻

771107

(少年チャンピオン 1977年11月7日号)

"Undohkai de shouhin gappori !? (meaning : Get a mountain of prizes on a field day !?)"

Chokkin lacks the will to win any event of a field day, but be unrivaled when he can get a prize. His classmates think to put him to good use by treat ...

 大運動会が行なわれ、生徒たち全員は熱狂。そんななか、チョッキンはひとり、さめている。「こんなの体力のムダづかいなのに」とこぼして全然やる気の無い彼だったが、賞品のでる競技だと、いともたやすく一等に。絵美たちは現在最下位にあるクラスのために決意して、もしチョッキンが一位をもたらしてくれたら「クラスの人全員がチョッキンにおごる」ことにした。話はまとまり、クラス対抗騎馬戦が始まるのだが……?

*現実では不可能(たぶん)な、マンガならではのとんでもない戦術が用いられるクライマックスは楽しい。オチで、このころ話題になった或る健康器具が登場しているようだ。



ライバル出現の巻

771114

(少年チャンピオン 1977年11月14日号)

"Raibaru shutsugen (meaning : A rival appears)"

A good-looking boy comes Chokkin's school as a transfer student. He is popular with girls very much, but he is a intense miser. Emi makes friends with him, so the tide is going against Chokkin ...

 優等生の絵美が珍しくも朝寝坊。大慌てで家を飛び出した彼女は、路上で学生服姿の美少年とぶつかる。それでもどうにか遅刻せずに済んだが、紹介された転校生を見てびっくり、つい先ほど出会った彼ではないか!? 二枚目の転校生、矢沢は、さっそく女生徒たちに受けまくるも、意外や、大変などケチであることがわかる。このライバル出現にチョッキンは反撃を試みるのだが、絵美の心は矢沢へと傾くばかりで、「やってることは同じでもチョッキンはスマートさがないのよ」と言われてしまう始末。「なんとでも言えー」とヤケクソになったチョッキンを差し置いて、絵美は矢沢と親しさを増してゆき……。

*意外な展開、意外なタネ明かし、そして意外なオチになる。まるで勝ち目の無いチョッキンだが流石に主人公、結末の手前ではちょっと男気をみせているのがかっこいい。



恐怖の訪問者の巻

771205

(少年チャンピオン 1977年12月5日号)

"Kyohfu no hohmon-sha (meaning : A fearful visitor)"

A teacher in charge, visits Chokkin's house, meets his parents. But their sense of values can't mesh teacher's sense. Chokkin visits students' houses instead of the teacher ...

 担任の先生がチョッキンの家を訪れる。今日は家庭訪問なのだったが、なにせ相手はチョッキンの両親、およそ普通には話が通じない。父は「学校の成績など どーでもよろしい!」と言い、母が「問題はいかに金をためるかです!」と言う。そのうえ先生が金持ちではないことをからかうものだから、とうとう女教師は泣き出してしまった。「先生急病のため かわりにぼくが」と、チョッキンは「先生代理」で家庭訪問を始め、級友たちの家を次々とまわる。そしてついに絵美の家へ行くのだったが。

*絵美の成績がクラスでトップだと、台詞から分かる。絶体絶命を一発逆転するオチは、実に鮮やか。



バイトはつらい!の巻

780116

(少年チャンピオン 1978年1月16日号)

"Baito wa tsurai ! (meaning : A part-time job is hard !)"

Emi works part-time at a department store. But Chokkin follows about her, disturbs her work as a result ...

 デパートのケーキ売り場で、絵美が働いている。と、何故かゴミ箱の中にチョッキンが潜んでいた。「ここで口あけてると けっこーおいしい物が食べられる」のだという。絵美は「冬休みの間 このデパートでアルバイト お金ためてレコードや本買うんだもん」とのことだったが、「試食」というとチョッキンがついてきては食ってしまうため仕事にならない。売り場を変わればと考えたが、それでもチョッキンはついてきてしまい、問題を起こすのだった。その損害はおびただしく、ために絵美には危機が迫って……。

*結末手前にベッドシーンがあり、かわいそうな絵美は下着姿にされてしまっている。とはいえ、『ふたりと5人』ほど際どいところまでは進まないのがこのシリーズなのでした。



特効薬みーつけたの巻

780213

(少年チャンピオン 1978年2月13日号)

"Tokkoh-yaku mietsuketa (meaning : I've discovered a specific remedy)"

Emi catches influenza and takes to her bed. Chokkin calls on her, snatches her meal, feeds her the leftovers. Strange to say, Emi is cured all of a sudden ...

 朝。「ミレーヌ 学校行こうぜ」と彼女の部屋へむかったチョッキンは、ドアにある「面会謝絶」の表示に気付く。医者たちまで駆けつけたのに仰天した彼がきいてみればしかし、「カゼひいちゃった」だけらしい。「あたしら富豪はひ弱にできてんのよ」と言うミレーヌにあきれるチョッキン。しかし一人で絵美の家へ行ってみれば、絵美もカゼで寝込んでいるのだった。あくどくも絵美の食事のおかゆを代わりに食べてしまい、その残りカスを絵美へ食わせるチョッキン。と、どうしたことか、絵美のカゼは突然治ってしまった。二人が学校へ行ってみると、これまたカゼに苦しんでいる担任がいて「ほとんどの生徒がインフルエンザにやられたもんだから」臨時休校になった事を教えてくれる。チョッキンは絵美に食わせたおかゆを先生にも無理やり食わせるが、なんと先生までが突然快復してしまう。「チョッキンのツバはインフルエンザの特効薬なのかもしれないわ!」と絵美が気付き、担任からも励まされたチョッキンは、「日本中の人々をインフルエンザから守るため ぼくは戦うぞ!」と決意する。が……?

*順風満帆、と見せておいて、結末に意外な天罰(?)がやってくるのは絶妙。



お茶がこわい!? の巻

780227

(少年チャンピオン 1978年2月27日号)

"Ocha ga kowai !? (meaning : Tea scares me !?)"

Emi, Mylene and Chokkin prepare food in a lesson of home economics. But Chokkin eats up all ingredients before cooking. After that, he devises an evil plot ...

 家庭科の授業で、カレーライスをつくることになった。絵美、ミレーヌそしてチョッキンの3人は一緒にこれに取り組むが、チョッキンは生の材料を料理前にたいらげてしまう。おかげで試食会になっても彼ら3人は、級友たちが食事するのをただ見ているばかり。するとなぜかチョッキンは「えー お食事の消化を良くするために ひとつ小話など……」と一席始め、その結果、全員のカレーライスをかっぱらう事に成功する。しかしクラスのみんなも負けてはおらず、ちゃんと反撃してくるのだった。ところがチョッキンはここから、或る金儲けのアイディアを得て……。

*フキダシの中を”スミ塗り”で隠すなど、ギャグ表現に実験がある。二転三転する構成も密度が高い。


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