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91 (AZICON)

はじめに

 このカテゴリーでは「AZICON1 オープニングアニメーション」(オールスタァ十三大キャラ 吾妻総進撃・1983年度作品)や、「AZICON」に関連する事柄を、扱っています。
 (映画の登場人物とその原作版キャラクターについては、別カテゴリーの記事をご覧下さい。

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・ここで使用している全てのデータは、大西秀明氏(吾妻ひでおFC「シッポがない」事務局長)の御厚意により提供されたものです。

・吾妻ひでおFC「シッポがない」は当ブログと関係が無く、記事に責任はありません。
・「スタヂオラミ」は当ブログと関係が無く、記事に責任はありません。

・吾妻ひでおFC「シッポがない」は、「しっぽがない」と表記されている場合があるようです。前者が正式な名称かも知れないのですが、ここでは映画「吾妻総進撃」に用いられている、「しっぽがない」の表記にならっています。
・「スタヂオラミ」は、「スタジオラミ」、「スタジオRAMI」、「STUDIO RAMI」などの表記がなされている場合があるようです。ここでは「スタジオラミ」と表記させて戴いています。

・もし記事に関し、著作権者からお叱りを受けた場合には、できる限り早急に、削除、修正、加筆などを行い、御指示に服したく存じます。



(映画本編)

 1983年8月19日、夜。不気味に発光しつつ、巨大な何かが大阪湾へやって来た……。

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 (クレジット、そしてタイトル)
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 その翌日。大阪は賑わいを見せている。
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 平和な戒橋。
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 中央区難波だろうか……。
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 「なんばCITY」の喫茶店には、ドンちゃんの姿。
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 が、そこへいきなり……!?
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 グネメカ獣ギガゲンゴーが出現!
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 歌舞伎座は爆発し、
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 人々は逃げ惑い、ただひとりミャアちゃんが冷静にしているばかり。
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 見上げれば、天をつくようなモビルスーツ・ブキミがいる!
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 群衆は怯え、チョッキンも飯田橋もうろたえ、落ち着いてるのは四谷だけ。
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 絵美とななこも巻き込まれる。
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 道頓堀はキング・クヌヤロの引力光線で破壊され、
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 八百屋の前を三蔵が怪しげに通りかかり、
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 のた魚が空を飛び、しかも、
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 通天閣へ突進!
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 ネオン広告の巨人は飛び出し、
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 ブキミの前進を食い止めるものは無い。
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 絵美とななこは走るが、
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 オーラ獣ナハハ・メカは暴れまわって逃げ場が無い。
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 絵美が転んだ! 絶体絶命! ななこは反射的に身を挺して絵美をかばう(この性格描写は印象的)。
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 やりたい放題のキング・クヌヤロに、
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 ポロンは、アポロンからヘルメットを受け取って、
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 ゼウスがスイッチを入れれば、人形が変身!
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 けなげに出撃するポロンは、
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 勇敢にもクヌヤロに立ち向かう。
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 しかし相手は悪賢かった……。
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 地上では美美が、素手で複数の格闘メカを倒し、
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 信乃もりりしく孤軍奮闘。
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 シャン・キャットが逃げる!
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 ブラックちゃんも逃げる!
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 彼女たちを救ったのは……
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 正義の味方、ぱるぷちゃんだった。
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 忍者も戦う!
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 新井素子は困り果てる!
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 ちゃぶ台返し何するものぞ、チョコの拳銃が見事に命中!
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 モコはバズーカで応戦し、
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 クヌヤロに命中、やった!!
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 ……やがて訪れる静寂。ミャアちゃんは冷静にひたすら食す(何もしないでこれだけ目立つ人も珍しい)。
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 終わったのか……?
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 焼け野原に集う美少女たち、そして可愛いメガネの奥さん。
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 安堵とともにこぼれる微笑。
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 が! そこへこだまする、謎の高笑い。
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 激しい揺れと共に地中から……
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 ミナミへ巨大な姿を現す、敵。
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 ついに明らかとなる正体、それは……
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 「超巨大SF」だった!
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 その必殺兵器、SF光線は宇宙に放たれ、世界はムチャクチャなSF地獄に。
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 あまりにも規模が違い過ぎる!
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 ああ、戦う術は無いのか!?
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 が、突然……!!
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 ??? ……何が起こったのだろうか?
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 姿を見せる救世主! それこそは誰あろう……!!!
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 あ~れ~! 一同、三蔵まで混じって、みんな一緒に3頭身で走るよ走る……。
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 君よ仰げ大空を! 大阪の、いや世界の希望を見よ!
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 AZICON1の、はっじまりだぁーい!! 
 ……って、ちょっとちょっと阿素湖さん! よく見たらあなた、下半身がスッポンポンではありませんかっ!?
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(上記のキャプションは、同人誌「AZICON OPアニメ全百科」(制作 スタジオRAMI / 発行日 1983年8月1日)を参考にしています。)



「AZICON1」の同人誌

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 アニメ「吾妻総進撃」が制作された時期に、その資料をまとめた同人誌が発行されていたようだ。「AZICON1 オープニング アニメ 全百科」(裏表紙の表記による)がそれで、奥付は以下のとおり。

  AZICON1 OP アニメ 全百科
  製作 スタジオ RAMI
  発行日 1983年8月1日
  印刷 井上印刷

(上の画像は表紙、下は裏表紙。)
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 アニメ「吾妻総進撃」が吾妻ひでおFC「シッポがない」とアニメサークル「スタジオラミ」の共同制作であったのに対して、この同人誌は後者が単独で刊行し、著作権も「スタジオラミ」のほうに帰属するらしい。とはいえ、この書籍へは「シッポがない」のメンバーも寄稿しており(これは後述いたします)、また、委託販売という形でこれの頒布を実施したという。
 この同人誌はSF大会やコミケットで売られ、定価は200円か300円ぐらいだったとか(大西秀明氏(シッポがない・事務局長)談、資料提供も同氏によるものです)。



(同人誌の内容)

 この書籍はB5版の全20ページで、場面集(p.2-3)、ストーリー紹介(p.4-5)、キャラクター紹介、メカニックの設定画や解説、アニメ制作の裏話、スタッフ名リストなどから成っている。

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 キャラクター紹介(p.6-7)によればこの作品で言う十三大キャラとは、

・太陽夕子
・猫山美亜
・モコ
・ななこ
・長谷川絵美
・欅美美
・ポロン
・新井素子
・信乃
・アポロン
・三蔵
・阿素湖素子
・吾妻ひでお

を、指しているらしい。紹介文で各キャラクターは実在する俳優のように扱われているのだが(例えば"出演作"として太陽夕子が『コミケの若大将』(64)、欅美美には『日本美少女侠伝・空手芸者』(70)などと作品名が挙げられている)、本当に実在する作家、新井素子について、
「企画では入浴中をナメザンにのぞかれるという話もあったが本人の拒否でボツになった」
という一文があり、これがもし冗談でないとすれば、新井素子も事前にこのアニメ映画について知っていたという事になるだろう。

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 ポロンが操縦する変形ロボットはTVアニメ「超時空要塞マクロス」のパロディらしいのだが、これは内部構造の図解に加え、詳細な「開発略史」までが載っている(p.8-9)。
 それによればこのロボットは、1980年4月1日、道頓堀商店主一同が集合したさい「限定地域における民間自己防衛機構」として出発したOIDS(大阪自主防衛機構)が、複数種類開発した兵器の1つで、変形し飛行する時には操縦席が設けられるも積載可能な重量は最大40kgなのだとか(幼いポロンがパイロットを務めているのはこれが理由であるらしい?)。で、なぜOIDSが生まれたかというと、1960年代から大阪は何度も全滅を繰り返した(注:このへんは怪獣映画を"史実"として下地にしてある)ためで、「わてらのお店は、わてらで守る!」ということになったのだという。モデルになっているらしいお店は2008年7月8日に惜しまれつつ閉店してしまったが、はたしてこの映画とロボットを、関係者はご存知だったのだろうか。

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 登場するメカニック群はたいそう細かく設定されているが(これまた怪獣映画のデザインふうに、わざわざ足跡まで描いてある)、オマケとしてモコの「うっふん」な武装も図解説明があり、スカートの中にミサイルを隠しているのが分かる(p.10-13)。映画では一瞬のアクションなので気付きにくい細部だが、小悪魔娘の彼女によく合っていると言えようか。

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 他に解説として、「「日本SF大会」第22回大阪大会ーーすなわちDAICONⅣ(1983年8月20日、21日開催)の中の企画のひとつが「AZICON」」だったことや、映画のきっかけは1983年1月「しっぽがない」の会長から「スタジオRAMI」の会長に宛てられた1枚の葉書であったこと、などが記録されている(p.14-15)。
 当初、吾妻キャラが出て来て単に動くだけの紙アニメを予定していたのが、「RAMI」は3分33秒にも及ぶセルアニメーションの絵コンテを作成し、かくて映画化が進められるに至ったらしい。
 動画はボツを含めて4000枚が描かれ、それに8月までかかったという。彩色は神戸、京都、広島、金沢で行なわれ、徹夜の作業も続く大変なものだったらしい。編集段階でまたモメて、「結局、フィルムコピーをした上で編集を変えた作品を2つ作る事に決定した」そうで、まるっきり違う作品が2作存在するようだ(これは非常に興味深い裏話だが、もうひとつのオープニングアニメがいったいどんなものなのかは詳細不明)。ただし、それぞれの作品にはヘンな仮題(?)がつけられており、本当なのか冗談なのかよく分からない。
 録音はSF大会当日の朝まで続き、ついに映画は完成したという。上映時間は約5分、カラー8mmセルアニメ、「スタジオラミ」と「しっぽがない」の共同製作であるこの作品の動画総枚数は2000枚なのだそうだ。

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 「しっぽがない」と「スタジオRAMI」の双方から1名ずつがペンをとったコーヒーブレイク(p.16-17)のあと、本のおわり、メッセージのところでは吾妻ひでおのイラスト(文言は一切無い)が掲載されており、「しっぽがない」会長、「スタジオRAMI」代表がそれぞれ短い一文をよせている。STAFFとして両方のサークルのメンバーの名前が記されているのだが、「この他大勢の方々の協力を頂きました」という(p.18-19)。



AZICON

 AZICONは、「AZICON1」(1983年8月8日?)と「AZICON2」があったようだ。ただし後者はグッズの製作と販売のみで、催しとしての企画は無かったらしい(これは1984年のSF大会(EZOCON2)が北海道で行なわれたゆえだとか)。

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 画像は、AZICON1のステッカー(サイズはB5、吾妻ひでおFC「シッポがない」製作、1983年夏)。上のフキダシおよび作者自画像はそれぞれ、おおまかな外周であらかじめ切ってあり、台紙からはがして貼ることができるようだ。

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 こちらはAZICON2のステッカー(吾妻ひでおFC「シッポがない」製作、1984年冬)。「2代目会長が吾妻先生に頼んで描いてもらったもの」で、「当時の会員をモデルに描いてもらった」のだが、ここに「事務局長だった私は描かれてない」とのこと(大西秀明氏(吾妻ひでおFC「シッポがない」事務局長)談、資料提供も氏のご厚意による)。1984年の夏のコミケットで、AZICON2セットを売ることになり、AZICON2本、A5版ポスター(絵柄はステッカーと同じだが背景色は白)、GHKのカセット(Part1、後述いたします)を袋に入れて販売したらしい。



シッポがない

 吾妻ひでおファンクラブのひとつである「シッポがない」は、既述のとおり1983年のSF大会(DAICON IV)において、AZICON1を実施している。ここから推すに、複数存在した吾妻ひでおファンクラブの中でもとりわけ、その会員にSFマニア(それも関西在住の人たち)の比率が高いクラブだったのだろうか。クラブ名称はたぶん『るなてっく』シリーズにある作品からとられたのではないかと思われるが、詳細不明。
 その初代会長をつとめた人物は女性で、ペンネームとして自らを「阿素湖素子」と名乗り、会長引退後には「阿素湖KK」というサークルをおこしている。これらの名は吾妻マンガの『やけくそ天使』から、そのままとられているという(大西秀明氏(吾妻ひでおFC「シッポがない」事務局長)のご教示による、以下同)。
 なお「シッポがない」は、映画「AZICON1 オープニングアニメーション」(オールスタァ十三大キャラ 吾妻総進撃)の発表に先立ち、「AZICON1プログレステープ」として、オーディオドラマ作品をも世に送り出している(これは後述いたします)。
 さらにさかのぼって1982年頃には、オリジナルの曲でソノシートを作り、コミケットやSF大会で販売していたらしい。

●シッポがない会歌(1分6秒)
●愛のシッポ(3分25秒)

の2曲がそれなのだが、いずれも真面目にまとまっており、前者はどこかの学校の校歌かと聴き間違えそうなもので、後者は男女のデュエットによる哀調を帯びた作品になっている。「当時は、音楽系の学生やサークルが、卒業記念にソノシート作ることもあったので、そこそこの値段で作れた」ようで、「即売会でソノシートを売るサークルは珍しかったので、買ってくれる人もかなりい(た)」という。

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 「シッポがない」では他にも、カレンダー(画像上、サイズはB5)やステッカー(カレンダーと同じ絵柄)などを製造している。これらのグッズは会員のH氏が独立採算で作り、SF大会や、コミケット、神戸の即売会などの機会に「シッポがない」のブースで売っていたとのこと(資料提供:大西秀明氏(吾妻ひでおFC「シッポがない」事務局長))。カレンダーには阿素湖素子、ななこ、大トカゲ、猫山美亜が登場しているのだが、彼らに混じって未知の生物(?)も描かれているのがわかる。



AZICON1プログレステープ

 これは「DAICON IV プログレステープ」を聴いて、AZICONも負けずに同じようなものを作らねばならないということになり、急きょ作製されたコメディドラマテープなのだそうで、A面31分24秒、B面31分29秒から成る(資料提供:大西秀明氏(吾妻ひでおFC「シッポがない」事務局長))。
 「DAICON IV プログレステープ」というのは、1983年のSF大会で参加者に配られたプログレスレポートを内容とするコメディDJテープ。普通は紙に印刷されたものなのが、この時はテープ版だったらしい。
 「AZICON1プログレステープ」は大西秀明氏が監督をつとめ、「タモリのレコードやモンティパイソンのコメディを参考にして、不条理な笑いを工夫した」という。A面は氏のアイデア中心、B面は阿素湖会長のアイデア中心になっているのだとか。吾妻ファンは読者であることにとどまらず自身も何らかの創作をしたいと希う若者が多かったという事だろうか(ちなみに、テープ作製に参加した人々のうち何名かはこの1年後、GHKという放送劇団を別におこし、「珍説 日露戦争」、「度が過ぎた恥」、「将軍達の夜食」などのドラマ作品を完成させている)。
 テープA面は、「シッポがない」内部でクーデターが発生し武力抗争が起きているという設定で展開、AZICON1オープニングアニメは「タコ部屋」で製作中だとかレポートされる。B面では「オールナイトアジコン」なる番組の形をとって、替え歌やニュースが流れており、会長による以下のようなナレーションが記録されている(聞き書きなので字が間違っているかも知れない)。

「この放送は、神戸シッポがないをキーステーションに、広島シッポがない、浜松シッポがない、アジマフ、あるまじろカンパニー、症候群、無気力家族、すーぱーがーるカンパニー本社、北海道支社、東海支社、近畿支社、大日本吾妻ひでお翼賛会、吾妻ガチャポン振興会、東大吾妻会、吾妻アニメートクラブ、アニデック、スタヂオラミ、吾妻ひでお麻雀翼賛会、東京吾妻漫画振興会、北海道吾妻漫画振興会、知佳舎、はーどしゅーる、吾妻ひでおと新井素子の会、全国23団体ネットでお送りしました」





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