スクラップ学園(上)

(2018年2月20日初版発行)

 『吾妻ひでおベストワークス』の第3弾として出版されたもの。実際には奥付けの日付より数日早く世に出ている。


 本のサイズはおよそ 180 × 130 mmで、368 ページ。


 本書の特徴はコシオビにも書いてあるが「執筆順全話掲載での完全版(全2巻)」になっていることだ。


 また、カラーページが結構多く、巻頭には「新潟ロシア村 マンモス・マンガ展」(1997年)で発表された1コマ漫画なんてのまで収録されている。


 (これは長年にわたって吾妻ファンであるという人でも、全く初めて見るという場合が多いのではないだろうか?)


 雑誌連載で初登場したとき2色カラーだった原稿は、ちゃんとカラーで収録。


 自費出版(同人誌)で小部数が世に出た『ミャアちゃん官能写真集part1』も、精細なカラー印刷が4ページ含まれており、貴重だ。それにしてもトウモロコシ畑(?)で「撮影」されたヌードというのは珍しい?


 巻末には『著者解題』として、作者自身による作品解説がある(上巻から17作品、下巻から13作品)。「オチの無い作品も多数混在していますが、漫画にオチなんて必要ないです」といった発言で始まっており、少年誌などでは必須とされそうな定石を拒む前衛精神は、この『スクラップ学園』あたりから顕著になり現在に至っているのかも知れない(?)。

 個々の作品のあらすじ等は旧サイトに書いたので、そちらの参照を乞う。

 単行本というと、どうしても編集者が(より多く売れる書籍とすべく)、あれやこれやと収録作品の順序をいじくるのが出版の手法として定番だろう。それはやむを得ない事かも知れないけれど、史実の改変と言う点でのみ評価するとすれば作品に対する強姦になる場合もあろうと思う。「執筆順」で収録される事によって浮かび上がって来る微妙な変遷の航跡は、いち編集者の手腕よりも尊重されて然るべきであるはずだ。今回それが実現しているのは読者として大変うれしい。