(2017年3月20日初版発行)
『吾妻ひでおベストワークス』の第2弾として出版されたもの。広告やコシオビの文言に従えば「美少女たち」を主題として編纂(へんさん)されており、『翔べ翔べドンキー』シリーズ全9話の他に、読み切り短編が16篇、収録されている。本のサイズはおよそ 181 × 130 mmで、336 ページ。
発売前に版元の復刊ドットコムへ予約しておいた場合、特典として、複製の色紙がもらえた。大きさはほぼ 295 × 210 mmで、水墨画ふうの絵だ。右下のサインには
2016.4.24 と日付が入っている。
さらに加えて、絵葉書が1枚もらえた。
これは2011年に米沢嘉博記念図書館にて催された『吾妻ひでおマニアックス : 吾妻ひでおのシュールな世界』(同年2月4日~3月7日)会場の受付でもらうことができた絵葉書と同一のものと思われる。この時に現場へ行けなかったファンにとってとりわけ貴重だろう。
本書の巻頭にはカラー図版があり、『翔べ翔べドンキー』単行本で使われた原画のほかに、美少女イラスト3葉を収録。付記されている文言によれば2004~2005年に描かれた作品のようである。
以下、収録されている作品を順に見てみよう。
蛮人ヒロコ
(単行本『アニマル・カンパニー』 1980年9月)
怪盗紅オヨヨ
(冒険王 1976年1月15日 新年大増刊)
スペースオペラ
(少年チャンピオン 1976年3月10日 増刊号)
空手ウーマンりぶ
(冒険王 1977年1月15日 お正月増刊号)
おーマイ・パック:湖のロマンス
(少年チャンピオン 1972年9月18日号)
おーマイ・パック:四畳半の女
(少年チャンピオン 1972年9月25日号)
妖精狩り
(少年チャンピオン 1978年7月31日号)
ロンリーちゃん
(別冊ビバ・プリンセス 1976年4月25日 春季号)
ゆきおんな
(少年キング 1975年2月10日号)
ゆうれい日和
(漫画アクション増刊 スーパーフィクション 11 1982年9月4日号)
ミセスの冒険
(漫画アクション増刊 スーパーフィクション 9 1982年1月2日号)
NAMAKO
(マンガ宝島 1982年3月号)
これらの作品については旧サイトで紹介済みなので割愛(下線を施した箇所に記事へのリンクがあります)。
そしていよいよ、単行本初収録となる作品が登場する。
(まんだらけ 18 1997年9月10日号)
ピッグテールに髪をまとめた若い娘が背伸びをし、自宅の庭なのか、そこにいる犬へ語りかける。
「ゲソ 散歩いくか?」
犬は尾を振って喜び、散歩が始まった。
電柱の臭いをかぎ、犬が身構えたとたん、
「てめえ そんな所で ウンコしやがったら 食わすぞ! あたしは おまえのウンコを 始末したりはしないからな」
と、娘がきつ~く言い渡す。
犬はしかたなく場所をかえる。そして、また何かをかぎつけた様子。犬が行きたがっているらしい方向へ一緒に歩いてゆくと、そこには……。
*現実に作者の家庭でも犬を飼っているようで、おそらくこの作品が執筆された当時にも同様だったのではないかと思われる。時期的には2度目の失踪から戻り、『エイリアン永理』や『クラッシュ奥さん』を発表した頃だ。更に言うと、酒がもとで入院する1年前だった。
おひるの大捜査線
(漫画ボン 1975年6月号)
スワンちゃん
(平凡パンチ 1975年12月10日 冬の増刊号)
これらの2作品については旧サイトで紹介済みなので割愛(下線を施した箇所に記事へのリンクがあります)。
そしてもう1つ、単行本初収録な作品が続く。
(NEWパンチザウルス 1989年6月20日号)
「あたしずーっとダイエットしてるのに ぜんぜん痩せないんです」
と、太目の若い女性が嘆く。ルームメイトの女性はスタイルが良いだけに、彼女はますます羨ましいのだった。
ダイエット食ばかりが続いているらしいのだけれど、無理があるようで、朝から暴走ぎみ。これを見かねたルームメイトは、
「パーティの招待状いっぱいあるからあげる おしゃれして行ってらっしゃい」
とすすめる。そこでさっそく、出かけるのだが……?
*この作品のトビラの絵は、1000部だけ発行された同人誌『吾妻ひでおの不自由帖』(まんだらけ 1999年12月18日)でも使われたようなので(注:僕はこの書籍を所持していないため実物未確認)、そちらでご存知のファンも多いだろう。
コブトリ(小太り)と呼ぶにはいささか……と思わせておいて……という仕掛けが題名にあるようだ。
翔べ翔べドンキー
(プリンセス 1979年)
このシリーズは旧サイトで紹介済みなので割愛します。
巻末には、「著者解題」として、収録されている各作品についての、作者自身による短い解説が収録されている(これはかなり珍しい事のはずで、好企画ではないだろうか?)。