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30 おしゃべりラブ/ちびママちゃん

Hideo Azuma has written 2 series, "Oshaberi Love" and "Chibi Mama Chan", that has a girl as its heroine, later 1970's. It is very interesting when we compare them.

はじめに

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 このカテゴリでは「エッチなし」で少女が主役の作品として、『おしゃべりラブ』と『ちびママちゃん』を紹介させて戴こうと思う。この2つのシリーズには、良く似た点と対照的な点とがあって、比較してみるといろいろ興味深い。
 『失踪日記』で同時に言及されているとおり(p.132)、連載された時期はほぼ重なる。『おしゃべりラブ』はプリンセス1975年1月号から1977年9月号まで、『ちびママちゃん』は月刊少年チャンピオン1975年1月号から1977年12月号までに発表された作品だ。
 一時期、吾妻ひでおは「エッチまんが専門」みたいな位置づけが出版界でなされていたのか(『失踪日記』同上ページ)、少女向け雑誌でさえ(!)その方向で執筆依頼が来たらしい作品さえある(『真絵知くん』(別冊少女フレンド 1976年)など)。読者の側からすればそれはそれで面白いのだが、作者としてはそうしたコメディに嘆息していたようだ。
 そこで、「エッチなし」ギャグとして執筆されたこれら2作品、『おしゃべりラブ』と『ちびママちゃん』とは、作者にとっていわば原点回帰のポイントになったのではないかと思える。ただ、「エッチなし」の解放を得た(?)一方で、「SFなし」という桎梏(しっこく)もここにはまだあったらしく、作者からしたら、まだまだ苦難の続く日々だったのかも知れない。
 で、そうした時期に描かれ生まれたこれら2人のヒロインも、ちょっと「苦労」をしている。どちらも単行本が出ているのだけれど、その出かたが少々ややこしかったのだ。

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 まず『おしゃべりラブ』は第1巻がわりとすんなり単行本になった(? 1976年4月20日初版)のだが、第2巻の発売はそれからだいぶ(1年半以上)たった後になる(1977年11月20日初版)。この不自然なズレは編集部の判断によるのだろうけれど、委細は分からない。
 (個人的な思い出になりますけれど、沖由佳雄さんが当時、このへんの話を苦笑しつつ聞かせて下さったことがあります。氏いわく、
「(吾妻)先生が(『ラブ』の)第2巻どうなったんだ、ってきくと、担当さんがサッと話題をそらす、っていうからなァ」
 だからか、無気力プロで発行していたCOPY新聞『アリス』紙上に"おしゃべりラブ第1巻発売中"の小さなCMが載った時には、
「あんまり売れないので2巻は出ないそーです」
という、ヤケクソ的なコメントが付してあったように記憶します。)
 とはいえ『おしゃべりラブ』の連載は2年9ヶ月続いたし、最終回までがちゃんと単行本へ収録されている(唯一の例外は第21話(プリンセス1976年9月号)だけなのだが、これはなぜ未収録なのか分からない)。ただ、シリーズ終盤の収録は複数の書籍に分散して行なわれたようだ(『翔べ翔べドンキー』『魔法使いチャッピー』『ネムタくん』)。

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 いっぽう『ちびママちゃん』は、これまた第2巻まで単行本が刊行されたものの、そのあとの数話がやはり他の書籍へ収録されており(『ネムタくん』)、そのうえ最終回までは未だ単行本収録が実現していない。『ちびママちゃん』の主人公・やよいは幸薄い環境で青春をおくる健気(けなげ)な美少女なのだが、彼女の物語の出版が、それを地でいっている(?)ような事になったわけだ。
 このへん、徹底的に陽気でたくましい台風娘のラブが、紆余曲折(うよきょくせつ)にもめげず最終回までしっかり単行本化された点と照らし合わせて考えると、何やら不可思議な思いにとらわれる。主人公というものは自身の運命を御する手綱を、実は自らの手中に握っているものなのだろうか……?

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 男(の作者)が女を描く。これはある意味、「フィクション」の最たるものなのかも知れない。考えられる方向は少なくとも2つあるだろう。的確に鋭く異性の本質をうがつ描写をすべくつとめるか、それをあえて退けるか。吾妻ひでおはしいてどちらかと言えば後者、"夢"を描く事を選んでいるように思う。騒々しくて迷惑なのだが陽気で憎めない少女・ラブと、真面目でしっかりしたいい子なのに恵まれず父性本能(?)をゆさぶる娘・やよい。少女マンガと少年マンガという異なった世界で活躍するため、両者の背負った使命はだいぶ違うようだ。それでも、夢を紡(つむ)ぐ作者のペン先から生まれたこれら2人の少女は、その生き生きとした姿ではどちらも負けていない。ページをめくれば異空間に「実在」し生きている彼女たちと、読者はいつでも会う事ができるだろう。



となりは何をする人ぞ?の巻

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(プリンセス 1975年1月号)

"Tonari wa nani o suru hito zo ? (meaning : What kind of people, my next-door neighbor is ?)"

A girl, Love Shirotumekusa, moves to a dilapidated apartment. She is surprised at a strange landlord, but more odd destiny waits for her ...

 ゴチャゴチャした住宅街に、「猿すべり荘」というボロっちいアパートが建っている。そこへ1人の少女・白詰草(しろつめくさ)ラブが引越してきた。ヘンな大家にびっくりさせられながらも、とにかく部屋を片付けるのだったが、もっとびっくりさせられる運命が彼女を待っていた……。

*シリーズ第1話。最終回までずっとレギュラーで共演する事になるキャラクター、「ねむの木くん」、犬の「ポコ」そして「吾妻くん」が登場。この段階ではまだ主人公のラブは、ごく普通の女の子といった感じで、おかしな周囲の人々に鍛えられて(?)だんだんタクマシイ性格になってゆくようだ……。人間、とりわけ若者は、付き合う人々から影響を受けて人柄が形成されてゆくという教訓がある!?



不純な関係の巻

002

(プリンセス 1975年2月号)

"Fujyun na kankei (meaning : An illicit relation)"

Love reproves her classmates as they flirt at a classroom. But they say that she feels frustrated. Love gets angry, and tries to show off as a counterattack. But ...

 教室でイチャつく同級生たちを注意するラブだったが、「欲求不満」だと言われ反撃を食らう。頭にきた彼女は、みんなに見せつけてやろうと逆襲を試みる。しかしこれが、自らを窮地へ追い込むことになって……。

*ねむの木くんはラブとほぼ同年齢らしく、女生徒たちから「わりとカッコイイ男の子」という評価を得ている。彼が「ふーふ」うんぬんと言っている台詞は、もしかするとTVの長寿番組だった『唄子・啓助のおもろい夫婦』(1969~1985)エンディングのパロディか。「どーせーじーだーいー」というのは何度か映画化されている『同棲時代』(原作は上村一夫)が元ネタかと思われる。



恋のガードマンの巻

003

(プリンセス 1975年3月号)

"Koi no gard-man (meaning : A guard of love)"

A mathematics' examination paper is returned. Love scored only 30. She plunges into study, but she is disturbed in her work at an apartment ...

 数学のテストが採点され返ってきた。しかしラブは30点。かくて一念発起、勉強に励むのだったが、下宿ではどうにも邪魔が入ってしょうがない……。

*今回、吾妻くんとねむの木くんの2人は「ラブちゃん親衛隊」を名乗り、一緒に行動している。いろいろ問題のある異性2人につきまとわれるラブは、いったい幸福なのやら、不幸なのやら??? 男子生徒からラブレターを渡されたりしているし、ラブはなかなかモテるようだ。



あこがれの先生の巻

004

(プリンセス 1975年4月号)

"Akogare no sensei (meaning : The teacher I admire)"

Love and her classmate girls are excited. They are looking forward to seeing a newcomer teacher. But ...

 新学期となり、ラブたち女生徒はみんなでワクワクしている。新しい先生が入ってくるため、期待があるのだった。ところがやってきた先生は……。

*「だんだん下品になってくるわーこのマンガ」とラブが今回こぼしている。開き直り(?)というべきか、そろそろ彼女は主人公らしく自発的に暴れ始めている!?



B・Fよっといでの巻

005

(プリンセス 1975年5月号)

"B.F yottoide (meaning : I welcome boyfriend)"

It is Love's turn to clean. Girl students pass a rest room to her. Love cleans a bathroom for men in desperation, then she finds a handsome boy. She loves him at first sight ...

 当番だったラブは、女生徒たちからトイレ掃除を押し付けられ、1人でやることになった。やけっぱちのラブが男子トイレの掃除を始めてみたら、そこに美男子がいるではないか! ラブは恋におちてしまい……。

*B・F(ボーイフレンド)というのは、女から見た男友達を指す言葉として、このころ使われていたようだ。台詞にある「アラン・ドロン」(Alain Delon)はフランスの映画俳優、「ルネ・シマール」(Rene Simard)はカナダ人歌手の名前。「クシャおじさん」は当時TVで有名だった人で、下あごを持ち上げる事によって(上下とも歯が無いために)顔の長さをかなり縮めてみせられる特技の持ち主だったと記憶する。



恐怖のスケッチ旅行の巻

006

(プリンセス 1975年6月号)

"Kyohfu no sketch ryokoh (meaning : A fearful sketch journey)"

"I go on a journey." : Nemunoki-kun and Poco the dog are going to set out. "I'll stroll and sketch in every direction."
"Great ! Nemunoki-kun, are you actually an artist ?" : Love is pleased with their plan very much, follows them by force.

「ちょっと旅に」
とのことで、ねむの木くんとポコが出かけようとしている。
「ほうぼうスケッチでもして歩こうと思ってね」
と言う彼に、
「ステキ! ねむの木くんて本当は芸術家だったの?」
と驚くラブ。
「ロマンチックだわー」
とすっかり気に入ってしまった彼女は無理やり、ねむの木くんたちに付いて行くのだったが。

*学生なのか働いているのか、どうも良く分からないのが、ねむの木くん。今回は彼の身の上について少し描写が行なわれている。



ラブレター大作戦の巻

007

(プリンセス 1975年7月号)

"Love-letter dai-sakusen (meaning : The great operations of love letter)"

Love is late for school, eats greedily in public.
"You can't be popular with boy, in such a state." : Azuma-kun advices her.
But, strange to say, she receives a love letter ...

 遅刻はするわ、教室で人目もはばからずにガツガツ食事するわで、どうにも不体裁な振る舞いが目立つラブ。
「そんなんじゃ男の子にモテないよ」
と吾妻くんからも忠告される。しかし、そんな彼女へラブレターがきて……。

*「おっちょこちょいのオテンバ」とは、ねむの木くんの台詞だけれど、実際この描写が見事にあてはまってしまう主人公、それが白詰草ラブという女の子のようだ。推理と、意外などんでん返しで、物語性の強いコメディになっている回。



お見合いはいやよの巻

008

(プリンセス 1975年8月号)

"Omiai wa iya-yo (meaning : I don't like a meeting with a view to marriage)"

Love goes to a university that her father teaches at. But he is too busy to keep company with her.

 電車に乗って出かけたラブは、とある大学の門をくぐる。実はそこが、ラブのパパの職場なのだった。しかしせっかくの夏休みでたずねてきたのに、大学教授であるパパは研究(?)で忙しく、ラブのことをかまってくれない。2人がもめていると、そこへ大学の学長である山田がやってきた……。

*ラブの家族について描写がある回。父は大学教授で(なぜかマンガの同人誌を創っているらしい)、母とはずっと前に死別している事、ラブは母親に容姿が似ているらしい事などが分かる。
 台詞の「ジュリーとショーケン」は、沢田研二と萩原健一、「ヒデキ」は西城秀樹のことだろう。



必死のアルバイトの巻

009

(プリンセス 1975年9月号)

"Hisshi no arubaito (meaning : The desperate part-time job)"

Love doesn't have enough money though she is in the middle of the summer vacation. When she is at a loss after tried every means possible, a son of a landlord comes to her room ...

 まだ夏休みの真っ只中なのに、ラブのおこづかいは残り少なくなってきた。あれこれ試して失敗のあげく、どうしたものかと困っていたら、「大家さんとこのダレ夫くん」が、
「宿題教えてくんない?」
と部屋へやってきた。ラブはふとひらめいて……。

*ナハハの大家に息子(だろう)が存在し、ごく普通の小学生であるという点がちょっと意外な回。台詞にある「アラン・ドロン」はこの年、映画『アラン・ドロンのゾロ』(Zorro)で仮面の剣士である主役を演じていた。



ラブ・アラカルトの巻

010

(プリンセス 1975年10月号)

"Love a la caruto (meaning : Love a la carte)"

* This is an omnibus story.
part 1 : Kuri-hiroi (pick up chestnuts)
part 2 : Undohkai (a school field day)
part 3 : Chuhkan test (a midterm exam)

*今回は短篇3本立てで、
 パート1 くりひろい
 パート2 運動会
 パート3 中間テスト
という構成になっている。「吾妻くん」が作者と同姓同名であることが分かる。「ローラーゲーム」(Roller Game)は1970年代にアメリカで流行し日本でも一時期TV中継された、チームで競う特殊な格闘技の名称。



ああ文化祭の巻

011

(プリンセス 1975年11月号)

"Aa bunkasai (meaning : Ah, a school festival)"

Love attracts at a reception desk because there is a school festival. She seems busy with various roles ...

 きょうは「○×中学文化祭」。ラブは受付で呼び込みをしている。そこに、ねむの木くんもやってきた。どうもラブはいろいろと忙しいらしいのだが……?

*「V2」「原生魔人」といった台詞があるが、これらはTV放送していた『仮面ライダー』シリーズ(1975年だと『仮面ライダーストロンガー』)にひっかけているらしい。
(単行本『おしゃべりラブ』第1巻は、ここで終わっている。)



王子様が好き!の巻

012

(プリンセス 1975年12月号)

"Ohjisama ga suki ! (meaning : I like a prince !)"

Love is in high spirits as winter vacation will start tomorrow. All her classmates have a plan of Christmas, but she can't participate in any of them. Love gets burned up about it ...

 明日からいよいよ冬休み、ラブはひどく浮かれている。とにかく成績表も受け取って下校時刻となってみれば、みんなはクリスマスをどう過ごすかあれこれ予定しているとわかった。だのに、ラブが参加すべき手頃な集まりは見つからない。頭にきたラブは、
「そうだ 世の中で一番ひまな人 ねむの木くんでも誘ってみようかな」
と考えるけれど。

*これより単行本の第2巻。今回、犬の「ポコ」が重要な役割を果たす。「ロン」「イーペーコー」「タンヤオ」はいずれも麻雀用語から取っているようだ。意外な伏線が仕掛けられている回だが、それ以上に意外なのは、ラブに"玉の輿(こし)"願望があまり無いらしい、という点か!?



氷上の恋人たちの巻

013

(プリンセス 1976年1月号)

"Hyohjoh no koibito-tachi (meaning : Lovers on ice)"

Love goes out for skating. But when she arrives at a place that arranged to meet, she finds her friend with boyfriend. Love has Nemunoki-kun, Azuma-kun and Poco the dog go with her out of spite.

 スケートへ出かけるラブ。しかし待ち合わせ場所に行ってみたら、友人は男友達と一緒なのだった。くやしまぎれで、ねむの木くんと吾妻くん、そして犬のポコを同行させることにしたラブだったが?

*「ジャネット・リン」(Janet Lynn Nowicki)は、1972年の札幌オリンピックで銅メダルを取った女子スケート選手で、当時たいへんな人気者だった。今回もポコが活躍している。



恋のラブ・40の巻

014

(プリンセス 1976年2月号)

"Koi-no love-40 (meaning : Zero vs 40 of love)"

Love presents Hideo Azuma the author a gift on his birthday. She seems spend all her money, hungers as a result. Then she becomes aware of a good smell, as Nemunoki-kun cooks at her next room ...

「本日2月6日はなにをかくそう わたくし吾妻ひでおの誕生日なのであります」
という作者のもとへラブはプレゼントを持ってゆく。それでお金が無くなったのか、ラブは空腹に苦しむ事になってしまった。と、そこへ隣の部屋から、おいしそうなにおいがする。ねむの木くんが、
「アルバイトにタコ焼き屋やろーと思って練習してるの」
だという。ラブは空腹に耐え切れず……。



おひなさまの埋葬の巻

015

(プリンセス 1976年3月号)

"Ohina-sama no maisoh (meaning : The burial of a doll for the Girls' Festival)"

Love prepares the Girls' Festival at her room. She can't dress Japanese clothes by herself, so that she goes out to her friend's house. Unfortunately, all decorations comes to nothing while she is out by accident ...

 パパに買ってもらったひな人形を飾り、ラブはひな祭りの準備に余念が無い。だが和服の着付けだけはどうにも難しく、女の子の家へ手伝ってもらいに出かける。すると折悪しく留守中に騒動が起き、ひな段はメチャクチャになってしまった。ラブは失意か怒りか、部屋にこもったきり出てこなくなり、ねむの木くんに吾妻くん、そしてポコは……。



春は弥生の巻

016

(プリンセス 1976年4月号)

"Haru wa Yayoi (meaning : March is the best in spring)"

Love is about to go to see cherry blossoms with her friends, but Nemunoki-kun and Azuma-kun find it. In the end, all they go out together. Love and girls scramble for a senior handsome boy, but ...

 お花見にさそわれていたラブは、友人たちとオープンカーで出かけようとする。しかしこれが、ねむの木くんや吾妻くんらに見つかり、彼らもついてゆく事になった。美男子の先輩をめぐって争奪戦を繰り広げるラブたち。そんな一同を、1匹の犬が、木陰に隠れて狙っていた……。

*今回はポコが非常に重要な役どころで、人間語を喋るというディズニーアニメ風の場面も1ページある。ねむの木くんの台詞によるとポコは「オスのヨークシャーテリア」であるらしい。かなり重い問題提起を含んでおり、『プリンセス』読者であった少女たちの記憶に、とりわけ強く残った回だったのではないだろうか?



精霊狩りの巻

017

(プリンセス 1976年5月号)

"Seirei-gari (meaning : The spirit hunting)"

Love, Azuma-kun, Nemunoki-kun and Poco go to Hockaido the Azuma-kun's native place. They enjoy grand nature to the full, except for Love who devotes herself to eat.

 春休みを利用して、ラブたちは吾妻くんの故郷・北海道へ行く。吾妻くんとねむの木くんそしてポコは自然を満喫するのだったが、ラブはひたすら食べてばかり。どうにか目的地へ着いたのだが。

*留真(るしん)という地名は十勝郡浦幌町に実在し、作者・吾妻ひでおの故郷であるようだ。途中ラブたちは「十勝バス」というのに乗っているが、これは『メチル・メタフィジーク』にある『⑨アララテ山のむこうに恐山』でも登場(帯広市には同名の会社が実在するようだが、はて……? ともあれ吾妻ファンとしては1度乗ってみたい)。



恋のお相手だあれ?の巻

018

(プリンセス 1976年6月号)

"Koi no o-aite dahre ? (meaning : Who is your lover ?)"

Proceedings about election of class monitor make no progress as not only teacher but also many students doze. In the end, it is decided roughly. Then, Love and Azuma-kun appear as they late for school ...

 教室ではクラス委員を決めている。が、生徒たちのみならず先生までも眠っていて、さっぱり議事が進まない。やむなく、
「てきとーに選んでしまおう」
という事になった。そこに、遅刻したラブや吾妻くんが、やっと学校へ来るのだったけれど……?

*ラブの姓に「しろつめぐさ」とルビがふってあり、「しろつめくさ」とは読まないらしい。ねむの木くんは結局、ラブの学校へこのころから出入りするようになった?



栄光へのターンの巻

019

(プリンセス 1976年7月号)

"Eikoh e no turn (meaning : A turn to glory)"

Today there is the opening of a pool. Swimming club members set a good example for students. A schoolboy the swimming club's captain is popular with girls, and Love longs for him. She makes up her mind to join a swimming club ...

 今日は楽しいプール開き。ラブたちがはりきって泳いでいると、やがて水泳部による模範競泳が始まった。水泳部のキャプテンは女生徒たちに大変な人気があり、ラブの心も動く。ステキなプロポーションになりたい一心もあって、ラブは水泳部に入ることにした……。



めざめれば秋の巻

020

(プリンセス 1976年8月号)

"Mezamereba aki (meaning : It is autumn when I wake up)"

Love becomes a member of a karate (= a kind of Japanese combative sport) club. She seems be cherished because she is the first member since the club was founded. Members lodge together in the summer vacation ...

 なぜか空手部へ入ったラブ。
「夏はチカンも多いし いざというとき役に立つじゃない」
と言うのだが、空手部創設以来の女子部員ということで、大切にされているらしい。やがて夏休みとなり、空手部の合宿も始まるが……。

*今回『ふたりと5人』の哲学的先輩がゲスト出演している! ただし彼は「もう半年も」うんぬんという台詞を語っており、これはまだ連載中だった『ふたりと5人』(その最終回は週刊少年チャンピオン1976年9月6日号)の内容といささか食い違う。はたして彼は別人なのか? それとも、おさむたちの住む町が近隣なのか?
(この後、第21話がプリンセス1976年9月号に発表されたようなのだが、単行本未収録であるらしく、委細は不明。)



ガラスの仮面の巻

021

(プリンセス 1976年10月号)

"Garasu no kamen (meaning : A mask of glass)"

Love lives untidily. But some her classmate girl exchanges diaries with a boy. Love is envious of them, starts to keep a diary.

 なんともダラけた作者の日常から始まり、なんともしどけないラブの日常の幕が開く。そんな彼女とは対照的に、男の子と交換日記をしている同級生もいるのだった。
「アタシも交換日記したいよー」
と、くやしがるラブは、とにかく日記をつけ始めるのだった。

*「ケインさんみたい」
「こーろぎ勉強せいよ」
という台詞の元ネタが気になるが、分からない。TVドラマ『燃えよ! カンフー』(Kung Fu 日本では1976年放送)の主人公がクワイ・チャン・ケイン(Kwai Chang Caine)という名前だったが、それであろうか?



小さな炎の巻

022

(プリンセス 1976年11月号)

"Chiisana honoh (meaning : A little flame)"

Love participates in practice of a folk dance as a school function. She has a dream that she dances with a handsome boy, writes a love letter and entrusts it to Azuma-kun, but ...

 学校行事で、ちかぢかフォークダンスがある。ラブはその練習に参加するが、おかしな目にあってばかり。決まった相手と踊るのもある、と知ったラブは、美男子とペアになる事を夢見てラブレターを書く。しかしそれを委ねられた吾妻くんは……。

*冒頭、吾妻夫人が後姿で出演。
 ちょっと残酷で哀しいラブストーリーに、ほっとする結末。劇的な展開に加えて、ラブの長所がわかる、すてきな回になっていると思う。



メタモルフォシス伝の巻

023b

(プリンセス 1976年12月号)

"Metamorphosis-den (meaning : A legend of metamorphosis)"

Love decides to give a Christmas party at her room. Poco the dog tries hard to prepare a present, then he runs into a deserted cat ...

 クリスマスパーティを自分の部屋で開くことにしたラブ。犬のポコもプレゼントを用意しようと頑張るが、一匹の捨て猫と出会い……。

*おも筋ではラブが珍妙な行動を始めて騒動になるが、わき筋では犬のポコがちょっとうら哀しいドラマを見せる。冬の夜の不思議な物語になっている一品。
(単行本『おしゃべりラブ』第2巻は、ここで終わっている。)



ちびママちゃん誕生の巻

024

(月刊少年チャンピオン 1975年1月号)

"Chibi-mama-chan tanjyoh (meaning : Little mamma's birth)"

A girl in a school uniform runs under the sky at sunset. She tells her elder brother that their mother is about to die. Her brother goes for a doctor ...

 夕陽の中を、セーラー服の少女が走ってくる。
「お兄ちゃん 大変 お母さんが」
 泣いてそう叫ぶ彼女の前方では、
「おー 今しょんべんしてるから ちょっと待て」
と学生服姿の男が返事。
「お母ちゃんが死にそうなのよー」
 兄は医者を呼んでくるべく、しょんべん飛ばしながら走り……。

*これが第1回。
 『失踪日記』(p.132)では本作について「主人公気に入ってた」と記されており、また単行本の第1巻カバーには以下のような文言がある。
「ぼくもこんな妹がいたら 毎日いじめてあげるのに ウヒヒヒヒ という純粋な美しい気持ちで描きました」
 貧しい家庭、母との死別、そして父親の姿は無い。とてつもなくつらい状況。これを、とてつもなくどうしようもない兄・真二が、つらい雰囲気から救っているようだ。
 ヒロイン「後藤やよい」は、兄の真二、弟の五郎と共に3人で生きてゆく運命を背負わされ、兄がゴクツブシなため「ママ」の役割をになう事になるのだった。
 長男(母親がそう言っている)なのに真二という名前であったり、3番目の子のようなのに五郎という名前なのはいささか奇妙だが、今回特にその説明となるものは無いようだ。
 作者は実生活において家族の人数がけっこう多かったらしい事が『失踪日記』(p.19、161)や『逃亡日記』(p.96~)の記述からうかがえるのだけれど、自身の幼少時の思い出もひょっとすると、物語にヒントを与えているのだろうか。



やよいちゃん大フンセン!の巻

025

(月刊少年チャンピオン 1975年2月号)

"Yayoi-chan dai-funsen (meaning : Yayoi fights very hard)"

As it snowed last night, there is a briliant white wonderland. Goroh is in high spirits with it, but he is too infantile to understand their mother's death. Yayoi asks her elder brother Shinji, to look after Goroh, goes to work.

 夜のうちに雪が降って、あたり一面の銀世界。五郎は喜びはしゃぐのだったが、幼い彼にはまだ母親の死さえ理解できない。そんな弟の世話を、兄である真二に頼み、やよいは働きに出かけるけれど。

*なぜ兄の真二が働かないのか? という理由の説明になっているようだ(答え、彼が働くとむしろかえって災難を招くから……)。弟に教えているのは「替え歌」かと思われるも、元歌が何かというのは、沖縄民謡、デカンショ節、アルプス一万尺、高原列車は行く、など複数考えられ、真相は不明。もう一方は『タバコ屋の娘』が元歌と考えて間違いないのではなかろうか。
 トビラにある「としま庵」は、『やけくそ天使』『チョッキン』にも登場しており、無気力プロの近所に実在した店をモデルにしているらしい?



お手伝いさんでがんばるやよいの巻

026

(月刊少年チャンピオン 1975年3月号)

"Otetsudai-san de ganbaru Yayoi (meaning : Yayoi does her best as a maid)"

Yayoi finds Goroh is naked when she comes home. It seems that Shinji has put all their possession in pawn. So Yayoi has to look for a part-time job that is more profitable. She knows a home of her ex-classmate recruits a maid, but ...

 やよいが帰宅してみれば、なぜか五郎が裸でいる。どうも真二が何もかも質(しち)に入れてしまったらしい。こんな調子だから、やよいはもっといいバイトを探さねばならなくなる。そこへかつての学友、土地成金の息子である鼻汁くんの家でお手伝いさんを募集している事が分かった。彼はどうも好色な感じの少年なので不安はあったのだが、背に腹は代えられず……。



魅力の日当五千円の巻

027

(月刊少年チャンピオン 1975年4月号)

"Miryoku no nittoh gosen-en (meaning : An attractive daily wage is 5,000 yen)"

Yayoi pays 5,000 yen for her family's food a month.
"I have to feed them on delicious dish occasionally."
Yayoi is worried and finds a job that's wages are 5,000 yen a day.

 一ヶ月の食費を五千円でやりくりしているとはいえ、
「たまにはおいしい物 食べさせてあげなきゃね」
と悩む、やよい。すると、
「日給 五千円以上」
というバイトの口があった! しかしその職種は……。

*ちょっとロマンティックな回。兄の真二が前面に出てこないと、同じシリーズでも話の方向がこうまで大きく変わるものか!?



テレビに出てタレントになろうの巻

028

(月刊少年チャンピオン 1975年5月号)

"Terebi ni dete tarento ni naroh (meaning : Let me appear on television and become an entertainer)"

Shinji goes mad when he watches a woman singer in TV show, and plans to make himself a professional singer. Yayoi is amazed by that and takes away his guitar. Then ...

 女性歌手がTVで歌う姿を観て、真二が錯乱、なんと歌手デビューをたくらむに至った。やよいは呆れ果ててギターを取り上げる。すると今度は……。

*このシリーズでもついに「アグネス」が登場。やよいは音楽の才能もあるのか即興(?)で歌っている。物語は意外な方向へ進むのだが、ともあれ、ヒロインに対する作者の愛情がうかがえる回になっていると思う。

028b



まぶたの父の巻

029

(月刊少年チャンピオン 1975年6月号)

"Mabuta no chichi (meaning : Father lives on in our memory)"

Yayoi leaves for home at night and has to walk alone on dim road. Her bad feeling proves right, someone pounces on her !

 帰宅する為、暗い夜道を1人で行かねばならなくなった、やよい。不安は的中し、何者かがやよいに襲いかかってきた!

*今回、やよいはセーラー服を着ている。電車に乗り、少し遠くの夜間中学に通っているのかも知れないが、劇中に説明は無いようだ。
 五郎が活躍するのに驚かされ笑わされるが、さらに驚かされる事には、やよい達の父親が登場する!



ああ大黒柱の巻

030

(月刊少年チャンピオン 1975年7月号)

"Aa daikokubashira (meaning : Ah a breadwinner)"

After payment of family's debts to bank, Yayoi has only a little money. Her elder brother Shinji is good for nothing as ever. What is worse, she is complained that her little brother Goroh has taken away a toy of a neighbor's child. Yayoi gets an intense shock ...

 銀行へ借金の返済をすませると、やよいの手許にはもういくらも残らない。兄の真二は相変わらずで全くダメ。そんなおり、五郎が隣の子のオモチャをとったと文句を言われる。大ショックを受けたやよいは……。

*ドラマ性が強く、物語に入り組んだ起伏のある回。しょーもない兄でもやっぱり家族、という心優しいエピソードが強く印象に残る。真二の歌っているのは『昭和枯れすすき』の一節だろう。



ラブラブ・ライバルの巻

031

(月刊少年チャンピオン 1975年8月号)

"Love-love rival (meaning : A loveydovey rival)"

Yayoi is invited to go swimming in the sea by her classmate girl. Boys invite her, too. It seems that a boy who is popular with girls participates in it. Yayoi declines with thanks but she wants to go with them, truth to tell ...

 放課後となり帰ろうとしていた、やよい。そこへ級友の女生徒が声をかける。
「あたしたち夏休みに海へいく計画たててるの いっしょにどう?」
 男子生徒たちからも誘われ、迷うやよい。加えて、女子たちに人気のある男の子・井上君も参加するらしい。
「あたし やっぱりダメだわ」
 逃げるように教室から去って行くやよい。でも、本当は海へ行きたいのだ……。

*真二が時々しでかす悪ふざけを別にすれば、このシリーズに「エッチまんが」の要素は無い。今回トビラで、やよいは上半身だけのセミヌードになっているが、これはたぶん珍しい1コマと言えるだろう。
 級友の井上君も働いている場面があるので、やよいが通っているのはやはり夜間中学であるらしい?



観光バスでアルバイトの巻

032

(月刊少年チャンピオン 1975年9月号)

"Kankoh-basu de arubaito (meaning : Work part-time at a sightseeing bus)"

Yayoi works as a tour guide. There are many low schoolboys in her sightseeing bus. Are graceful Yayoi safe ?

 スズメ観光バスで、ガイドとして働くやよい。「ハキダメ中学」の遠足か何からしいのだが、乗客である生徒たちはどうにもガラが悪い。しとやかな性格のやよいは大丈夫なのだろうか?



ゆうかい大作戦の巻

033

(月刊少年チャンピオン 1975年10月号)

"Yuhkai dai-sakusen (meaning : Great kidnap-operations)"

Yayoi starts a day nursery at her house. But infants are illnatured. Then an unexpected things happen.

 五郎と同じ位の歳だろうか、幼児たちがおおぜい集まって遊んでいる。やよいは自宅で託児所を始めてみたのだった。しかし子供たちはヒネていて扱いにくい。そこへ予想外の事件が発生する。



甘い誘惑の巻

034

(月刊少年チャンピオン 1975年11月号)

"Amai yuhwaku (meaning : Sweet temptation)"

Shinji plans for moneymaking by gambling. But he can't get funds for it as Yayoi has prevented. Shinji goes out to search for funds.

 パチンコで稼ごうと考えた真二だったが、やよいは予防策を講じていて軍資金が得られない。
「いいよいいよ オレが一言いえば金出してくれる女の一人や二人」
と真二は豪語し、外出するけれど……?



白い天使の巻

035

(月刊少年チャンピオン 1975年12月号)

"Shiroi tenshi (meaning : A white angel)"

Yayoi passed a test of a nurse. Today is her first work day, but Shinji is overanxious.

「おねーたん きれいきれい」
と五郎が喜ぶ。やよいは看護婦の試験に受かって、今日が初出勤なのだった。真二はあれこれ心配するが、やよいにアキれられるばかり。そして病院へ向かったやよいは……。

*三蔵が登場するのだけれど、その頭部の後姿が描かれているコマがあるのはちょっと珍しい?



晴れ着がほしいの巻

036

(月刊少年チャンピオン 1976年1月号)

"Haregi ga hoshii (meaning : I want a long-sleeve kimono)"

Yayoi is busy in a general cleaning in the end of the year. Shinji and Goroh catch sight of young women in a long-sleeve kimono. Then an idea occurs to Shinji ...

 年末の大そうじで忙しいやよい。寝ている真二を起こしてはみたものの、かえって用事が増えるばかり。怒ったやよいに追い立てられた真二と、とばっちりを食った五郎とは、町でふりそで姿の娘たちを見かける。
「おねえちゃんも着ればいいのにね」
と五郎が言うのを聞いた真二はふと考えて……。

*今回再び、やよいたちの父が帰ってくる。以前と異なりなぜか髪の毛が増えているのだけれど、顔はなるほど真二と実に良く似ているようだ。
(単行本『ちびママちゃん』第1巻は、ここで終わっている。)



やよいの婦警さんの巻

037

(月刊少年チャンピオン 1976年2月号)

"Yayoi no fukei-san (meaning : Yayoi the policewoman)"

Shinji is in business of casino at a field. But all customers are children. Goroh tells Shinji that police has raided on there. Presently, Yayoi the policewoman comes by a police car.

 空の下、空き地で、真二が賭場を開いている。しかし集まっている客は子供ばかり。
「お兄たん 手入れだよー」
と五郎に知らされ、全員が逃げ出す。そこへパトカーでやって来たのは、婦警となったやよいだった。

*真二が歌っているのは『この道』(作詞:北原白秋、作曲:山田耕筰)の替え歌らしい。もうひとつは『いつまでも どこまでも』(作詞:佐々木ひろし、作曲:かまやつひろし)か。



やよいのお手伝いさんの巻

038

(月刊少年チャンピオン 1976年3月号)

"Yayoi no otetsudai-san (meaning : Yayoi the maid)"

Yayoi finds a want ad of maid, goes to the spot. She knows a stingy old man is an advertiser of it, and he seems have a bad reputation as a neighbor. Yayoi makes up her mind to work hard honestly at there.

 お手伝いの募集の広告を見、やよいが行ってみたらそこは大きな家だった。主の男はケチな老人で、近所でもかなり評判が悪いと分かる。やよいはそれでも働くことに決め、誠実に努力するのだったが。



やよいのウエートレスの巻

039

(月刊少年チャンピオン 1976年4月号)

"Yayoi no wehtores (meaning : Yayoi the waitress)"

Shinji has found a job for Yayoi. It seems pay her well, so she goes to the spot. But it comes to light that the place of work is a strange snack bar. She becomes have to work there ...

 真二が、やよいの働き口を探してきた。給料はいいようなので行ってみたら、「スナック不気味」という珍妙な店が仕事場。結局そこで働かざるを得なくなり、現れた客たちは……。

*ややこしい性格のキャラクターがゲスト出演し、そのため入り組んだ展開になっている。結末まで意外な事続きで楽しい。
(このあと、月刊少年チャンピオン 1976年5月号に『屋台でもうけよう!!の巻』が発表されているが、単行本未収録のようだ。)



やよいの家庭教師の巻

040

(月刊少年チャンピオン 1976年6月号)

"Yayoi no katei-kyohshi (meaning : Yayoi the tutor)"

Yayoi teaches Goroh as a practice of her part-time job. She goes the spot and finds a boy hard to teach is her pupil ...

 五郎の勉強をみてやっている、やよい。今日から家庭教師のバイトがあるから練習してみているのだった。しかし現場へ行ってみたら、えらく手ごわそうな少年が生徒で……。

*どんな場面でも、やよいのスカートの中、下着までは見えないよう作画されている事がうかがえる。作者はヒロインを本当に大切に育てていたのだろうと思える。



やよいの花屋さんの巻

041

(月刊少年チャンピオン 1976年7月号)

"Yayoi no hanaya-san (meaning : Yayoi the florist)"

Yayoi makes a flower bed and takes care of it. She plans to sell flowers for supplement of housekeeping. Shinji and Goroh cooperate with her. At last they open a very small store.

 庭に花壇を作り、その手入れをしているやよい。花を売って生活費にするという計画なのだった。真二と五郎の協力も得られ、小さな店を開く事が実現したけれど。

*SFとファンタジーが入っている回。優しいおとぎ話ふうにまとまっており、少女マンガ雑誌でもそのまま掲載できそうな雰囲気の一品。
(このあと、月刊少年チャンピオン 1976年8月号に『海のアルバイトの巻』が発表されているが、単行本未録のようだ。)



古本屋開業の巻

042

(月刊少年チャンピオン 1976年9月号)

"Furuhon-ya kaigyoh (meaning : Opening a used bookstore)"

Shinji shoplifts at a bookstore, besides he has Goroh to help it. After all they are arrested. Yayoi gets angry with them very much, doesn't give them a meal as a punishment.

 真二が書店で万引をしでかし、そのうえ五郎にまで手伝わせる。結局バレて捕まったが、やよいはひどく怒って2人とも、
「ごはんぬき!」
の刑に処せられる。しかし騒動はこれでおさまらなかった。

*(注:以下は単なる思い出です)
 沖由佳雄さんは古本屋街めぐりがお好きだったのか、神田(かんだ、東京都千代田区にある地名)まで何度かご一緒させて戴いたことがあります。お手伝いのために僕が無気力プロへ出向いた時でしたでしょうか、まだ(原稿の制作に取り掛かる)夜まではだいぶ時間があったので、2人で出かけました。すると、いわゆる「ゾッキ本」扱いになっていたのか、たしか複数の古本屋の店頭に『LET'S GO WITH HASTY』が箱入り状態で積まれ、売られていたのです。
 沖さんと僕は大泉学園の無気力プロへと帰り、そこで机に向かっておられた吾妻先生に、沖さんが苦笑しつつ報告されました、
「ヘイスティがすごく沢山ありましたよ……」
 この時僕はまだ学生でいつもカネが無く、しかも勉強は大キライだったので、いかに吾妻先生が挿絵を描いておられるとはいえ英語の参考書を買うのはイヤだ! と思い、手にはとってみたものの、結局買わずに帰ってきたのでした。
 あれから30年ほど過ぎた今、メチャクチャに後悔してます……。
 書籍だけは、たとえどんなに貧しくても、買える時にケチしないで買っておくのがよろしいようで。とほほ。



農場アルバイトの巻

043

(月刊少年チャンピオン 1976年10月号)

"Nohjyoh arubaito (meaning : A part-time job of a farm)"

Yayoi, Shinji and Goroh work at a farm. At first sight it is mild, but in fact, the job is hard.

 やよい・真二・五郎の3人は、農場へアルバイトに来ている。
「けっこーたいへんな仕事だわい」
と真二がこぼすぐらい、見かけののどかさとは違ってきびしい労働だった。

*北海道の出身である作者の実経験が生かされているのか、いろいろ描写が細かい。「がんばんべー」という台詞は、栄養ドリンクのTVのCMで使われ、流行した方言を引用しているものと思われる。



モデルはつらいの巻

044

(月刊少年チャンピオン 1976年11月号)

"Moderu wa tsurai (meaning : Model is painful)"

The author is troubled. But the publishing business is cold-hearted. On the other hand, Shinji takes a photograph of Yayoi ...

 苦悩する作者がこちらを振り向くと、いささか「いっちゃってる」目つき(?)なのだった。しかし非情なのが出版界。とにもかくにも話が始まってみると、なぜか真二がカメラを構え、やよいを撮影しているのだが……?

*「毎日毎日僕らは鉄板の上新聞」というのは、流行した童謡『およげ!たいやきくん』の歌詞のもじりらしい。真二の台詞にある「アグネス・ラム」(Agnes Lum)はハワイ出身の女性タレントで、当時大変有名だった。



正義のガードマンの巻

045

(月刊少年チャンピオン 1976年12月号)

"Seigi no gardman (meaning : A guard of justice)"

When Shinji watches TV at his house, Goroh says that he is hungry. They go to a department store where Yayoi works at, to beg her for money.

 家で真二がTVを観ていると、
「にーたん おなかすいたよ」
と五郎がうったえる。2人は、やよいが勤めているデパートへ出向き、カネをもらおうとする。だがそこで、意外な運命が真二を待っていた。



スケートツアーの巻

046

(月刊少年チャンピオン 1977年1月号)

"Sukehto-tsuare (meaning : A skating tour)"

Yayoi warks as a guide in a bus of a skating tour. Shinji and Goroh happen to be in it. Somehow Shinji loves a married woman who has joined the tour ...

 アズマ観光のスケートツアーで、バスガイドをつとめる、やよい。しかしそのバスには、散歩していたという真二と五郎も乗り込んでいた。なぜか真二は、乗り合わせた若い人妻に横恋慕してしまい……。

*山梨県富士吉田市にはこの頃から既に大きなスケートリンクが実在したようで、もしかするとそこがモデルになったのかも知れない?
(このあと月刊少年チャンピオン 1977年2月号に『きょうだい仲良くアルバイトの巻』が掲載されたが、単行本未収録のようだ。)



高校五年生の巻

047

(月刊少年チャンピオン 1977年3月号)

"Kohkoh-gonenseh (meaning : A high school student in the fifth)"

Shinji lies on a corridor and reads a book at school. At last he succeeds in peep into a skirt of a girl student, but Yayoi appears and scolds him. To tell the truth, she received a summons from the high school. It seems possible that shinji repeats the same grade ...

 学校。その廊下では、真二が寝そべって本を読んでいる。ねばりにねばって、女生徒のスカートの中を覗くのに成功するが、突然現れたやよいに叱られる。
「てめー 何の用だ」
と真二がたずねてみれば、
「先生から呼び出しうけたのよ」
という返事。どうも真二は落第しそうであるらしく……。

*真二が高校生である事が分かる回。「五年生」という点からすると彼は19歳くらいか?



お兄ちゃんは天才の巻

048

(月刊少年チャンピオン 1977年4月号)

"Onii-chan wa tensai (meaning : My elder brother is a genius)"

Shinji tries to sell a collection of his poems in front of a station. Not long afterward, he thinks of an idea to make money by painting other's portrait.

 駅前に立っている真二。彼は首から札をさげており、それには、
「わたしの詩 かって下さい」
とある。自作の詩集を路上で売っているようだ。あれこれ試したあげく今度は、似顔絵かきのバイトをやろうと考えだした。やよいは心配になり……。

*駅など、人の集まる所で自作の詩集を売る人や、似顔絵を描く人の姿は、1970年代だと実際に見られたようなので、真二はそれらの人々のマネを思いついたのかも知れない。
(単行本『ちびママちゃん』第2巻は、ここで終わっている。最終回までを収録した形で単行本が再販されることを、そして、やよいたちの幸福を、願わずにはおれない。この後に続く単行本未収録のエピソードは以下のとおり。)

『先生が親がわり!?の巻』(月刊少年チャンピオン 1977年7月号)
『海はまねくよの巻』(月刊少年チャンピオン 1977年8月号)
『兄貴は二枚目!?の巻』(月刊少年チャンピオン 1977年9月号)
『父帰るの巻』(月刊少年チャンピオン 1977年11月号)
『貧乏よさらばの巻』(月刊少年チャンピオン 1977年12月号)



兄貴は二枚目!?の巻



(月刊少年チャンピオン 1977年9月号)

"Aniki wa nimai-me !? (meaning : My elder brother is a handsome man !?)"

Shinji takes to his bed with a cold. Then a beautiful woman inquires after him. She seems his sweetheart, and intends to marry him. Yayoi is surprised and feels uneasy their future ...

 真二は夏風邪にやられ、寝込んでしまう。やよいが看病していると、美女がお見舞いに訪ねて来た。ゆみ子と名乗る彼女は真二の恋人で、結婚するつもりらしい。やよいは驚くと同時に、ふたりの将来が心配になって……。

*この回は幸運にも、書籍『21世紀のための吾妻ひでお』(河出書房新社 2012年1月30日初版発行)に収録された。ファンにとって非常にありがたい事ではある。





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