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10 スクラップ学園

(まえがき)

"Scrap school"
Mia

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この作品は2006年5月25日に秋田書店のコンビニ本で再販されるらしい(「スクラップ学園天真爛漫編」 300円)。絶好の機会だと思うので、当ブログでも本日より取り上げることにした。
(2007年11月22日付記:第3巻の内容紹介を開始しました)

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さて……。吾妻マンガにはしばしば女子高生が登場し、なかには主役をつとめている者もいる。おそらく最も有名なのはTVアニメ化され海外でも放送された”ななこ”なのではあるまいか。この「スクラップ学園」の主人公であるミャアちゃん(猫山美亜)は、いうなればその対極に位置づけられるキャラクターではないかと思う。
 ななこは性善説の見本みたいな少女であり、それがいわゆる”天然ボケ”となって発せられているように感じられる。いっぽうミャアはクール・ビューティーで、常に度胸がすわっている(時にふてぶてしく小生意気ですらある)という印象がある。とはいえ、この二人には共通点も見られるようだ。それは「何があっても動じない」こと、すなわち「どれほどヘンなものに遭遇しようと、どれほど困難な状況に陥ろうと、どうにか受け止めて対応してしまう」という点である。そういう彼女たちなればこそ毎回物語は進展してゆくわけで、二人とも流石は主人公だ。
 ミャアちゃんの何となく女王様型な性格特性はしかし、第1話の最初から完成した状態で描かれているわけではなく、連載が続くうち徐々に形成されていったように感じられる。この点については今後このサイトで話してゆけるだろう。

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 最初に出版された単行本(秋田漫画文庫)は3巻で完結しているのだが、残念ながら最終回までを収録していない。画像はそのカバー。これを見ると第1巻と第3巻ではヒロインの容姿がだいぶ写実的に変化してきている事が分かる。



ミャアちゃん ラブ ワールド

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(秋田書店 BEST HIT SERIES 1983年7月30日初版発行)

 この書籍は、秋田漫画文庫版の単行本第3巻が発売(1983年6月20日初版)され「完結」となった後、それをサポートする形で(?)世に出たようだ(両者があれば当時の最終話まで、全部の話を読むことが出来るようになっている)。だから位置づけとしては単行本"第4巻"と言えるかも。マンガはほぼ原稿の原寸大で収録されているものと思われ、描線の抑揚など作者の仕事の細部までをじっくり見ることが可能になっている。
 すごいのはカラーページで、単行本のカバーイラスト、連載時には白黒だったトビラに彩色したもののほか、多数の描き下ろし作品が収録されている。SF小説の古典『火星のプリンセス』のコスプレもあるが、この仮装は『やけくそ天使』でもヒロインの阿素湖素子が扮しており、作者好みの画題なのだろうか。さまざまな肖像画のなかにはヌードも何葉か(『ミャアちゃん十歳のヌード』などというのまで)あり、このヒロインに恋した読者に幸福な時間をプレゼントしてくれる図書となっている。『娼女美亜』というコーナーの作者名は「荒木ひでお」だが、これは写真家の荒木経惟(あらきのぶよし、『ガロ』に作品を連載していたこともある)を模しているものと思われる。画像周囲の余白部分を真黒にし、わざとビニール本(当時に出回っていた泡沫(ほうまつ)出版物で、B級のヌード写真集)みたいにしたレイアウトがあったり(『けだるい午後』)、あえて"上品でお行儀の良い"ことへ反抗するような演出が面白い。
 表紙にもあるとおり『ミャアちゃん官能写真集』が収録されているが、そのトビラには以下のような文言がある。
Part.1の次がなぜPart.3かというと、Part.1のあとがきで、Part.2は出さないと明言してしまったからなのです。え~んえん。」
 なお『ミャアちゃん官能写真集 Part.3』のおくづけには「アシスタント・カメラマン」として、みぞろぎ孝・沖由佳雄の両氏のほかにも風野朱美・早坂未紀・このま和歩・うのまさみ・計奈恵ら、総計7名の諸氏の名前が記されている。
 『ミャアちゃんの一日』というコーナーではヒロインへのインタビューがあるが、以下のようなデータも併記されている。「猫山美亜 S×・4・26生 すくらっぷ学園高校2年 身長155cm 体重43kg B・W・H少々 現住所 東京都犬猫区おけら町1-2-3」。
 一見、放埓(ほうらつ)無軌道なようでいて、決して誰のものにもならないヒロインの美亜は、自由というものが少女の姿をとって僕らの前に現れているのかも知れない……。



も~疲れるわね~

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(プレイコミック 1980年1月24日号)
"Oh tiresome"

A new school term has started. Boys and girls go lively to school. But for some reason, a schoolgirl sits down on a roadside, and looks a sky. A teacher becomes aware of her and speaks to. The schoolgirl by the name of Mia Nekoyama -- she asks him to call her with her nickname "Myah-chan" -- answers,
"I walked after a long time, it's cold, moreover a new school term, so that I'm tired mentally and physically".
Then there goes the bell of the school. The teacher carrys unwillingly the schoolgirl on his back and runs...

 今日から新学期。男女の生徒たちが溌剌(はつらつ)と登校して行く。が、ひとりの女学生はなぜか道路わきの地面に腰を下ろし、視線を空へ投げているのだった。気づいた教師が声をかけたら、「久しぶりに歩いたし寒いし学校だしで精神的肉体的疲労が蓄積してるの」という返事。そこへ学校のチャイムが鳴る。やむなく教師は彼女を背負って走るのだが……。

*のっけから「その他大勢」の普通な人たちとはちょっと違う、ミャアちゃんこと猫山美亜の登場である。新たなスタート地点に立てばたいていの若者は夢や希望、あるいは不安などを持っていそうなものだが、新1年生にしてこの有様なのだから教師ならずとも驚かされるだろう。が、これは終盤になってちょっと”種明かし”があり、それが結末への布石にもなっている。……それにしてもここの生徒たちは揃いも揃って、読者が予想もしないような行動に出るようだ(読めば分かります)。だから彼女の破天荒な言動も何だか納得させられてしまって、種明かしされるまで或る事情に気づきにくいのだろうか。
 教師の台詞に「新学期」とあるのは、「3学期」の意味かと思われる(『あはっ 三月ウサギ』では春休みの後、4月から新学期が始まっているらしいくだりがある)。はたしてミャアちゃんの1学期と2学期はどのような日々であったのやら? このへん、読者の空想にゆだねられている謎ではある。



コタツ王国

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(プレイコミック 1982年12月9日号)
"The Kotatsu Kingdom"

Our heroine, Myah-chan, attends admirably school in spite of that she has a slight cold.
"I brought a private heating".
She says so, takes out an electric "kotatsu" from her school bag, equips it with her desk and use. A teacher gives her a scolding, but he is serued a tea and to be coaxed. At last, all member of her class follow suit. A teacher of physical education trys to stop this in anger.
(kotatsu : a Japanese-style heating furniture)

 風邪をひいたミャアちゃんであるが健気(けなげ)にもちゃんと登校している。「自前の暖房 持ってきた」と語る彼女は、学生鞄の中から電気コタツを引っ張り出し、生徒机に取り付けて使い始める。叱っていた教師もお茶を出されて誘い込まれ、ついにクラス全員が同じ事をやりだした。体育教師はこれを怒ってやめさせようとするのだが。

*いきなり、ほぼ3年後に話が跳(と)んでいる。単行本出版にあたって原稿の収録順序に編集が加えられたようなのだが理由は不明。
 どうやったら学生鞄に電気コタツの部品が入るのだ、などと苦情を言うのは虚しい抵抗で、このあと遙かに無茶苦茶な方向へと物語は暴走してゆく。ミャアちゃんも無敵なら、作者の自由奔放な空想力もまた、なにものにも止(とど)められはしない。ごく普通な学園ギャグの枠内に収まらないのがこの「スクラップ学園」なのであった。
(2006.12.8.付記:このお話はアイザック・アシモフ(Isaac Asimov)のSF小説『夜きたる』(Nightfall)のパロディになっているそうだ。)



焚火インヘルノ

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(プレイコミック 1982年12月23日号)
"The bonfire inferno"

Myah-chan makes a fire by herself at a vast park. But she cannot make it, what is worse a lustful painter (?) comes and disturbs her. Then a man likes an expert in making a fire, passes by. He made it, but all kinds of people turn out as if they were drawn by the fire...

 初冬の広大な公園でひとり、焚き火をしているミャアちゃん。が、うまく火は燃えないし、エロ趣味な絵描き(?)が来たりと邪魔も入る。そこへ通りかかったのは焚き火の達人のようなおっさんだった。果たして焚き火は見事成功したものの、次々といろんな人たちが火につられたように集まってきて……。

*ちょっと珍妙な人物がゲストで登場し、そのせいで、平凡な出来事になるはずだったものがイカれた展開になってゆく。それでも話がまとまっているのはクールなミャアちゃんが主人公として手綱をつかんでいるからなのだろう(無言だが最後のコマで”なぜ焚き火をしようとしていたか?”の種明かしが描かれている。どんな大騒動が起きようとも、これは主人公、ミャアちゃんのお話なのであった)。1974年のアメリカ映画『タワーリング・インフェルノ』 (The Towering Inferno)のパロディとおぼしき部分がある。果てしなく広がってゆく幻想は、やはりSF的と言うべきなのであろうか。



注文の多い兎鮨

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(プレイコミック 1983年1月13日号)
"The Hare Sushi that takes many orders"

In the New Year holidays, Myah-chan dresses up and calls on a house of a teacher in charge (?). The teacher loses control of himself by a beauty of Myah-chan, but as soon as receives "Otoshidama" (a New Year's present of money) she leaves. Myah-chan walks about because she regards this time as an opportunity once in a year for earning money. She is famished and to be on the point of losing her way on a mountain path. But she happened to finds a sushi shop that is run by a big hare. Myah-chan drops in that shop with great joy...
(sushi : a Japanese-style dish that is made by vinegared fish and rice.)

 正月。晴れ着に身を包んだミャアちゃんは年始の挨拶に担任(?らしい)の自宅を訪問。教師さえ興奮して理性を失いかけるミャアちゃんの美しさだったが、お年玉をもらうや疾風(はやて)のように去って行く。年に一度の稼ぎ時とばかり歩き回る彼女はしかし、空腹になり山道で遭難しかけるのであった。が、ふと見れば大きなウサギが寿司屋を開いているではないか。ミャアちゃんは喜んで立ち寄るのだったが……。

*出だしは現実的だったのに、いつの間にかとんでもない世界へ入ってしまっている。こうした境界線の曖昧さは吾妻マンガの特徴のひとつだろうと思う。ウサギが何だって寿司屋をやっているのやら、もうこの段階でじゅうぶん奇妙奇天烈だろうに、そのウサギが人間語を解し、背丈も人間並みなのだからこれはもう大変な事であろうわけで、だのにそれらに全くお構い無しで平然としておりあまつさえそこで食事しようとあっさり飛び込むミャアちゃんも凄い……。しかしそんなミャアちゃんに危機が迫るという展開なので、ファンは生唾を飲んで読み進むよう引き込まれるのだろう。



煩悩温泉

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(プレイコミック 1983年1月27日号)
"The desires hot spring"

3 girls, Myah-chan and her friends, are invited to a cottage of Nakajima (He seems a classmate of them). They arrives at there only to find an open-air bath and a log cabin. Nakajima says,
"We have an another cottage with a skiing ground, a hotel, a discotheque and boys. But Myah-chan prefered to a rustic hot springs resort area"
so that they are invited to here.
Friends are disappointed, on the contrary Myah-chan dives into a bath with great pleasure, and makes friends with a monkey in there. Then a mystery caller intrudes...

 ミャアちゃんは友人たちと、女3名で中島君(級友らしい)の別荘へ招待された。しかし着いてみたら野天風呂と丸木小屋があるだけ。「スキー場 ホテル ディスコ 男の子付き 別荘もあるんだけど ミャアちゃんはひなびた温泉が好きだっていうから」こちらになったらしい。がっくりする友人たち。対照的に大喜びのミャアちゃんは風呂へ飛び込み、そこにいた野猿と仲良くなる。が、なんとも不可解な客が闖入(ちんにゅう)して……。

*娘ざかりともなれば異性に関心を持ってしかるべきだろうに、そんなもん面白くも何ともないと本気で考えているらしいミャアちゃんである。この子にとって男なぞは猿未満の存在なのかと思うと男性読者は立つ瀬が無いが、気疲れするような女くささも彼女には無くさっぱりしているのが爽快だ。ミャアちゃんの人気は、読者に媚びてしなを作るような真似を一切しない、そんな点にこそ理由の一つがあるのかも知れない。



芸者わるつ

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(プレイコミック 1983年2月10日号)
"Geisha waltz"

Because of having no money to get on a bus to go back, Myah-chan is sold by her "friends". A monster giant buys her and resells to an old woman in exchange for 10 Japanese radishes. Myah-chan is given a kimono (Japanese clothes) and to be sent to a banquet as a made-up geisha girl. But all attendance of that are not human...

 帰りのバス代が無くなったという理由で、”友人”たちから売られてしまったミャアちゃん。買主である妖怪みたいな巨人は、大根10本と引き換えで彼女を老婆へと転売した。和服をあてがわれたミャアちゃんは俄(にわ)か造りの芸者となりさっそくお座敷に送り出されるのだが、その宴席、客が人間ではなく……。

*この娘は”単なる遊び仲間”と”友人”を混同している、などと青少年問題の視点で心配するのはどうやらミャアちゃんに限って余計な御世話らしい。(この話は前回からの続きなので)”友人”たちにしてみれば、ミャアちゃんに別荘でのバカンスをふいにされたゆえのお仕置きというつもりだったのかも知れない。が、そこは器の違い。結局ミャアちゃんの無敵ぶりが存分に発揮されるだけなのである。まいった。



あたし寒いのってやなの

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(プレイコミック 1980年2月14日号)
"I hate cold"

The cold weather of this winter is very hard even in a classroom. Myah-chan thinks out a plan, but a teacher gives her a scolding because her plan is too eccentric. In this way, a common and educational plan to be put into practice instead of it. But an unexpected effect comes out...

 冬の寒さが教室にいてもこたえる。ミャアちゃんは一計を案じてこれに立ち向かうが、あまりにも奇抜な方法だったため教師から叱られてしまう。かくて、定番かつ教育的だろう方法が代わりにとられるのであった。しかし、思いもよらぬ効果が発現して……。

*元はと言えばミャアちゃんが、(主人公にふさわしく)騒動のきっかけを作ってしまうのだが、その性格ゆえ渦中には入らずに傍観者の立場となる。これで大丈夫なのかなと戸惑いつつ読み進むと、やがて1対1で珍現象に立ち向かうという行動に出ている(巻き込まれるのではなく、自身による選択の結果として)。何もしたがらないようでいて、しっかり活躍しているのは主人公の運命というべきか?
 ミャアちゃんの自宅(自室)が描かれているけれど、彼女のご両親やご家族はどこで何をしているのやら、このへん、ちょっと空想させられる謎になっている。
 オチで、大流行したあるボクシング劇画(1968~1973年)のパロディらしい台詞が見られ、ひょっとすると全編がちょっとした風刺(当時の流行を逆手に取っている)が根底にあるのかもと感じたが、どうであろうか。



妖精だってしちゃうもん

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(プレイコミック 1980年2月28日号)
"I'll to be even a fairy"

"Why I was in the mood to have a date with such guy ?"
Myah-chan herself doesn't know why, today she takes a walk with a boy who is plain-looking. But there are a dozen of men who are acquainted with her in a town, so the boy asked her to date, leaves with crying. Myah-chan is left all alone at a coffee shop, but she has no money. She trys to run away without paying the bill by a feat, and runs into a wealthy gentleman. He seems to concludes in the full belief that Myah-chan is a fairy...

 「なんでこんなやつとデートする気になったんだろ」とミャアちゃん自身にも分からないのだが、今日はさえない風貌の少年とお散歩である。しかし街へ出たらミャアちゃんと顔見知りの男たちが幾らでもいて、デート相手の少年は泣きながら帰ってしまった。無一文のミャアちゃんは独りで喫茶店に取り残されるが、早業で無銭飲食を解決しようと図り、金持ちの紳士に出会う。この男性、どうやらミャアちゃんが妖精に見えるらしく……。

*人数で言えば全く男に不自由していないらしいミャアちゃんである。今回彼女と関わるのは文学的(?)な”優しい(少なくとも粗暴ではない)”男たちばかりなのだが、変な方角へ道を踏み外しているようだ。男どもの頼りない点に呆(あき)れかえりつつも哀れみを差し伸べているあたり、ミャアちゃんの可愛い善良さがうかがえる。



なるほど これがアル中さん

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(プレイコミック 1980年3月13日号)
"I see, this is Mr.Alcoholic"

Myah-chan was found out by a teacher when she was smoking at a rest room. She is taken to a counseling room for a problem student. But a teacher who serves there has trouble with himself. It seems because of tipsiness that he sees a hallucination -- many heads roll down on a roof -- out of a window...

 トイレでの喫煙を教師に見つかり、校内にあるカウンセラー室へ連れて行かれるミャアちゃん。そこは問題を抱えた生徒が送り込まれる部屋だった。が、そこに詰めている担当の先生自身も問題を抱えている。酒のせいか窓の外、屋根の斜面を、たくさんの首が転がり落ちてゆくという幻覚が見えるのだが……。

*曲った状態にある若者を救おうとする大人がまず自分を救わねばどうしようもない、といった状況は現実で枚挙に暇が無さそうで、苦笑させられる。
 幻覚の描写は興味深い。首は、誰であるかを識別できる個性が最もはっきりわかる部分であろうに、それらがまるで雨水のように屋根から落ちて行くとすれば、やがては殆どが下水に流れて失われる他なさそうな気がする。教師の、人生(首の大部分は老いている、つまりは既に長く生きてきた結果とも見える)に対する虚無感が投影された光景なのだろうか。そして彼が最後になす選択は、彼に幸福と解決をもたらしたのだろうか?
 他人に何を言われようが全く影響を受けず、自身の選んだ事を飄々(ひょうひょう)と続けているミャアちゃんの自我はかなり安定しているようだ。このマンガで法を遵守(じゅんしゅ)する道徳を云々するのは、けだし場違いだろう。



くだらなクラブ

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(プレイコミック 1980年3月27日号)
"worthless-club"

"I'll join a club of something for killing time"
Myah-chan decided so, but only strange clubs invite her. She finds a poster of "Masuiyama-club" and thinks,
"This seems interesting since it's worthless"
Then, its presidential schoolgirl "Lala" comes out.
Myah-chan and Lala are mutually aware of that they are not ordinary person, so establish new club in union...
(Masuiyama : This is a name of a Japanese famous sumo wrestler. Though heroine and Lala doesn't make a fan club of him but an incomprehensible one.)

 「ヒマだからなんかクラブでも入ろう」と思ったミャアちゃん。しかし勧誘してくるのは珍妙な所ばかり。「増位山同好会」の貼り紙を発見し「くだらなくておもしろそう」と考えたら、会長である女生徒の”らら”が現れた。お互いにタダモノではないと認識し合ったミャアちゃん達は、一致協力して新しい会をたちあげる……。

*出会った逸材(?)どうしの二人なのだが、増位山のファン活動を始めるのかと思いきや、彼女らが開始するのは「新しい会をつくる会」とでも言うべきものなのだから話がややこしくなる。ともあれ、既成のありきたりな物事には関心が無く常に新しいものを追求するミャアちゃんであった。
 「らら」は一度見てしまったら忘れられないようなキャラクターだが、なぜかこのあと見かけないようだ(それにしても彼女がくわえているのは煙草か、楊枝か、線香か???)。



あはっ 三月ウサギ

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(プレイコミック 1980年4月10日号)
"Aha, rabbit of March"

It's spring vacation. There are 3 girls, Myah-chan and her friends, in front of a porno movie theater. Myah-chan says scornfully,
"Isn't it worthless ?"
but her friends eagar to watch films and push a duty of buying tickets to her. Unluckily, their teacher comes along, they are found and spoken to. Though to their surprise, he says...

 春休み。友人たちと、女3人でポルノ映画館の前にいるミャアちゃん。映画を観たがる友人たちに対し「くだらないんじゃないの」と軽蔑調のミャアちゃんなのだが、キップを買う役目を押し付けられてしまう。まずい事にそこへ教師が通りかかって発見され、一同は声をかけられた。ところが何と、教師の言うことには……。

*”反面教師”を地でゆくような男が登場する。そのあまりにもイカれたていたらくにミャアちゃんもあきれてしまい、異常な世界と読者の世界との間をつなぐ案内役に甘んじているようだ。
 「倫社の月見先生」ということだが倫社(りんしゃ)とは「倫理・社会」の略で、当時は高校の必須科目だった(のち「現代社会」と名称変更したらしい)。ありとあらゆる思想を学んだあげく頭が壊れてしまったかに見える彼のもとへ、とうとう……という展開は暗示的で、皮肉っぽい笑いを誘う。1980年ころ、教師を主人公にしたTVドラマがあれこれ放送されていたので、そうした流行を裏返したギャグであろうか。



宴会おじさん努力よ!

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(プレイコミック 1980年4月24日号)
"Endeavor, Mr.banquet !"

Spring is in full swing. Myah-chan looks cherry brossoms are at their best out of the train's window and admires. All of a sudden, a middle age man who sits right next her says,
"I can't stand it any longer !"
He opens his baggage and begins a banquet by himself in the train. He offers whoever liquor but nobody takes him seriously.
"I'll keep company with ya"
Myah-chan offers to cooperate with him. They get off the train at the station where the cherry blossoms are in full bloom...

 春。ミャアちゃんは電車の窓から外を見て、咲き誇る桜に感心する。と、突然、隣に座っていた中年男が「もーがまんできない」と荷物を広げ、車内でひとり、宴会を開始した。男は周囲の人々に酒をすすめるのだが、誰からも相手にしてもらえない。「あたしがつきあったげるよ」とミャアちゃんはおじさんに協力を申し出る。かくて二人は桜が満開の所に着いて電車を降りるのだが……。

*宴会などへの参加を強制されると、酔っ払いの独り善がりを押し付けられるようで鬱陶しい場合もあろうが、この宴会おじさんに悪気は無いようである(だからこそミャアちゃんも、彼につきあってやる選択をしたのではあるまいか)。いかにも昭和の日本人らしい男なのだが、そんな彼はサングラスに「ウォークマン(1979年、ソニーから発売された)」の若者たちに黙殺される。作者は、日本人の特徴が変わりつつあるのではと鋭敏に察知し、時代に取り残され笑い者になってゆく人物像をキャラクターへと昇華させ描いているのかも知れない。ちょっと哀愁のある1本だ。



わーい根茎

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(プレイコミック 1980年5月8日号)
"Yoo-hoo root crop"

Today all students of class take offcampus lessons. A teacher instructs them to sketch freely, but pupils have their own way. Myah-chan sketches earnestly, but draws opposite scene that before her eyes. Then bamboo sprouts are found out here and there by students. Myah-chan seeks for it, too. But a root crop she found is...

 きょうはクラス全員で校外学習。自由にスケッチをするよう教師は指示を出すのだが、各人がまるで好き勝手な行動を開始する。ミャアちゃんは真面目に絵を描いているけれども、眼前の自然とは正反対な画題で描くのだった。折りしも生徒達は、あちこちに竹の子があるのを発見する。ミャアちゃんも周囲に目をやって探すが、彼女の見つけたそれは……。

*現実に即した自然科学から出発し、びっくり仰天な光景へと物語が進むあたりSF的な回と言えそうに思う。
 最後はちょっとブラックユーモアになっている。「オリジナリティーなんてしょせん世間に評価されない」といった寓意であろうか?
 教師(担任?)の教えている科目が何なのか、まだ良く分からない。『あたし寒いのってやなの』で見ると美術教師ではないように思えるのだが、ホームルームなどを利用し、独自の判断で屋外スケッチをさせたと考えるのが妥当か?



おたく幸運のカメウサギ?

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(プレイコミック 1980年5月22日号)
"Are ya fortunate tortoise-rabbit ?"

Myah-chan was asked to do the shopping when she was going to go out. Although she goes to a butcher, the shop had closed up. Then a strange creature that was sold at a street stall clings to an ankle of Myah-chan.
"It is too troublesome to look for other butcher"
She thought so and bought this mysterious creature...

 外出するならついでにと買い物を頼まれたミャアちゃん。しかし行ってみたら肉屋は店をたたんでいた。その時、露店で売られていた奇妙な動物がミャアちゃんの足首にしがみつく。「肉屋さがすのめんどうだ」という理由で、ミャアちゃんはこの謎の生物を買ったのだったが……。

*大胆な切り捨てと意図的であろう隠蔽(いんぺい)とにより描かれていない部分が、かえって読者の想像を誘う。ミャアちゃんの母親(?)は声だけで姿を見せないし、珍生物の正体が何なのか説明は無い。
 おとぎ話ならば善玉(カメ)と悪玉(ウサギ)で対立しそうな両者を合成したようなキャラクターは、外見だけだと幸福をよぶのか不幸を招くのか予測しにくいだろう、といった効果を狙ったのだろうか?



図書室ってやっぱ勉強になるわ

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(プレイコミック 1980年6月12日号)
"A library will be good for me after all"

Myah-chan is made herself to go library with a friend to keep her compony. But the facts is that there is used for couples. To make matters worse, a schoolboy of a library monitor, is abnormal about his affection to books. Myah-chan trys asking books, then he picks out whatever she requested. But a things that was unexpected even him breakes out...

 友人が図書室へ行くのに付き合わされるミャアちゃん。しかしそこはアベックたちの為の部屋として使われているのが実情だった。加えて問題なのは図書委員の少年で、書物への愛情が深いのは良いとしてもやや常軌を逸している。ミャアちゃんが試してみると少年はどんな本でも取り出して見せるのだが、そんな彼でさえ予測し得なかった異変が起きて……。

*今回ミャアちゃんは、”なぜこのような現象が起きているか”の謎を解き明かす役割を担っている。そして彼女のそうした言動により、図書委員の少年の運命が転がってゆくという展開。つわものの読書人たちは自分の分身を彼の中に見、苦笑しつつ、仮想的にミャアちゃんと行動を共にするのを楽しめるのではあるまいか。



自販機さんも ごくろうさん

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(プレイコミック 1980年6月26日号)
"Thank you, and vending machine"

Myah-chan runs under the eaves of a shop that is already closed for takes shelter from the rain.Then a vending machine speakes to her. It seems because that machine has a computer within him, but all magazines he deals in are warped porn... At last Myah-chan has an argument with him and trys to destroy. A young man who rides on a bicycle passes by and dissuades her from destruction. He is a degenerate and looks for some porn magazine. Myah -chan gets to know "legendary vending machine No.13" from a dialogue between the man and the vending machine...

 ミャアちゃんは雨宿りのため、シャッターがおりて閉まっている店の軒先へ駆け込む。すると、自動販売機が話しかけてきた。コンピューターがついているかららしいけれど、しかし売っているのが屈折した趣味のポルノ雑誌とあっては……。とうとう口喧嘩になって、ミャアちゃんは販売機を破壊しようとする。それを、自転車で通りかかった若者が止めたのだが、彼は目当てのポルノ雑誌を探している変質者だった。ミャアちゃんは、彼と自動販売機との対話から、「幻の13号自販機」の存在を知る……。

*これはちょっと説明が必要かも知れない。
 1980年当時、24時間営業しているコンビニ等はまだ日本に無く、どんな店も夜9時頃にはみんな閉まって(ミャアちゃんが出歩いていたのはこのあたりだろうか)、やがて夜中ともなれば殆ど誰もが眠っていた。で、そうした時間帯に、自販機であれば、誰にも見つからずに買えるであろうというわけか”エロ雑誌専門の自販機”が出現し普及していたのである。
 自我を持った機械というのはSFの古典的なテーマではと思うのだが、それをエロ本自販機にあてはめてしまうあたり、吾妻マンガならではかも(?)。



く くら~

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(プレイコミック 1980年7月10日号)
"g, gloomyyyy"

In the middle of summer, Myah-chan comes into a shop and asks for a cup of shaved ice. The shop is crowded because some meetings hold in there. One of them, "gloomy adlescence club" seems to radiate something negative energy, so that all the members in the shop to be contaminated. Myah-chan fights against this situation and succeeds in rescue all. But there is a powerful enemy she cannot cleanse from gloom...

 真夏。酷暑にまいったミャアちゃんは氷イチゴを食べに店へ入る。中ではいろんな集まりが重なって混雑しているのだが、そのうちの1つに「暗い青春の会」というのがあった。そこからは負のエネルギーが放射されているようで、店内の全員がやられてゆく。ミャアちゃんはこれに立ち向かいみんなを救う事に成功するが、しかしどうやっても「暗さ」を拭えない強敵が1人いて……。

*1980年頃の日本社会には、「明るい」ことを好む流行があったようである。しかしこの「明るさ」には、逆のベクトルである「暗さ」をひどく恐れて排斥したがり必死になるという特徴が伴っていた。つまりは、影響を受ければたやすく失われてしまうような程度の質の「明るさ」だったようで、そもそもの根底に虚飾があったのかも知れない(ミャアちゃんはこれを”潜伏”と表現しており、世情の本質を見抜いているかに感ぜられるが、どうだろう?)。
 ミャアちゃんは「暗さ」と戦ってはいるが、そこに軽蔑や嫌悪は無いようで、如何にして励ますかを模索しているようである。彼女が1960年代末に見られた「暗さ」の流行(これはまた逆の極端へ走る傾向も見られたらしい)についてどれほど知っているか定かでないが、今回は徹底的な”戦うヒロイン”の役どころだ。



さまよってるなー

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(プレイコミック 1980年7月24日号)
"It strays"

For some reason students go to school in swimming suits. Myah-chan wonder and asks why. In fact, today is the start of the swimming lessons. But a swim pool is closed because of a water shortage, all students are discouraged. Then, Myah-chan sees unexpectedly a school grounds, there is a big pool at the center of the grounds...? She dives into it at once...

 なぜか水着姿で登校してくる生徒達。不思議に思ったミャアちゃんがたずねてみれば、今日は学校のプール開きなのだった。が、水不足のせいでプールは閉鎖、全員がっくり。ふと校庭へ目をやると、いつのまにか校庭のまん中に大きなプールがあるではないか? さっそく飛び込むミャアちゃんだが……。

*あっさり肌着だけになって泳ぎだすミャアちゃんは、よほど暑さに弱いのかも知れない(或いは制服の下は彼女も水着であったと考えるべきか?)。
 まるで無関係なコマが冗談で入っている、と思わせておいて実は……。この展開で一体どうやって解決するのだろう? と読者は気をもむのではあるまいか。お見事。



なるほど これがエコロジー

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(プレイコミック 1980年8月14日号)
"I see, this is the ecology"

Myah-chan makes plans to save shrewdly money in the summer vacation, but she is dismissed. While she hunts for a something easy part-time job, finds a help-wanted advertisement that says "rattrap laying : daily wages 10,000 yen". She applies for this because it seemed easy. An employer appears as if something magic, moreover he is very strange man who wears a coat in this middle of summer so that to be soaked in sweat...

 夏休みはガッチリおこづかいためよう、と計画して働くミャアちゃん。しかしクビになってしまった。ラクなバイトがないか探し求めていたら「ねずみ捕り日給一万」の募集広告を発見、ラクそうだと思って応募する。だが雇い主は奇術のように出現し、そのうえ真夏なのにコートを着込んで汗だくといういかにも怪しい人物で……。

*カネがあっても時間は無いのが社会人なら、時間があってもカネは無いのが学生というもの。ミャアちゃんのようにこれほど珍奇な経験はしないまでも、けだし読者は共感をおぼえつつ笑ってしまうだろう。



ほらほら異常気象

20

(プレイコミック 1980年8月28日号)
"Hey, look, abnormal weather"

"Hunt for nice boys". 3 girls go swimming in the sea. But there is nobody, besides it seems too cold to swim. A local old man says it because of abnormal weather. At last, an incredible thing drifts in the offing...

 「カックイイBF見つけようと」女3人で海水浴に来たミャアちゃんたち。しかし人っ子ひとりいないうえに、寒くて泳げそうにもない。地元の老人が言うには異常気象のしわざらしいのだが、とうとう沖のほうには信じられないようなものが流れついてきて……。

*異性を獲得するため必死の友人たち女生徒に比べ、およそ男に無関心なミャアちゃん。夏に寒さ、という正反対の要素を持ってくる事で描き出される幻想がセンス・オブ・ワンダーであるとすれば、ミャアちゃんの(”普通の女の子”とは正反対になるであろう)不可思議な雰囲気も、それだけでひとつの幻影になっているというべきか。



授業って感動の連続よ

21

(プレイコミック 1980年9月11日号)
"Continuation of impression is a lesson"

When the summer vacation has gone, Myah-chan goes to school only finds a schoolhouse has disappeared. According to a teacher,
"The schoolhouse seems to take a summer holiday for return home",
so that students have to sit down on school grounds and take lessons at there.
"Have a pain by pebbles moreover uniforms get dirty", therefore,
"Let give lessons at a coffee shop", Myah-chan proposes.
All pupils begin to drink and eat, the teacher finishes lesson in a panic and runs away. Pupils who have no money are left behind. But it was only an overture of a great uproar...

 夏休みも終わってミャアちゃんが登校すると、校舎は消失していた。教師いわく「学校のやつ夏休みをとって故郷へ帰ってしまったままらしい」とのことで、校庭に座り込んでの授業が始まる。「石コロで痛いし服はよごれる」から「喫茶店でやりましょう」とミャアちゃんが提案、生徒たちは全員賛成し飲み食いを開始する。慌てた教師は授業を終了して脱走し、後には金を持っていない生徒たちだけが残された。しかし全ては、ただの序曲にすぎなかったのである……。

*どうもミャアちゃん達は「1年B組」であるらしい。ここにちょっと謎があって、それは何かと言うと、第1話(1980年1月24日号)でミャアちゃんが「1年3組」だと語っている事なのだ。もし「1年3組」が本当だとすれば、この事件の時点での所属はおそらく「2年*組」となるのが普通だろう。今回は事情が事情(読めば分かります)なので、詐称(?)もしくは単なるグループの名称として「1年B組」としているのかも知れない。



天災! うーむ うっとーしい

22

(プレイコミック 1980年9月25日号)
"A natural disaster ! Ummm depressing"

When Myah-chan and her friend walk in a school, "2nd grade delinquent boy" bother them for pocket money. The girl gives readily up and pays small changes, but Myah-chan strikes him a mighty blow. The delinquent boy pulls Myah-chan into a secluded place. Myah-chan is in peril !?

 友人とふたりで校内を歩いていたミャアちゃんは、「二年生の不良」に金をせびられる。あっさり諦めて小銭を払う友人に対し、逆に一撃で相手をぶちのめすミャアちゃん。殴られた不良くんはミャアちゃんを物陰へ引っ張り込む、危うし!?

*ドタバタなのだけれど、吾妻マンガの特徴がよく出ている1品のように思われる。普通そうしたギャグといえば、意外性、大げさ、馬鹿馬鹿しさ、登場人物の間抜けさ・いじましさ等が笑いの対象として仕掛けられるのではあるまいか。ところが吾妻マンガではそういった要素より、”現実にはあり得ないような状況”が突然出現するといったところに主眼があるようなのだ。それは実写のコメディやお笑い番組ではまず絶対に不可能なもので、まさにマンガという手段でなかったら見られないような光景を読者は見せられる事になる。ここで、こうした作者の想像力の豊かさに感心し、楽しめるかどうか(これは、SFというやや特殊な分野に興味関心を持てるかどうか、といった岐路(きろ)に似ているだろうか?)で、吾妻マンガは読者を選び、また読者によって選ばれてしまう宿命をおっているのかも、と思うのだが、どうだろう?



氷の世界は冷たい

23

(プレイコミック 1983年2月24日号)
"Ice world is icy"

Midwinter. Myah-chan seems to on going to school, and enjoys break ice of a puddle. Then a man calls to her from rear. He makes ices which to break for amusement on the road, commercially (!). And another frightening mysterious man comes out...

 冬。これから登校するらしいミャアちゃんは、道路の水溜りが凍っているのを割って楽しむ。と、背後から声をかけてくる男がいた。彼は、割るための氷を路上に作って商売にしている(!)のだったが、そこへ凄みのある謎の男が現れて……。

*都心だと路上に水溜りが無くなってきたかも知れないが、1983年当時には今よりもけだし多く見つかっただろう。路上の氷で商売、というあたりからして何とも奇抜なアイディアであるが、この物語はさらに別の方角へ展開して、冬らしいファンタジーにもなっている。アマチュアだったらもったいながって、ここから2つの話を作りそうなものだが、作者は惜しげもなしに1つの話にまとめている(あまつさえ、実はオチに、3つめの奇抜なアイディアが登場する)。
 なお、劇中の台詞が真実だとすれば、この時ミャアちゃんは16歳、身長150cm、体重45kgである。
(秋田書店のプレイコミックシリーズスペシャル「スクラップ学園」(1986)では、ここから第2巻となる。)



パトスってふんでも死なないのよね

24

(プレイコミック 1980年10月9日号)
"The pathos is immortal even though trampled"

Myha-chan is spoken a gentle man who smokes a pipe. She is going to go an exhibition and spot sale of coterie magazine. The gentle man says that he investigated somewhat literature at one time.
"I'll have a look the exhibition. It must be able to advise a little even me".
He says and enters the place of "30th Nume-Nume market"...

 パイプをくゆらす穏やかな印象のおじさんに声をかけられるミャアちゃん。彼女はこれから同人誌の即売会へ行くところだった。するとおじさんもかつては文学を少しカジったとのこと。おじさんは「ちょっと見てこよう 私のような者でも多少の助言は与えられるにちがいない」と、”第30回ぬめぬめマーケット”会場に入るのだが……。

*初歩の若きアマチュアたちが創作でよくしでかす失敗や問題点が、ギャグへと昇華され描かれているようである。「うつぼつ(鬱勃:元気さかんなこと)たるパトス」という台詞があるが、パトス(pathos)とは”作品の感情・主観的要素”をさす言葉らしい。ミャアちゃんはいやに大人しげな服装で登場しているのだが、実はこれにはちゃんと理由があるというあたり、実に巧妙だ。



あーもーやだなー体育祭

25

(プレイコミック 1980年10月23日号)
"Ah disgusting, an athletic meet"

An athletic meet of the Scrap school is held. But Myah-chan is negative and has no enthusiasm about such event as standard praise for adolescence. A teacher alone to be desperate for glory of victory, and plays various cheap tricks. He barely succeeds in agitation to his students. Then a queer man who carrys a baby on his back comes and reviews...

 今日は巣倉腐学園(とんでもない字面であるがこれを正式な学校名としているらしい)の体育祭。しかしミャアちゃんには、青春を賛美する定番のようなこうした催しへの情熱は無く否定的だ。教師ばかりが勝利の栄光を渇望し必死になってあれやこれやの小細工をしている。どうにかクラスメートたちは扇動にのるのだが、そこに赤ん坊を背負ったおかしな男がやってきて一言、批評を始め……。

*毎回のように登場する教師が実はミャアちゃんの「担任」であることが、今回始めて、台詞で明言されている。今回もドタバタを描きつつ、創作の方法論に絡めたような台詞がいろいろちりばめられているようだ。果たしてミャアちゃんは自己の理想とするものを見出し、そこへ辿り着くことができるだろうか……? 当時、女子の体育着としてよく見られたブルマーをミャアちゃんもここで着用している。



謹厳実直ケンタウロス

26

(プレイコミック 1980年11月13日号)
"honest Centaurus"

Myah-chan takes alone a stroll at "Herajyuku", in front of the station. Almost all the people walk around her are peculiar. She finds unexpectedly a store which she is pleased, but it falls short of her expectations when she drops in. There is not a sane store. At last she finds an extreme senseless store which deals in clothing for Centaurus. It seems to be the highest of folly, though, a customer comes to the store...

 「へら宿(じゅく)」駅前で独りお散歩のミャアちゃん。周囲、道を行くのは変な人ばかり。ふと気に入った店を見つけるものの、入ってみると、まともな店が1軒もない。ついに極めつけというべきか、ケンタウロス(半人半馬)専門衣料の店があった。企画倒れだろう珍奇なこの店にしかし、何と客がやってきて……。

*平均値からはかけ離れた異形(いぎょう)なものが出現し、それでいて「普通」の人たちよりはるかに誠実であるといった意外な状況は、多数派をもって正しいとする僕らの社会の欺瞞(ぎまん)を皮肉っているようにも見える。”優しい夢”が現実から平手打ちを食わされるあたり、ひとつの寓意であろうか。
 今回、ミャアちゃんの住所が明らかになっており、「犬猫区みみず3-5」とある。
 舞台は原宿(東京都渋谷区)のもじりかと思われるが、実際の原宿駅の駅舎は独特で、このマンガに描かれているものには似ていないようだ。



かわいいもの・寄生虫

27

(プレイコミック 1983年3月10日号)
"lovely -- a parasitic worm"

3 girls, Myah-chan and her 2 friends, are sent to a classroom for a makeup-makeup-makeup examination. It is a dilapidated deserted section with a tag "the secret garden classroom". Before long, Mr.Ido, a teacher in charge, appears like a mushroom from a floor. He says,
"This classroom is covered entirely with my body".
Moreover, what a strange... Where would they be, Myah-chan and her friends, in desperation ?

 友人ふたりと共に、女生徒3名で追々々試験の教室へ送り込まれるミャアちゃん。「秘密の花園教室」という札の下がったそこはオンボロな区画で全く人けが無い。しばらくしたら、担当の井戸先生が突然、床からキノコみたいに出現した。「この教室はすべて私の身体で包んである」のだと言う。さらに加えて奇怪なことに……。絶体絶命、ミャアちゃんたちの運命は?

*トビラで何故かセーラー服を着ているミャアちゃんだが、内容と特に関係はないと思われる(本編を読めば分かるようにスクラップ学園の女子生徒制服はブレザー型)。プロレスマニアなのか本格的な技を使って格闘するミャアちゃん。しかし相手の特性を逆手に取る”奇策”で勝負にでているのが興味深い。そのため、単純な物理暴力では勝敗が決まらずひねった展開となり、オチのどんでん返しが効いている。



聞かせてよ くぬやろの歌

28

(プレイコミック 1980年11月27日号)
"Sing for me, a song of KUNUYARO"

Myah-chan seems left school for home, changes her uniform to private clothes at a rest room of a station. She is going to go to eat Oshiruko (a kind of Japanese sweets), but before which she reads comic magazines for free at a big man who seems to sell used books, in exchange for the leavings of her packed lunch. Then a barefoot man comes out and sings to his guitar accompaniment. He calls himself "a wandering minstrel", and his song has a miraculous power...

 下校し帰宅前で駅にいるのか、ミャアちゃんはトイレで私服に着替えている。おしるこを食べに行こうとするのだがその前に、古雑誌を売っている(らしい)大男のところでマンガをただ読みしてゆくのだった。どうも、ミャアちゃんのおべんとの食べ残しと交換という条件で毎度の事になっているようだ。そこへ裸足の男が現れ、即興だろう弾き語りを始める。彼は「さすらいの吟遊詩人」だと自称するのだが、その歌には不思議な力があって……。

*(警告:以下、「ネタバレ」に近い部分があります)怨念がこもって歌が超能力を得たという。だから怨念こそは彼にとって創作の原動力なのだろう。そしてその怨念と、彼は予想もしなかった形で向き合い、直視する事になる。とてつもなく恐ろしげで巨大な外見をしている怨念。彼はそのハダカ(正体)を見、そして驚く。思うに、たぶんその正体はありきたりでちっぽけな、他愛無いものでしかなかったのではあるまいか? なぜなら、全てを知ってしまった後の彼は、もはや覇気も失われ、小市民的な物売りに転落しているからだ(一緒に目撃したミャアちゃんにしても、それの正体について何の反応もしていない。まるで全てがあまりにも取るに足りない些事(さじ)でしかなかったかのように)。
 自己の才能について誇大な自負心を持っていたアマチュアが、自分の実際の身の程を知ってしまって愕然とする姿のように読めたのだが、どうであろうか。
 ちなみに「くぬやろ」は、TVアニメ化された『おちゃめ神物語コロコロポロン』に出現している



脱皮の季節

29

(プレイコミック 1980年12月11日号)
"season of ecdysis"

Myah-chan has a breakfast with bread and milk at a stand. She minds neither being late for school nor an end-of-term exam, to be bored of students that go to school in flocks, shares milk to a cat which comes to her. The cat trys to catch a mouse but fails, then he casts his hide off and leaves to somewhere.
"Maybe he knew the limits of his abilities as a cat",
Myah-chan broods.
After that, she goes to school, and becomes aware of something odd in behavior of Nakajima, who gets a top grade at all times. To her surprise, Nakajima casts suddenly his skin off and declares his "retirement"...

 朝。売店でパンと牛乳をかっこむミャアちゃん。遅刻も期末テストもなんのその、群れを成して登校する学生たちにうんざりしつつ、やってきた猫に牛乳をわけてやるのだった。猫は、ネズミを捕まえようとするが失敗、ずるると皮を脱ぎ捨てるやいずこかへ去って行く。「猫としての限界を感じたんだろうなー」と考え込むミャアちゃん。が、登校してみたら、常に成績トップである中島くんの様子がおかしい。なんと彼も突然、自分の皮を脱ぎ捨てて”引退”を宣言した……。

*かなり寓意のはっきりした幻想である。



忘年会にはブラックホール

30

(プレイコミック 1980年12月25日号)
"blackhole for a year-end party"

Today is a end of lessons of this year, so a year-end party is held at a classroom of Myah-chan. Students burn incense(?) and Nakajima does his parlor tricks "Blackhole Sabbath". Myah-chan feels it absurd, but as soon as she is going to go out, strong-wind is blow all of a sudden. Myah-chan is inhaled into a mouth of idol for "a maiden of sacrifice". Is she doomed ?

 今日で今年の授業も終り、ということで、ミャアちゃんたちの教室では忘年会が開かれる。が、そこでは香(?)がたかれ、中島くんの隠し芸「ブラックホール サバト」なるものが始まった。ミャアちゃんがあほらしくなって教室を出ようとすると、突如強風が起きる。”いけにえの処女”として偶像の口の中へと吸い込まれてゆくミャアちゃん。果たして彼女の運命は?

*1970年代末、ブラックホールは一般大衆にも広く知れ渡る天文学用語だった。流行の吾妻流アレンジというべきか。



神様お願い

31

(プレイコミック 1981年1月8日号)
"ask god a favor"

Myah-chan seems come to a shrine on New Year's Day. But the shrine is so dilapidated that it breaks when she claps her hands in prayer. Anyhow she picks a written oracle, then she is told
"You won the god of wealth as the first prize"
and to be pushed a son of a Shinto priest off onto...

 初詣(だろう)にやってきたミャアちゃん。しかしここがとんでもないボロ神社で、拍手(かしわで)を打てば社(やしろ)がぶっ壊れるという有様。おみくじを一応引いてみると「特賞 福の神が当たった」と言われるが、何のことは無い、神主の息子を押し付けられただけで……。

*作者は宗教心の無いタイプかと思われるのだが、読者の思想信条によってはこれ、”脱力系”というより”罰当たりギャグ”になってしまうかも。



中島くんとスケートに

32

(プレイコミック 1981年1月22日号)
"go to skate with Nakajima"

Myah-chan buys a baked sweet potato from a strange vendor who uses a bull-drawn carriage, then she is spoken by Nakajima on his way to go to skate. She accepts an invitation and enters a secret member-only skating rink with him...

 牛車で売っている怪しげな石焼きイモをミャアちゃんが買うと、これからスケートへ行く途中の中島くんに声をかけられた。招待されたミャアちゃんは彼と一緒に、秘密の会員制スケート場へ入るのだが……。

*「ド○えもんが一枚かんでるらしい」という台詞があるとおり、架空の発明がネタになっている。それにしても中島くんは、異性に関心があるのやら無いのやら、ちょっと判断の難しい人物のようだ。



伝統のおでん屋さん

33

(プレイコミック 1981年2月12日号)
"traditional oden stand"

When Myah-chan appears goes home from school, she finds a oden stand and drops into it ( oden : a Japanese hotchpotch). But the stand is strange that a shopkeeper uses a harpoon for a chopsticks with holding a stuffed(?) squirrel in his left arm. In addition to those, he says,
"My oden pot has a hole to an another dimension".
Then a middle-aged man who seems a regular customer comes...

 学校帰りだろうか、ミャアちゃんは屋台のおでん屋を見つけ、入ってみる。しかし店主はリスのぬいぐるみ(?)を常に左手で抱きかかえ、海で使うようなモリを突き立てて何らかのおでん種を煮汁から取り出すというけったいな所だった。おまけに「うちのオデンなべは亜空間の穴があいて」いるのだとか。そこへ馴染み客らしい中年男がやって来て……。

*老舗というのはどんな料理屋にもあるのだろうけれど、吾妻マンガでネタにされると思いっきり怪しげになる。



“チョコマネ”バレンタイン

34

(プレイコミック 1981年2月26日号)
" 'choco-mane' Valentine"

Myah-chan goes to school and finds tons of letters in her shoe cupboard and her desk. Those are petitions from boys who long for chocolate on St. Valentine's Day. She goes reluctantly to buy chocolates out of a sense of obligation, and discovers extremely inexpensive one. But it is ...

 ミャアちゃんが登校してみると、下駄箱にも机にも山のように手紙が入っている。バレンタインにチョコレートをくれ、という男子たちからの嘆願書であった。やむなく義理チョコを買いに出かけると、極端に安いのが見つかった。しかしそれは……。

*「スクラップ学園」には架空生物が時折登場するが、この作品もその1つ。



(秋田トップコミックス版)

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(Akita Top Comics edition)

 2006年には、秋田書店から「スクラップ学園 天真爛漫編」が発売された(奥付では6月25日初版発行とあるが、5月25日に店頭へ並んでいる)。サイズは180×129mmのB6で実質189ページ、税込み定価300円。
 第1話「も~疲れるわね~」をはじめとして全部で24話が収録されている。雑誌連載時の順序にはあまりこだわらず、独自の選択と編集が行なわれているようだ。カラーの表紙と目次のカットは新作描き下ろしではないかと思われる。収録内容は以下のとおり。
「も~疲れるわね~」
「妖精だってしちゃうもん」
「くだらなクラブ」
「なるほどこれがエコロジー」
「授業って感動の連続よ」
「パトスってふんでも死なないのよね」
「脱皮の季節」
「ちょっと非行化」
「野球部おーおーそかそか」
「病気もんばっかり」
「無気力は強い!」
「気らくなペット」
「今宵も進む増殖パーティー」
「お弁当大好き」
「いわくの魔人」
「アウトドアがナウイぜ!」
「ひさしぶり銭湯さん」
「ドキュメンタリー美亜」
「がんばれ!ワンダーガール普及委員」
「飛んでけ歯痛」
「暗い流れ」
「とても健康ジャズダンス」
「天災! うーむうっとーしい」
「謹厳実直ケンタウロス」



とっても健全ノーパンツ

35

(プレイコミック 1981年3月12日号)
"very sound no briefs"

While Myah-chan is having a breakfast, two girls of her friends come to see her. They say that a tearoom has opened near by the station, and waiters of that wear no brief. Myah-chan and her friends enter the tearoom. Two girls are overjoyed but Myah-chan is in cold blood. She says,
"Because I always see my dad's at my house",
"Besides my relative shows his".
Moreover, all objects which are carried to their table are covered by a plastic bag ...

 朝食中のミャアちゃんを、女ともだちの2人が訪ねてきた。駅前に、男性ウエイターがノーパンツ、というパーラーが開店したのだという。入ってみて、狂いまくっている友人ふたりに対し「家でお父さんのいつも見てっからなー」「あと親せきの人も見せてくれるし」と言うミャアちゃんは平然としている。しかもテーブルに運ばれてくるものは全てビニールに入っており……。

*パーラーの店名は有名アニメからのパロディと思われるも、なぜこの屋号になったのか分からない。1980年頃、ウエイトレスがノーパンツという「ノーパン喫茶」や、「ビニール本」というものが流行していたので、そのへんからきたギャグらしい。オチがとんでもない方角まで暴走し驚かされる。それにしても(台詞の内容が事実であるとすれば)、ミャアちゃんの家庭環境はいったいどうなっているのやら……???



春はどこから?

36

(プレイコミック 1981年3月26日号)
"Where spring from ?"

While dozing Myah-chan forgot to get off a train and it is certainly now that she lates for school.
"Troublesome. It's a lovely day, I'll cut a class".
she decides, and takes a turn in the town. It is spring, Myah-chan finds a horsetail at the roadside and she speakes to it for cheer up. Then a young man who looks like a sportsman, a word "spring" is wrote on his wear, appears ...

 電車内で居眠りして乗り過ごし、完全に遅刻となったミャアちゃん。「めんどくさい 天気もいいし 今日はサボるか」と決定して、街をお散歩することになった。季節は春、道端に芽を出した土筆(つくし)を見、ミャアちゃんが声をかけて励ますと、そこへ「春」と書かれたゼッケンを付けているスポーツマン風の青年が現れて……。

*自然を”助けてやろう”とする、僕ら人類の側にひそむ思い上がりを風刺しているかにも見えるのだが、はて?



ちょっと非行化

37

(プレイコミック 1981年4月9日号)
"rather delinquent"

Nomura the policeman is an earnest newcomer. He graduated at the head of the class from a police school, but he makes various mistakes because he has little experience. He is in high spirits in a campaign for "boost to find and care runaway boys and girls", so that he finds Myah-chan by the Jyuppongi station and speaks to her in doubt about she is delinquent.

 派出所へやってきた野村巡査は生真面目な新人である。警察学校をトップで卒業した人材なのだが経験の無さであれこれ失敗してしまう。「春の家出少年少女発見保護強化月間」ということではりきる彼は、十本木駅のそばでミャアちゃんを見、非行化してるのではと声をかけるのだが。

*『私の読書体験 どくたい』(『ハヤカワ文庫 秋のHOT HIT 100』 早川書房 2005年9月? に掲載)によれば作者は学生時代にとあるロシア文学を読んだそうで、もしかするとそのへんが元ネタか。”十本木”というのはたぶん、実在する地名”六本木”(東京都港区)のもじりだろう。”モロ☆”と書かれているところがあるが、漫画家である諸星大二郎のことかも知れない。



野球部おーおーそかそか

38

(プレイコミック 1981年4月23日号)
"a baseball club, oh, oh, yeah, yeah"

A friend of Myah-chan is in love with a member of baseball club. She has Myah-chan to go with her for cheering. Nevertheless Myah-chan dislikes a baseball club, she ends up acting as a cheerleader at the game, thanks to an idea of a manager who lacks the will to play a game ...

 野球部員に恋する友人に付き合わされ、応援に出かけるミャアちゃん。野球部は嫌いというミャアちゃんなのだったが、まるでやる気の無い監督のひらめきにより、即席チアガールをやらされる破目になり……。

*主人公はミャアちゃんなので、野球の試合はそっちのけ、応援合戦のお話になっている。監督に「ふたりと5人」の”哲学的先輩”が出演しており(なんら明言は無く、あのつぎはぎファッションでもないのだが、もし同一人物とすればこれも彼のアルバイトの1つなのだろうか?)、そちらを読んでいる読者にとっては実に懐かしい顔だろう。



病気もんばっかり

39

(プレイコミック 1981年5月14日号)
"full of maniac"

In consecutive holidays, Myah-chan trys to hitchhike for going and seeing her aunt. She somehow succeeds to find a car, but she is surprised when she finds the inside of the car is remodeled luxuriously as if it is a residence. The driver begins to brag about his car ...

 連休。「おばさん家(ち)へ遊びに行く」ためヒッチハイクを試みるミャアちゃん。どうにか乗せてくれる車があった。しかしその車内はえらく豪華に改造されておりまるで住居のようなのでミャアちゃんは驚く。得意になったドライバーは自慢を始め……。

*メーカー等の型式が特定できそうなほどクルマが精密に描かれているのだが、誰かモデルになった人物が実在するのであろうか。また車内には当時話題になった、縦置き式レコードプレイヤー(ターンテーブルが垂直面にある型)らしきものも見える。1979年に三菱電機が発売した「たてコン」(システムひとそろいで定価208000円、厚さ20cmだったらしい)か?



無気力は強い!

40

(プレイコミック 1981年5月28日号)
"strong is apathy !"

There is a dull atmosphere in a classroom. A teacher in charge becomes aware of that Myah-chan carries a mysterious creature on her back and she looks sleepy. Myah-chan says,
"This is an Apathy" and,
"I bought because I found this in a bargain sale".
A presentiment of teacher strikes the target, strange creature (?) "Apathy" possesses students one after another ...

 だれた雰囲気の教室。ふと担任が見れば、ミャアちゃんは得体の知れない生き物を背負って眠そうにしているではないか。訊(き)いてみると「これ 無気力」だそうで、「安売りしてたから買っちゃった」との返事。担任が心配したとおり、謎の生物(?)「無気力」は次々と生徒にとりついて……。

*で、「これがどう解決されるのだろう?」と読者は成り行きを見守るのだが、一筋縄の”怪獣退治”にはならぬ奇策が展開している。



気らくなペット

41

(プレイコミック 1981年6月11日号)
"an easygoing pet"

A "charity rummage sale" is held. A class of Myah-chan seems to take part in it. She calls on a teacher, and, what a ridiculousness, sees students are sold (!). What is worse, Myah-chan is sold, a buyer is a big cat which walks by his two legs like a human being. Myah-chan is took by the cat ...

 「チャリティーガラクタ市」が開かれ、ミャアちゃんのクラスも出品するらしい。様子を見に担任のところへ行ってみたら、なんと生徒たちが売られて(!)いる。そのうえミャアちゃんも売却済みで、買い手は二足歩行している大きな猫だった。ミャアちゃんはその猫に連れて行かれてしまい……。

*あまりにも日常的で、あまりにも日本的な出来事が展開してゆくのだが、人間でなくなった(?)視点で見るとそれらが珍妙なものになるから不思議。これがミャアちゃんの世界での現実の一部なのか、全ては幻想に過ぎないのか、何も説明は無い。平々凡々に生きてゆく事を「気らく」とは思いつつも、それに慣れて受け、身を任せてしまう事への不安と拒絶も根底にある、そんな印象が残る一品と言えようか?
 劇中の表記をそのまま信じるとすれば、ミャアちゃんのクラスは2B(2年B組)のようである。



雨の日

42

(プレイコミック 1981年6月25日号)
"a rainy day"

It seems a time to go home from school. It begins to rain though Myah-chan has no umbrella. While she is at a loss, a girl student comes and says,
"I cheer up immediately on a rainy day".
In fact, this girl is amazing idiosyncrasy ...

 下校時刻らしい。けれど雨が降りだして、ミャアちゃんに傘は無い。困っていると、「雨の日はとたんに元気が出てくるの」という女生徒が現れた。実はこの娘、驚くべき特異体質の持ち主で……。

*自然をよく観察している経験が無いとおよそ描けないだろうような幻想が展開し興味深い。



今宵も進む増殖パーティー

43

(プレイコミック 1981年7月9日号)
"tonight multiply-party goes as usual"

Myah-chan receives an invitation of a party. She has no idea why and how it came, but she attends the party in gala array. Myah-chan finds a waiter at the place, asks him a beverage. But there is something strange about his behavior ...

 ミャアちゃんのもとへ、パーティの招待状がきた。いかなる理由といきさつでそれが届いたのか知らなかったけれど、ドレスに盛装し行ってみるミャアちゃん。会場にボーイがいたので飲み物を頼んだ。と、どうも彼の様子がおかしい……。

*ネタバレになるおそれがあるので詳しくは書かないが、こうした趣旨のパーティが今では実在しており、ひとつの趣味(コ○○○)にまで成長していると言えるかも? そもそも「出版を祝う」ものだというあたり、コ○○に起源があったりして。
 蛇足ながらここでミャアちゃんがはいているのはパンストではなく、ニーソックスのようなものだったろうことがうかがえる。



お弁当大好き

44

(プレイコミック 1981年7月23日号)
"We are crazy about a lunch"

In lunch hour, each students begins to have their packed lunch. Myah-chan goes out a classroom, sits down in front of a warehouse of physical education (?). She is disappointed a little in contents of her packed lunch. Then she notices that there is a boy students who is going to eat secretly his gorgeous packed lunch. Myah-chan unintentionally snatches and eats it, but ...

 昼食の時間。生徒たちは各自、弁当を食べ始めた。ミャアちゃんは教室を出、体育倉庫(?)前に腰をおろして弁当をひろげるのだが、フタを開けてみてそのメニューに少々失望している。が、すぐそばでこっそり、ゴーカな弁当を今まさに食べようとしている男子生徒がいた。思わず手が出てしまうミャアちゃん、しかし……。

*料理についてのマンガが一時期流行したが、発表時期を考えるとそうした事をはるかに先んじてこれは描かれたようである。「失踪日記」などでも作者の美食家ぶりがうかがえるのだが、それにしては吾妻マンガに、料理をテーマとしたシリーズ作品が存在しない(?)のは大変奇妙に感じられる。



ぐーたらキャンプ

45

(プレイコミック 1981年8月13日号)
"idle camp"

In the summer vacation, Myah-chan and her 2 friends pitch a tent and camp in a mountain. But when they get up next morning, there are tents of many cram schools around them, and many students are in full swing of learning a summer course. Myah-chan resists to be made her to learn, then a strange boy appears and takes her away ...

 夏休み。ミャアちゃんは女ともだち2人と一緒に山でテントをはりキャンプしている。しかし朝が来て起床すると、周囲にはいろいろな予備校のテントがあって夏期講習の真っ盛りなのだった。勉強させられるのを嫌がって暴れるミャアちゃんだが、そこに正体不明の少年が現れてミャアちゃんをさらってゆく……。

*単に勉強したくないのか、たくましい野生児だからなのか、ちょっと特性のややこしいミャアちゃんではある。広島方言(? ”じゃけんのー”)が登場しているが、舞台はそちらの山岳地なのであろうか。



クラークは偉かった

46

(プレイコミック 1981年8月27日号)
"Clarke was great"

In the middle of summer. Myah-chan sprawls alone on a plastic boat at sea where is far from ashore.
"I'll tan myself in naked as there is nobady"
When she thinks so and begins to undress her swimsuit, a fish surfaces and makes an objection to her. Myah-chan hits the fish in anger, and gets a full nelson on it. Then, many "Nota-uo" surface one after another around the boat ...

 真夏。陸地から遠く離れた海上、ミャアちゃんが独りぼっち、ビニール製のボートに水着姿で寝そべっている。「ここなら誰も見てないから裸で焼いちゃおう」と考え、ブラを外そうとしたその時、1匹の魚が浮上して何やら文句を言い始めた。ミャアちゃんは怒って魚を殴り、羽交い絞めにするのだが、そのボートの周囲に次々と”のた魚”が浮上してきて……。

*ミャアちゃんの裸身がおがめるか!? と興奮した男性読者たちはいっきに脱力させられるのだが、その後の珍妙な展開でさらに加えて脱力させられる。副題はアーサー・C・クラーク(Sir Arthur Charles Clarke)のあるSF小説にひっかけているのではないかと思われる。



いわくの魔人

47

(プレイコミック 1981年9月10日号)
"meaningful wizard"

Today is a day for doing a general cleaning of whole school. Myah-chan trys to run away, but she is caught by a teacher and to be ordered to clear a ditch. In a short time, she finds an article which is written rottenly "meaningful pot" in mud of ditch.

 本日は校内の大掃除。こっそり脱走しようとしたミャアちゃんだったが担任に捕まり、ドブさらいをやらされる破目になった。するとドブ泥の中に「いわくありげな壺」とわざわざ書いてあるものが見つかる。

*やはり清潔さを徹底的に追求すると……。



アウトドアがナウイぜ!

48

(プレイコミック 1981年9月24日号)
"outdoor is up-to-date !"

While taking a walk, Myah-chan watches people on the road and smiles with admiration,
"In a town on Sunday, it is filled with enthusiasm of youth".
It seems that gatherings of various societies and clubs are held. Myah-chan happens to meet "aerial stroll club" and tries becoming a member of it.

 お散歩のミャアちゃんは路上の人々を見、「日曜日の都会は青春の熱気があふれてるなー」と感心、微笑する。そこではさまざまな同好会やクラブの会合も開かれているようで、ミャアちゃんは「空中散歩クラブ」なるものに出くわし、入会してみるのだが。

*ミャアちゃんが微笑するというのは(呆れ果てて笑ってしまうのとは違い)、どちらかといえば稀な事ではないかと思われる。
 「今いっちゃんナウイ」等の軽薄調な台詞が、いかにも当時らしいと言うべきか?



ひさしぶり銭湯さん

49

(プレイコミック 1981年10月8日号)
"the first public bath in a long time"

A bath of house is out of order, so that Myah-chan goes to a public bath. But when she goes to there, she finds it has remodeled and there are only coin laundries. A bath is likely to be able to use somehow, but when Myah-chan sets foot in there has used as storeroom, she ...

 自宅の風呂ガマが壊れ、銭湯へ行くミャアちゃん。ところが行ってみたら、コインランドリーばかりに改装されていた。どうにか風呂は使えそうだが、物置になっていたというそこにミャアちゃんが足を踏み入れてみると……。

*日本中どこにでもたくさん存在したであろう銭湯も、1970年代あたりから減少し始めたようで、おそらくそうした世情に基づく吾妻流の幻想譚になっている。
 実際、かつて銭湯と言う場所は子供にとって、いろんな空想や夢を満たす、温水プールつきの遊び場のようなものだったようだ。もしかするとこれも、そうしたあたりからふくらんだ物語だろうか?



ミャアちゃん官能写真集 出版記念パーティーの夜はふけて

50

(プレイコミック 1981年10月22日号)
"The night of a party in honor of the publication of 'Myah-chan sensual photograph collection' wears on"

A party is given. The author and participants gather. However Myah-chan, the heroine in question, attends this as a guest. The party begins to be unclear whether all of this is an actuality or manga. The party is confused increasingly ...

 「ミャアちゃん官能写真集 出版記念パーティー」なる宴会が開かれ、作者ほか関係者一同が座敷に集う。ところがそこへゲストとしてミャアちゃん本人が現れて、いったいこれが現実なのかこれもマンガなのかわからなくなってきた。宴会はさらに暴走してゆき……。

”ミャア官”は同人誌として制作された出版物らしいのだが(実物未確認)、この回によると読者プレゼントが行なわれた事があるのかも知れない。残念ながら詳細不明。



シンデレラ・ゲシュタルト

51

(プレイコミック 1983年3月24日号)
"The Cinderella Gestalt"

When Myah-chan and 2 her friends walk together at a passage of school, they see with their own eyes the girl who is gossiped because,
"She has her fiance already", so that,
"It is said that she is going to marry as soon as she graduates from school".
2 friends get excited about the girl, but Myah-chan keeps her composure and makes a bombshell announcement,
"I have my fiance, too".
According to her explanation,
"My grandfather arranged on his own authority" ...

 校内の廊下。ミャアちゃんが女ともだち2人と一緒に歩いていると、「すでにいいなずけがいる」ので「卒業したらすぐに結婚する」という噂の女生徒を目撃する。友人たちは騒ぐのだがミャアちゃんは平然としたもので、「いいなずけくらいあたしもいるよ」と爆弾発言。「おじいちゃんが勝手に決めちゃった」らしいのだが……。

*ミャアちゃんの祖父が数コマ登場しているのは興味深い。さてはミャアちゃんの破天荒ぶりは、祖父からきた血脈であろうか?
 トビラでミャアちゃんはレッグウォーマをはいているが、これはちょうどこの頃に巷で、日常に着こなすものとして流行していたためではないかと思われる。
 (PLAYCOMIC SERIES SPECIAL版の「スクラップ学園」第2巻はここで終わっている。)



必殺勧誘員!

001

(プレイコミック 1981年11月26日号)
"The dead canvasser !"

When Myah-chan gets up, there is no one in her house but her. She remains at home alone with doze, then she has a visitor so she answers the door. It looks as a canvasser of newspaper.

 ミャアちゃんが起床してみたら、家には誰も居ない。うたたねをしつつ留守番していると、玄関に客が来た。どうも新聞の勧誘員らしいのだが?

*これより単行本の第3巻(画像はそのカバー、および扉(標題紙)にあるイラスト)。ミャアちゃんの可愛い寝顔で、奇妙な物語が始まる。単行本は1986年が初版なので、カバーイラストは連載終了から3年後に描き下ろされたものらしい。

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開かずのロッカー

002

(プレイコミック 1981年12月10日号)
"a locker impossible to open"

It seems a class of physical education, a teacher and girl students are playing passionately valleyball. Myah-chan looks that she is weak in such a thing, and she decides to hide for skip this class. When she opens a door of locker first of all ...

 体育の授業だろう、教師も女生徒たちも熱血しまくってバレーボールの真っ最中。こうした事が苦手らしいミャアちゃんは、どこかへ隠れサボってしまおうと決めた。とりあえずロッカーの扉を開けてみると……。



がんばれおモチ

003

(プレイコミック 1981年11月12日号)
"Stick to it, rice cake"

Myah-chan seems to has a sweet tooth, eats a soft ice cream, moreover drops by a oshiruko shop (oshiruko : a kind of Japanese sweets). As she found a sign that says,
"If you ate up 15 cups of oshiruko, then you need not pay for it at all"
so she was lured by it and thought,
"Capital, I can eat oshiruko my fill !"
But there is ...

 甘党であるらしいミャアちゃんは、ソフトクリームをたいらげ、更におしるこ屋へ入る。「15杯で無料」という看板を見、「やった おしるこ食べ放題!」とつられたのだ。しかしそこには……。

*トビラに「協力 ミャアちゃんをステキにきかざる会」という手書きのキャプションがある。ファンから贈られた(?)衣装だったのだろうか。『ウルトラQ』(1966年に放送されたTV特撮番組)云々という台詞がある回。



そら出たサンタ

004

(プレイコミック 1981年12月24日号)
"There, Santa has come"

Myah-chan and her friends are invited to a Christmas party which is held at a house of Nakajima. Girls, friends of Myah-chan, expect something risky to happen. But when they arrive at the place of party, they find risky affair which they unexpected ...

 中島くんのところでクリスマスパーティーがあるらしく、ミャアちゃんたちはさそわれている。これはアブない事になるかもと、ミャアちゃんの友人の女生徒は期待しているのだったが、会場へ行ってみると、そこには別の意味でアブない事が待っていた……。

*「ラナちゃん(のセル)」という台詞があるが、これはTVアニメ『未来少年コナン』(1978年)に登場し人気者となった女性キャラクターのことを指しているものと思われる。女生徒の着ているセーターには胸にウサギのマークらしいものが見え、もしかするとPLAYBOYの公式製品か(日本版は1975年7月号が創刊号らしいのだが、その直後から既に商標を付した婦人服が日本国内で販売されていたようである)。



ぶりっこ風邪さんですう

005

(プレイコミック 1982年1月14日号)
"cutesypoo cold"

Myah-chan seems to catch a cold. But the symptom is somehow different from it of ordinary ...
(cutesypoo : try to play cute)

 風邪をひいたらしいミャアちゃん。しかしその症状は、どうも普通のそれとは違っていて……。

*まるっきり別人のように、女の子っぽくなったミャアちゃんの立ち居振る舞いが大変珍しい回。ただし、第1話で初登場した時の彼女は意外に、フワフワした不思議系(?)の少女で、そのへんも考え合わせると今回の出来事にはなかなか複雑なものがある?
 なお冒頭で、パジャマの上着を脱いだ中にブラをしている(夜眠る時にこういう下着をつけたままでいるとは考えにくい)ところからすると、ミャアちゃんは仮眠を取っていたのかも。
 ミャアちゃんの家が2階建てらしいことなども今回分かる。



みんなで映画

006

(プレイコミック 1982年1月28日号)
"movie all together"

Myah-chan is picked up when she walks a street. She takes advantage of the situation and makes the man brings her to the movie. But the movie theater which they got in is mysterious.

 道を歩いていてナンパされたミャアちゃん。逆手に取るようにして、映画に連れて行かせるが、入った映画館はどうにも不可解なところだった。

*家庭用のゲーム専用機が普及して以来、ヒロイックファンタジーは日本でも市民権を得るに至ったようだけれど(最初の『ドラゴンクエスト』発売は1986年)、このマンガが発表された1982年当時には、まだ珍しい題材だったのではないかと思われる。



ウサギを殺してはいけない

007

(プレイコミック 1982年2月10日号)
"Don't kill hare"

People make merry because snow has begun to fall lightly, but to their sorrow, the snow has left off in a little while.
"I envy a snowy district"
Myah-chan feels regret, then a man calls out to her ...

 ちらついた雪に、人々は大騒ぎする。が、悲しいかな雪はすぐにやんでしまった。
「雪国がうらやましいなー」
とミャアちゃんが残念がるや、男が声をかけてきて……。

*「こーちゃのおいしい」は、柏原よしえ他の歌手たちが歌った『ハロー・グッバイ』の歌詞の一部だろう。「安彦さん」は安彦良和か。「川崎の雪国」は詳細不明。「寿マンション」は「無気力プロ」が存在した「第二寿荘」のもじりか。「倉本」と「蛍」等は、TVドラマ『北の国から』にひっかけているものと思われる。



ドキュメンタリー美亜

008

(プレイコミック 1982年2月25日号)
"documentary Mia"

While Mia (Myah-chan) has a meal in a corner of school grounds, 2 boy students speak to her. They say that they are a member of movie club and they "want to make a documentary film" on the subject of Myah-chan.
"If you wish, go ahead ..."
Myah-chan meets in a curt way.

 校庭の隅で食事していたミャアちゃんに、男子生徒ふたりが声をかけてきた。彼らは映研のメンバーで、ミャアちゃんをモデルに「ドキュメンタリー撮りたい」のだと言う。
「撮りたきゃ撮れば……」
と、素っ気無く応じるミャアちゃんだったが。

*このころビデオデッキはともかく、家庭用ビデオカメラはまだ殆ど普及していなかったはずで、「フィルムスタート」という台詞があるのは8mmフィルムを使うカメラが現役であったゆえかと思われる。
(注:以下は単なる思い出です)
 1970年代の末、いつだったかバレンタインデーの頃に沖由佳雄さんと雑談しておりましたら氏いわく、
「吾妻先生は奥さんにチョコをもらうんだろうし、みぞろぎさん(今回のお話に「キャンセル待ち1番の人」役で似顔絵出演)も奥さんがくれるんだろうなぁ」
 沖さんも僕も、十代さいごの日々を過ごしていたので、沖さんが、
「ハタチを過ぎると(歳をとるのは)坂を転がるようだって言うよ~」
とか苦笑していたのもこの時だったでしょうか。ともあれ二人ともバレンタインデーが1年で最もみじめな日の少年であったという、苦~い記憶がよみがえってしまいました、ううう。



がんばれ! ワンダーガール普及委員

009

(プレイコミック 1982年3月11日号)
"Go for it ! Popularize Wondergirl Committee"

A strange man who hides his face gets stealthly closer to Myah-chan when she sits down on a bench in the open air. The man says,
"To tell the truth, I am a member of Popularize Wondergirl Committee".
Well ?

 戸外のベンチにミャアちゃんが腰掛けていたら、顔を隠した妙な男がコソコソ近づいて来た。
「実は私 ワンダーガール普及委員会の者でして」
と彼は言う。はて?

*米国製TVドラマ『ワンダーウーマン』("Wonder Woman"、日本での放送は1977年以降)のパロディらしいのだが、なにゆえにカンガルーと結びついているのやら???



春のバク

010

(プレイコミック 1982年3月25日号)
"a spring tapir"

Myah-chan feels sleepy strongly in a running train. At last she becomes cannot forbear, substitutes a lap of passenger who sits in front of her for a pillow, takes a nap with her head on it. Starange to say, then something like soap bubbles apperar from her head ...

 走っている電車の中、ひたすら眠いミャアちゃん。とうとう我慢できなくなり、座っている乗客のひざを枕に眠り込んでしまう。すると不思議な事には、彼女の頭からシャボン玉のような何かが出てきて……。

*トビラのミャアちゃんはどうも口紅をつけているようだ。これも珍しいが、今回彼女の寝顔は危機を感じてか苦しそうで(4ページ目中段)、気丈なこの子がこうした表情を見せるのもきわめて珍しく思える。



いじ悪じーさんザックザク

011

(プレイコミック 1982年4月8日号)
"illnatured old man makes a large profit"

Myah-chan and others pick mugworts at a riverbed. They seem prepare rice-flour cake. Myah-chan looks that she can hardly wait for eat it, and undertakes willingly a role to pound steamed rice into rice cake.

 河川敷でヨモギを摘んでいるミャアちゃんたち。草モチを作る準備のようだ。早くモチを食いたい一心でか、ミャアちゃんはキネを振り下ろす役割を買って出るのだが。

*台詞からすると草モチづくりを主催しているのは、ミャアちゃんの友人であるらしい女生徒の父親か。「吾妻さん今度アニメですって」という台詞は、『おちゃめ神物語コロコロポロン』放送開始のことらしい。



飛んでけ歯痛

012

(プレイコミック 1982年4月22日号)
"Fly away, toothache"

Myah-chan has toothache and suffer from it while she takes lessons at classroom. After all, she goes to an infirmary ... ?

 教室で授業中だが、ミャアちゃんは歯痛に悩まされている。けっきょく保健室へ行く事になったけれど?



スペース・ゴールデンウィーク

013

(プレイコミック 1982年5月13日号)
"space consecutive holidays"

In a classroom, everybody talk about nothing but a plan how to spend consecutive holidays. Some student plans surprisingly a space travel ...

 ゴールデンウィークをどう過ごすか、という話題で教室内はもちきり。生徒たちの中には何と、宇宙旅行を計画している者がいて……。

*台詞の「巨人獣」は米国SF映画もしくは石川球太によるマンガの事と思われるが、掌編『夕顔』でも「巨人獣」について言及する台詞がある。中島の読んでいる「金星金太」は、やはり掌編の『愛なき世界』でもちょこっと出てくるマンガの題名。



暗い流れ

014

(プレイコミック 1982年5月27日号)
"gloomy flow"

Myah-chan finds a performer of a picture-story show on a street when she walks there.
"Indeed ... such a performance in these days"
she is surprised, but the contents of the show is more surprising !?

 外出していたミャアちゃんは、路上で紙芝居屋を発見する。
「へ~~ 今どきこんなもんが」
と驚いたけれど、その内容は更に驚くべきものだった!?

*ミャアちゃんが意外に感じたとおり、街頭での紙芝居は、TVの普及に反比例し職業としては減少消滅していったかと思われる。
 創作というものそれ自体を題材としたお話が吾妻マンガにはしばしば登場するが、これもその1つだろう。ここで取り上げられているのは私小説(的なもの)なのだが、むろんそうした表現手法をコケにしている訳ではなくて、僕らアマチュアがそうしたものに取り組んだ場合えてして陥りやすい失敗が描出されているように感ぜられる。
 すなわち、作り話ではないだけに、箸にも棒にもかからないほど内容に乏しい代物になる等の失敗は起きないとしても、自分の実体験をナマのまま記述してしまい、客観的な価値を持つ作品として昇華させ完成させるまでに至らず、ともすれば自己陶酔と自己顕示だけに終わってしまう点に、ミャアちゃんは呆れているのではないだろうか……?
 しかし、何かを裁くというのではなしに、いったい創作とは、芸術とは何なのか? という問いかけで幕が下りているように思うけれど、どうだろう?



おじさん乾燥

015

(プレイコミック 1982年6月10日号)
"dry up a man"

It seems the rainy season, a van is parking at a housing area, and its driver attracts customers. This van looks to wipe the moisture from a blanket, a pillow, wash up and a human being (!). Myah-chan is thrown into the van ... !

 梅雨時だからだろう、「ふとん乾燥」を引き受けるバントラックが住宅街の路上で客引きしている。しかしこの車は毛布やまくら、洗濯物、はては人間まで(!)乾燥させられるらしく、ミャアちゃんはその車内へ放り込まれてしまった……!


i

とても健康ジャズダンス

016

(プレイコミック 1982年6月24日号)
"very healthy jazz dancing"

Today students learn jazz dancing in physical education class,
"Ms.Yoshikawa the English teacher has gone to a jazz dancing class since a week ago, so she gives its lessons".
Under these circumstances, boys and girls combine for this class.

 今日の体育はジャズダンスをやることになった。
「英語の吉川先生が一週間前からジャズダンス教室に通ってるから教えてくれるそうだ」
ということで、男女合同の授業としたらしい。

*ジャズダンス(JAZZ Dance)はエアロビクス(Aerobics)と並んでこの頃から日本で普及し始めたようだ。「ソーメン」云々というのは、疳(かん)の虫封じのおまじないにひっかけたものらしく、このオカルト(?)は吾妻マンガで何度か登場している。



人魂を大切に

017

(プレイコミック 1982年7月8日号)
"cherish spirit"

" 'Investigation of haunted house', this is just the right subject for independent research of the summer vacation, isn't it ?"
Nakajima says so, Myah-chan is asked to go with him. They arrive at the house, but it, though dilapidated, looks like an ordinary bed-and-breakfast to all appearances ... ?

「「ゆうれい屋敷探訪」 夏休みの自由研究にはピッタリの題材だろ」
と語る中島に連れられ、2人で出かけてきたミャアちゃん。しかしその家はボロっちいとはいえ、どう見ても普通の民宿としか思えないのだが……?

*「明るい明るい根が明るい」は、アニメ『おちゃめ神物語コロコロポロン』の劇中歌。丁度このころ放送中だった。



ペットとプール

018

(プレイコミック 1982年7月22日号)
"pet and swimming pool"

3 girls, Myah-chan and her friends go to swimming pool. But Myah-chan devotes herself to eat ice cream, and doesn't swim at all, so her friends are amazed at that. Then ...

 女3人でプールへ来ているミャアちゃん。だがアイスを食うばかりで泳ごうとしない彼女に友人たちは呆れる。そこへ突如出現したのはなんと……!

*「桂枝雀」と台詞にあるのは二代目(~1999)の方だろう。「サンド・ウォーム」は『デューン 砂の惑星』(フランク・ハーバート(Frank Herbert)の"Dune")に登場する怪獣(?)。なおこのSF小説は1984年に映画が公開されている。



寝苦しい夜

019

(プレイコミック 1982年8月12日号)
"the night sleep very badly"

At night of summer, Myah-chan opens a window because she cannot sleep by the heat. Whereupon someone rushes into her room through the window. What a surprise, it seems an angel (!) .
"I'm Yamada of 'Polon' the Hell's Angels",
he introduces himself to her so ...

 夜。暑くて眠れず、窓を開けるミャアちゃん。すると、誰かがいきなり部屋へ飛び込んできた。見ればそれは天使(!)であるらしい。
「俺ァ"ポロン"って天使の暴走族やってる山田だ」
と彼は名乗り……。

*このあと「スナック エロース」という店が登場。ミャアちゃんの自宅が鳥瞰(ちょうかん)で1コマ描かれている。



花輪和一の世界だなー

020

(プレイコミック 1982年8月26日号)
"the world of Kazuichi Hanawa"

Myah-chan comes to "Calfolniya the bed-and-breakfast" for work part-time at there. Its name reminds us of California, but the b and b is unsuitable the name. It is a solitary house in the heart of the mountains, besides the owner of the house has a extraordinary gloomy character that is specific to Japanese farming house (?) ...
(Kazuichi Hanawa : One of the Japanese avant-garde manga artist)

 「民宿かるほるにや」へバイトしに1人でやって来たミャアちゃん。しかし屋号とは裏腹にそこは山奥の一軒家のようで、しかもそこの主人は日本の農家ならでは(?)といった「暗さ」を極めており……。

*花輪和一はおもに「ガロ」で活躍してきている前衛漫画家。



夏バテカミナリ

021

(プレイコミック 1982年9月9日号)
"tired out thunder"

Myah-chan gets caught in the sudden rain and be struck by lightning. But it made only a hole on her skirt because the thunder became worn out with summer heat. Moreover the thunder asks her change off with him and has a break immediately. Myah-chan trys taking on the role of lady thunder.

 道を歩いていたミャアちゃんは突然の雨に襲われ、おまけに落雷を受ける。しかしカミナリがひどく夏バテしていたせいで、被害はスカートに穴が開いただけだった。あまつさえカミナリはミャアちゃんに交代を頼むや、さっさと休んでしまう。試しにカミナリ娘となってみるミャアちゃんだが。

*「なんか ほとんど○○ちゃんみたい」「カミナリだっちゃ!」というミャアちゃんの台詞がある。



24時間やってます

022

(プレイコミック 1982年9月23日号)
"open 24 hours"

Myah-chan finds a big store with a sign which says "Open 24 hours Shinrabansho (meaning : all things in the universe)" while walking alone in the night.
"Drink a cup of coffee or something".
She thinks so and enters the shop, but there is nothing at all in the store ... ???

 夜に一人歩きしていたミャアちゃんは「24時間営業 しんらばんしょう」という看板のある、大きな店を見つける。
「コーヒーでも飲んでくかな」
と入ってみたが、中はまるっきり何も無くて……???

*今でこそ珍しくないが、この当時はまだ24時間営業の店というのはまれで、(某大手コンビニが1975年6月にはもうそういう店を始めていたようだけれども)時代の先端を行く営業形式であったと思われる。



今日もバイオテクノロジー

023

(プレイコミック 1982年10月14日号)
"biotechnology as usual"

myah-chan goes shopping vegetables and finds Japanese radishes are sold at low prices at an unmanned sidewalk stall. But when she tries to buy it, the radish is alive (!), Myah-chan is caught by its tentacles and be taken away. Is she doomed !?

 おつかいで野菜を買いに出かけたミャアちゃんは、道端の無人の露店で大根が安く売られているのを発見する。ところが買おうとしたらその大根は生きていて(!)、ミャアちゃんはその触手に捕まり、連れ去られてしまう。ミャアちゃん危うし!!

*最初のコマに手書きで「ミャアちゃん家は最近引越しをしました」とある。じっさい彼女の住所は1度替わっているようで、『謹厳実直ケンタウロス』では"犬猫区みみず3-5"だったものが、『ミャアちゃんラブ・ワールド』では"おけら町1-2-3"となっている。最後のコマの枠外に「以前」うんぬんとあるのは『阿素湖たんたんファンタジー③』のことだろうか?



長い歴史のコスチュームショー

024

(プレイコミック 1982年10月28日号)
"the costume show with a long history"

Today is a school festival. Myah-chan appears show (?) of her class at first, but she is called in the middle of it. She has forgotten a promise that she will appear a costume show. But ...

 きょうは学園祭。最初は自分のクラスの見世物(?)に出ていたミャアちゃんだったが、途中でお呼びがかかる。コスチュームショーへ出演する約束をしていたのを忘れていたのだった。ところが……。

*仮装を意味する"コスプレ"という造語は、この頃はまだ無かったのではないかと思われる(コスチュームショーという呼称は「SF大会」で用いられていたものか)。ミャアちゃんのクラスは2Bだと今回分かるが、これは『気らくなペット』の回のそれと一致している。「のぞきスタジオ」というのは当時流行した性風俗商売の一種。「ですですうー」というのは三浦雅子によるアニメ版のポロンが次回予告のしめくくりに毎回言っていた決め台詞(?)で、原作には無い。ミャアちゃんは今回いろいろな仮装をしているが、その中には『ななこSOS』らしい姿もある!



とにかくテニス

025

(プレイコミック 1982年11月11日号)
"anyway tennis"

3 girls, Myah-chan and her friends, were playing tennis. They are invited by Nakajima, their rich classmate, and go to the tennis court which he uses. Girls find that it is a first-class institution, but furthermore, they look a surprising extraordinary facilities in there ...

 女3人でテニスをしていたミャアちゃんたちは、金持ちの中島くんに誘われて彼が使っているコートへ行く。さすがに高級な場所だったが、他にも驚くべき特別な設備があって……。

*SFマンガ(!?)の回になっている。



朝市で小人3点セットを買う

026

(プレイコミック 1982年11月25日号)
"buy the 3 set of dwarf at a morning market"

"I've stayed up all night while watching video movie",
Myah-chan goes out and sees the sights of a morning market. But articles which are sold at there is neither vegetables nor seafoods ...

「ビデオ見てたらすっかり朝になってもた」
と、ミャアちゃんは外出し、朝市を見物する。しかしそこで扱われているのは野菜でも魚でもなく……。

*ミャアちゃんが徹夜してしまったビデオは『Star Trek』か(エンタープライズ号(U.S.S. Enterprise)らしきものが画面に見える)。「来日中のハインライン」(Robert Anson Heinleinのことらしい)などSFマニア向けの台詞が。また「来年になるとその子 自然に消えます」というのは……。



ヒコタマ・デンジャラス

027

(プレイコミック 1983年4月14日号)
"Hikotama-dangerous"

"Almost every day, in-school violence, lynching and various other ravage of school are splashed across the newspaper. But there is not a single of them in our school ... so we teachers are feel small ..."
A teacher deplores, so that a promotion of delinquency begins.

「連日のように校内暴力 リンチ等 学校の荒廃が新聞をにぎわせているが 我が校にはそーゆーのがひとつもなく……先生たちはたいへん肩身のせまい思いをしている…」
と先生が嘆くので、非行の促進をすることになった。

*現実とまるっきり逆をいっている世界から話が始まるという、これぞ不条理ギャグと言うべきか!? トビラはこの頃の定番的な不良ファッションを取り入れているようだ。



じゃあ、またね

028

(プレイコミック 1983年4月28日号)
"See you again"

A speech meeting of a student council election is going to be held at a gymnasium in after school.
"I'll treat you tea and cake",
Nakajima says so and invites Myah-chan. She goes to the place with him, but an unlooked-for destiny greets her ...

 放課後、体育館で生徒会選挙の演説会がある。ミャアちゃんは、
「ケーキと紅茶を付けるから」
と中島に言われ、やむなく会場へ。しかし行ってみると意外な運命が彼女を待っていた……。

*これが最終回。トビラこそ夕陽が描かれていたりして青春ドラマそのものなのだが、とんでもない! 誰も予想し得ないようなラストシーンが用意されている。
 なおヒロインの活躍には後日談があって、『産直あづまマガジン』にはそれが発表されている(2001年~)。21世紀版も収録した形での再販が望まれるところだ。
(単行本『プレイコミックシリーズスペシャル スクラップ学園 第3巻』は、ここで終わっている。)





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