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(まんが王 1970年6月号)
There is a coffee shop looks like ruins. Dandy is a young man who works at there, but the shop goes bankrupt so that he cannot get his wage. He cherishes a dream that to be a painter someday, but his wish is not fulfilled yet. At an apartment house where Dandy lives, a girl by the name of Nancy settles in. She barely makes a living by sings to her guitar accompaniment on the street. Nancy is familiar to Dandy. Her elder brother is a habitual offender of a sneak thief, and she has run away from home because she dislikes him. These 3 youth who became penniless are going to be tied together, by the destiny...
倒壊寸前のようなオンボロ喫茶店がある。そこで働いていた若者、それが主人公のダンディーなのだが、店は倒産し給料ももらえずじまい。彼は画家としていつか世に出る事を夢見ている。しかしいまだ芽が出るに至らない。彼の住むアパートの階下には、路上で弾き語りをし食いつないでいる娘ナンシーがいて主人公と親しいが、彼女の兄はコソドロの常習犯で、その兄を嫌がって家出してきたという身の上。都会のどん底で食い詰めたこれらの3人を、運命が結び付けようとしていた……。
*アメリカ映画(と言っても監督はイギリス人だったらしい)「真夜中のカーボーイ」(MIDNIGHT COWBOY)に感動し、この作品が生まれたことを作者の吾妻ひでお自身が何度か語っている。映画は、都会で成功するのを夢見た若者が、現実にうちのめされ挫折するという重い内容であるが、アカデミー作品賞・監督賞・脚色賞、他を受賞した。アメリカの不名誉な部分や虚飾をあえて直視するという態度は、それまでの、派手な娯楽こそハリウッドという伝統に背を向けた姿勢として当時に現れた考え方だったようだ。こうした要素に吾妻ひでおが強く共感したとすれば、彼のその後の作風は、この映画によって予言されていたと考えられようか?
「二日酔いダンディー」には、後になって吾妻マンガのキーワードとしてよく用いられる要素、例えば美少女、SF,不条理、ドタバタ喜劇といったものがまだ、あまり見られないように思われる。そのかわりに感じ取れるのは、全編を通じて基調のように流れている「うら哀しさ」なのではないか。この時まだ二十歳そこそこだった作者ならではの、青春と人生についての模索や感傷は、当時の読者と年齢に殆ど開きが無かったこともあってだろう、ファンを獲得する力になったようだ。
この作品が単行本化されたのは連載から29年後、1999年になってからの事だった。